牛尾憲輔 〜Kompleteを持つことは作曲家にとって最初の一歩|Komplete ユーザー・インタビュー

牛尾憲輔 〜Kompleteを持つことは作曲家にとって最初の一歩|NATIVE INSTRUMENTS ユーザー・インタビュー

NATIVE INSTRUMENTS製品を愛用するプロ・クリエイターのコメントとともに、現在発売中のラインナップを一挙に紹介! ソロ・アーティストagraphとしての活動のほか、劇伴作家として映画やアニメ作品で活躍する牛尾憲輔。彼が最初にNATIVE INSTRUMENTS製品を手にしたのは約20年前で、それから現在まで途切れることなく使い続けているという。何が牛尾をそれほどまでに引きつけるのか伺ってみた。

Photo:Chika Suzuki Hair & Make-up:Nobuyuki Kougo Styling:KEITA OGO

作家性の確立にKontaktが役に立った

 牛尾が初めて導入したNATIVE INSTRUMENTS製品は、往年の名シンセを模したソフト音源Pro-52(現在は販売されていない)、あるいは初代のKontaktだったそう。「どちらが先かは記憶が曖昧ですが、Kontaktは発売を楽しみにして買ったのを覚えています」と語る。

 「Kontaktは最初からできることが多くて、“ああ俺の世代のサンプラーだな”と思いました。モチベーションがアガるかっこいいルックスだったし、マッピングエディタが使いやすかったんです。当時はライブラリー/プリセットを使うというよりも、サンプルを並べて使いたかったんですよね」

 その後、Kompleteを入手してからは、FM7やFM8、ReaktorやBatteryなど収録製品のほぼすべてを活用していたという。

 「その中でもKontaktは常にメインにありました。特にファクトリー・プリセットがよくできていて、ギターなどを加工してよく使っていたんです。今みたいにリアルなシミュレートは当時の僕にはできませんでしたが、ピッチ・ベンドやスライドでシンセ的な音作りをすることは、自分の作家性を確立させていく上で、すごく役立ってくれました

 特に、2014年のTVアニメ『ピンポン』のサウンドトラックを手掛けて以降、劇伴作家としての歩みを進めていく上で、Kompleteはなくてはならない存在になったようだ。

 「Kompleteを持つことは、劇伴もつくる作曲家にとって最初の一歩なのではないでしょうか。ないとかなりキツイかもしれません。曲を作るときは最初にKontaktを立ち上げますし、マルチティンバーで使うのですが、すべてパラアウトしたいので、3個くらい立ち上げるのは普通です。ドラム用とか弦用とか、ピアノ音色も複数種類使うので、ピアノ用といったように楽器別に使い分けたりもします」

Reaktorは企業秘密

 Kontakt以外で長年にわたって使い続けているものとしては、Reaktorのアンサンブルがあるそうだ。

 「かなり前から、いろいろなコミュニティのBBSをのぞいてはアンサンブルを集めていたんです。今聴いても変な音のアンサンブルはいっぱいあるんですけど、企業秘密だから詳しいことは内緒です(笑)。でも、本当にお薦めですよ。そういえば、以前にスクエアプッシャーとイベントで共演したとき、彼はReaktorで作ったDJ用アンサンブルを使っていたんですけど、それもすごくかっこ良かったですね。再生ポイントがどんどん動いていくようなアンサンブルで、やっぱりやべえやつが作るアンサンブルはすごいなと思いました」

Reaktor 6(Komplete 14 Standard以上に収録)

Reaktor 6(Komplete 14 Standard以上に収録)

モジュールを組み合わせてオリジナルのシンセやサンプラー、エフェクトなどを作成できる。作成されたシンセなどは“アンサンブル”と総称され、ネット上にはユーザーが作成したアンサンブルが多数公開されている。「Reaktorは歴史が長い分、面白いパッチが本当にたくさんあるので、もっと注目されていいと思います」と牛尾

 そのほかピアノ音源ではNoirやAlicia's Keys、The Giant、Piano Colorsなど、ストリングスではSymphony EssentialsシリーズやStradivari Violin、ギター系ではSession Guitaristシリーズを多用するそう。

 「Thrillは劇伴でテクスチャー系を作るときにすごく使えますし、スティーヴ・ライヒ好きとしてはMallet Fluxも外せません。シンセだったらRazorが好きですし、Monarkは低域が太くていいんですよ。一時期よく使っていました。あとはエフェクトも使えるものが多いですね。例えば、ディレイのReplikaは音もいいし、フィードバック・ループの中にエフェクトを挿せるのも便利です」

Thrill(Komplete 14 Ultimateに収録)

Thrill(Komplete 14 Ultimateに収録)

牛尾が多用するというシネマティックな音色に特化した音源。1,038ものオーケストラや環境音、シンセ・ドローンなどが用意されており、アトモスフィアとトーンクラスターという2つの主なサウンドタイプXYパッドでリアルタイムにコントロールできる

Mallet Flux(Komplete 14 Ultimateに収録)

Mallet Flux(Komplete 14 Ultimateに収録)

グロッケンシュピールやチェレスタ、シロフォン、ビブラフォン、マリンバなどマレット楽器にフォーカスした音源。スティーヴ・ライヒ好きの牛尾としては外せない音源だそう

 最後にあらためてKompleteの魅力を尋ねてみた。

 「どの音もクオリティが高いから弾いているだけでも楽しいし、サウンドを確認中“今、弾いてたフレーズが面白いから曲にしよう”とかってやってると、どんどん作っちゃうことになるから、全然、先に進めなくなります(笑)。僕は音にインスパイアされることが多く、こういう音色だったら、こういうことをしたいなと考えるタイプなので、そういう意味で膨大な音色を探せるKompleteはとてもありがたい存在です」

 

 Recent Work 
『Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -』
牛尾憲輔

【Profile】『チェンソーマン』『平家物語』『子供はわかってあげない』などの劇伴のほか、ソロ名義agraph、電気グルーヴのライブ・サポート、LAMAの一員としても活躍。

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