D16 GROUP Drumazon 2 レビュー:ROLAND TR-909をベースに開発されたドラム音源の最新バージョン

D16 GROUP Drumazon 2 レビュー:ROLAND TR-909をベースに開発されたドラム音源の最新バージョン

 D16 GROUPは、ROLAND TR-808やTB-303などのエミュレーションをはじめ、往年のハードウェア・サンプラーの音質をシミュレートしたプラグインなど、ダンス・ミュージックに強いメーカーです。今回ご紹介するDrumazon 2は、TR-909のエミュレーション音源。前作のDrumazonは、リッチなサウンドと容易な操作性が好評でしたが、今バージョンではどのような進化を遂げているのでしょうか。

EQやフィルターを搭載したSTRIPS VIEW 計10種のエフェクトで幅広い音作りも可能

 Drumazon 2を立ち上げると、“デカっ”と驚くほどの大きなGUIが現れます。15インチのコンピューターの画面で3分の2ほどを占める大きさで、恐らくユーザーの使いやすさに配慮した結果でしょう。パネル上部左端のOPTIONSメニューの“GUI”にてサイズは変更可能です。パネル最上部にはOPTIONS以外にも、左から各パラメーター/シーケンサーのプリセットを選択するSCENE、内部シーケンサーのオン/オフ・ボタンのINT SEQ、ドラム・キットのプリセットを選択するDRUM KITを用意。自分好みの設定ができたら、SCENE/DRUM KITの下部にあるSAVEで保存できるので便利です。パネル上部の表示形式は、右端のVIEWセレクターで4種類から選択可能。SYNTH VIEWには、TR-909と同じ全11音のパラメーターがまとめられており、ノブの数がそれぞれ異なります(上掲の画面)。バス・ドラムやスネア、タムなどには6つ、金物系には3つのノブを装備し、簡単な操作で実機より幅広い音作りが可能。これは、とてもうれしいポイントの一つでした。

 STRIPS VIEWでは、音色ごとに個別にEQやフィルター、コンプレッサーの調整が可能。

STRIPS VIEW選択時のパネル上部。左端のINSTRUMENT SELECTORで音源を選択し、中央部の各パラメーターで音色の調整やルーティングを行う作りとなっている。画面上部中央のPRESETには各音源のプリセットが多数用意されているので、音色に迷った際などに便利。画面下部のBUS 1/BUS 2では各SLOTに計10種のエフェクトを用意。SLOTの順序は変更可能で、画面右のAUDIO OUT/BUS SENDを調整することで単一の音源に複数のエフェクトをかけることもできる

STRIPS VIEW選択時のパネル上部。左端のINSTRUMENT SELECTORで音源を選択し、中央部の各パラメーターで音色の調整やルーティングを行う作りとなっている。画面上部中央のPRESETには各音源のプリセットが多数用意されているので、音色に迷った際などに便利。画面下部のBUS 1/BUS 2では各SLOTに計10種のエフェクトを用意。SLOTの順序は変更可能で、画面右のAUDIO OUT/BUS SENDを調整することで単一の音源に複数のエフェクトをかけることもできる

 右端のAUDIO OUT、BUS SENDで各ルーティングを行えば、パネル中部のBUS 1/BUS 2に設定したひずみ/空間系などの計10種のエフェクトをまとめてかけることもできます。エフェクトの中で注目すべきなのが、BIT CRUSHERです。例えば、BITSの値を8、RESAMPLEを10時の位置、APPROX FILTERを9時半の位置、IMAGES FILTERを11時の位置に各ノブをセットしてバス・ドラムにかけると、E-MU SP-1200に取り込んだような質感を再現できます。MASTER VIEWで調整可能な内蔵のマルチバンド・コンプレッサーとリミッターを使用すれば、Drumazon 2だけでより追い込んだ音作りが可能です。また、TRIGGERS/MIDI VIEWでは、各音色のMIDIノートの編集や実機を模したトリガー・アウトの設定ができます。

簡単に複雑なフレーズを打ち込めるシーケンサー

 続いて、パネル下部のシーケンサーをチェック。全11音のドラム・パターンが一望できるように左側にまとめられ、右側にはステップ数を調整するSCALEやスイング効果の量を調整するSHUFFLEといった実用性の高いエディターが階層にまとめられています。

パネル下部のシーケンサー。上部にはコピー/ペースト/クリア・ボタンや、パターン・シフト・ボタン、プリセット・メニューを用意。その下部のGLOBAL ACCで、すべての音源にアクセントを加えることができる。右端のエディターには、シーケンサーの打ち込みに関わる操作子をまとめたEDIT、フレーズをリアル・タイムで打ち込めるTAP、ランダムなパターンを生成することができるRANDOMIZEを用意(青枠からそれぞれ選択可能)。画面は、バス・ドラムの4拍目の前に薄いキックを鳴らす手法をARTICULATIONのFLAM(黄枠)を使用して実践した様子

パネル下部のシーケンサー。上部にはコピー/ペースト/クリア・ボタンや、パターン・シフト・ボタン、プリセット・メニューを用意。その下部のGLOBAL ACCで、すべての音源にアクセントを加えることができる。右端のエディターには、シーケンサーの打ち込みに関わる操作子をまとめたEDIT、フレーズをリアル・タイムで打ち込めるTAP、ランダムなパターンを生成することができるRANDOMIZEを用意(青枠からそれぞれ選択可能)。画面は、バス・ドラムの4拍目の前に薄いキックを鳴らす手法をARTICULATIONのFLAM(黄枠)を使用して実践した様子

 この連続したデザインによって、複雑なドラム・パターンでも直感的にプログラムできるようになっています。例えば、トラップ特有の32分音符のハイハット・ロールや、3連符のハイハットの刻みなどは、ARTICULATIONを用いてシーケンサーに打ち込んでいくと2〜3クリックで完成します。また、ハウスで頻出する4拍目のキックの前に薄くアクセントを付けるフラム奏法のような技法も、FLAMパネルの各パラメーターを調整して打ち込むことで、楽にセット・アップできます。シーケンサー右端の電卓のような見た目のLIVE/HOST NOTEパネルのボタンには組んだシーケンスを保存できるので、パターンを切り替えながらライブ・パフォーマンスすることが可能です。

実機をしのぐ輪郭の太さと音圧感

 さて、肝心の音についてですがパーフェクトの一言です。アタック成分が整った張り出し感や、輪郭の太さなど、しっかりとしたモデリング具合です。スタジオのラージ・スピーカーで実機と聴き比べましたが、自前のTR-909は何度もリペアをかけて絶好調なはずなのに、Drumazon 2はそれを軽く上回る音圧感でした。重低音部分の輪郭が太く、突き刺さるようなアタック感です。実機は、クラブで大音量で聴いたときの迫力がすごいのですが、Drumazon 2のサウンドはまさにクラブで聴く実機の音そのものといった印象でした。

 ところで、皆さんがTR-909と聞いて想像するような音が最初から実機から出てくるかというとそれは全くの幻想で、アーティストやエンジニアは実機以外の部分でしっかりと音色を作り込んでいます。Drumazon 2は、それらの音作りをしっかりと把握し、必要なエフェクトを惜しみなく盛り込んでいます。音作りに詳しくないという方でも、200種類以上あるプリセットの中から目的の音色を見つけられると思います。

 最近、1990年代のリバイバルでTR-909の音にあらためて注目が集まっています。ダンス・ミュージックをはじめ、ポップスの現場でも耳にすることが多く、TR-909のサウンドは最低限持っておきたい音源です。特に、Drumazon 2は作曲家にお薦めで、細かい設定をしなくても“90s Pop Songs Feel”などのプリセットを選べば、探していた音を簡単に作り出せます。もちろん、ダンス・ミュージックのクリエイターの方にもイチ押しで、触っているだけで気が付いたら何時間も経過してしまうほど楽しい製品だと思います。

 

Chester Beatty
【Profile】テクノ・プロデューサー。TRESOR、Turbo Recordings、BPitch Controlなどから自作を発表。日本レコーディングエンジニア協会理事。イマーシブ・オーディオ専門の山麓丸スタジオに所属。

 

 

 

D16 GROUP Drumazon 2

20,680円(価格は為替レートによって変動)

D16 GROUP Drumazon 2

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13/10.14/10.15/11(INTEL CPU/ARM)/12(INTEL CPU/ARM)/13(INTEL CPU/ARM)
▪Windows:Windows 8(32/64ビット)/10(32/64ビット)/11
▪対応フォーマット:AAX、AU、VST2、VST3

製品情報

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