鈴木光人 〜使いたい“あの音”が入っているのがKomplete|Komplete ユーザー・インタビュー

鈴木光人

NATIVE INSTRUMENTS製品を愛用するプロ・クリエイターのコメントとともに、現在発売中のラインナップを一挙に紹介! 『ファイナルファンタジーVII リメイク』をはじめとするゲーム作品のほか、TVアニメの楽曲なども手掛ける鈴木光人。数多くの曲を手掛け、ジャンルも多岐にわたるため、作曲する上でKompleteはなくてはならない存在とのことだ。

Photo:Takashi Yashima

シンセは用途によって複数を使い分ける

 鈴木とNATIVE INSTRUMENTS製品との出会いは15年以上前、まだKompleteがリリースされる前に単体製品を使ったのが最初で、それから社内で使用するソフトとしてKompleteを使い始めたそうだ。

 「確かKomplete 2か3で、便利だからまとめて買おうみたいな話だったかなと。それからはアップデートされるたびに更新しています。昔から使っている鉄板的なソフトが、アップデートしても常に入っているというのは安心感があります。年間で書く曲の数がすごく多いので、パッと思いついたときにその音が手元にないと時間がもったいないんです。“あのシンセの何番の音”みたいに覚えているし、Batteryの音はどこに何があるかを記号のように記憶している。使わなくなるのはちょっと考えられないですね。そういうサウンドがKompleteの中にはたくさんあります」

 では、鈴木が愛用する音源について詳しく聞いていこう。まずはFMシンセ音源のFM8だ。

 「FM8は立ち上げたデフォルトのサイン波が良い。頭の中で鳴っている音を形にするのは、ピアノかサイン波のようなシンプルな音の方がやりやすいんです。あと、“Dream Synth”というプリセットがすごく好きで、『ファイナルファンタジーVII リメイク』の「陥没道路」のBメロは、“Dream Synth”から作りました。FMらしいベル系の音色で、リフからメロディ、ユニゾンまで汎用(はんよう)的に使えます」

FM8(Komplete 14 Standard以上に収録)

FM8(Komplete 14 Standard以上に収録)

1,200種類以上のプリセットを収録するFMシンセ音源。アルペジエイター、FMマトリックス、エフェクトなどの機能も備える。鈴木は「ディケイを短くして、昔のゲーム・サウンド風なハイハットなんかも手軽に作成できますよ」と語る

 そのほかにも、複数のシンセを使い分けているという。

 「Super 8はアナログライクな丸みのある音で、操作もシンプルで使いやすいですね。Massive Xは、『ファイナルファンタジーVII リメイク』の「真夜中の待ちぶせ」で4本をレイヤーしてシーケンスを作ったり、メロディの柔らかなパッド・サウンドに使いました。シンセサイズの楽しさが詰まったシンセだと思います」

Massive X(Komplete 14 Standard以上に収録)

Massive X(Komplete 14 Standard以上に収録)

Massiveの次世代モデルとして再設計されたソフト・シンセ。170種のウェーブテーブルを備えた2基のウェーブテーブル・オシレーターを搭載、バーチャル・パッチングでルーティングを設定できるなど、多様な音作りが可能だ

いざというときに役立つ音源がたくさんある

 Kontakt音源も、鈴木にはなくてはならない存在だ。

 「Factory Library 2のVintageカテゴリーに入っているMini FXシリーズは、アナログライクなサウンドを手軽に作れるので気に入っています。画面上のXYパッドをリアルタイムに動かしながら音作り可能なMysteria、Thrillといったシネマティック音源も好みです。プリセットが膨大にあるので、くじ引きみたいにどんどん選べます(笑)」

 「あと、これもめちゃくちゃ好きです」と言い、Play SeriesのAnalog Dreamを挙げる。

 「とにかく音が良くて触発されます。あと海外の劇伴でよく聴くシンセは何重にもレイヤーされていて、再現しようとすると膨大な時間がかかる。それが1つの音源で再現できるので、まさに“Analog Dream”ですね」

 エフェクトも長く愛用しているものがあるそう。

 「ディレイのフィードバックでリバーブ効果を作るReplikaのプリセット“Clouds”は、シンセからボーカルまで浮遊感を出したいときの鉄板エフェクト。深くかけたときの味わいはReplikaにしか出せませんね。ダイナミクスを整えるTransient Masterも替えが効かないエフェクトです」

Transient Master(Komplete 14 Standard以上に収録)

Transient Master(Komplete 14 Standard以上に収録)

ATTACK、SUSTAIN、GAINの3つのノブでダイナミクスの調整を行うプロセッサー。鈴木いわく「ツマミが3つなのでシンプルに扱えます。ペラペラなブレイクビーツのサンプルも、これを挿すとパンチと勢いを加えられますよ」

 最後に、これからKompleteを導入しようとしている方へのアドバイスを伺った。

 「今では音楽の学校でも教材として、まずコンピューターとDAWとKompleteを購入するという話も聞きます。そういった意味ではもう標準機材と言えますよね。ボカロPになりたい方ならMassiveは外せないソフトだと思うし、そういう必須のものもあれば、いざというときに役に立つものもたくさん入っている。それは僕も身に染みて感じています。まずはKomplete Selectから入ってみて、作りたい曲に合わせてアップグレードしていくのがいいと思いますよ」

 

 Recent Work 
『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE Original Soundtrack』
(SQUARE ENIX MUSIC)

【Profile】スクウェア・エニックス所属の作曲家。近年ではゲームのみならず、TVアニメの楽曲制作や舞台音楽の制作にも携わっており、多方面で才能を発揮している。

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