レコーディング・エンジニアやアーティストの中に、AUSTRIAN AUDIOの製品を自ら導入し愛用する人が増えた昨今。どのような部分に魅力を感じているのか教えていただいた。
Engineer|星野誠 × OC818
専用プラグインでの音場調整が衝撃的
周波数的に嫌なピークがなく万能な印象で、基本性能の高さに魅力を感じ、専用プラグインPolarDesignerを用いてのステレオ録音での音場クリエイトが衝撃で購入を決めたのを覚えています。2年たった今も、その音色に飽きることなくドラムのトップには必ず使っていて、ルーム・マイクやピアノ用マイクの候補の一つとしても高い頻度で使っています。皆さん同様、個性の光るマイクが大好きな自分ですが、OC818は音色だけでなくPolarDesignerも含めて一つの製品と考え、ステレオ録音での広がり、奥行きがコントロールできるさまは唯一無二だと思います。
素直なレスポンスが得られるため、マイクプリや部屋の違いなど録音におけるさまざまな要因/影響に気づきやすく、失敗を防ぎやすい。また、指向性を変えることでの位相の変化、曲中でどう響かせるかなどの知識は、ほかのマイクでの録音にも生かせると思います。安くはないですがファースト・マイクとしてお薦め。その際は、ぜひステレオ・ペアで。
▲星野氏がOC818+PolarDesignerの使い方を解説する動画。サウンド&レコーディング・マガジンのYouTubeチャンネルで公開中
Engineer|原真人 × OD303 / CC8
OD303はマイキングだけで音作りできる
愛用のOC818が、往年の名機の設計思想を受け継ぎつつも現代にアジャストされた素晴らしいマイクなので、ハンドヘルド型はどういう音がするのかと思い、OD303を購入しました。5mm、1cm単位のマイキングでの近接効果による低音の変化が面白く、打楽器に使っています。PAの際もひとまず持参すればマイキングだけで音作りできるので、声から楽器まで何にでも使っている感じ。弱音のソースよりは、しっかり音を出す楽器や声に向いている印象です。
OC818は、音楽が生業の人以外には、決して安くありません。しかもラージ・ダイアフラムなので、そのままでは高域がややおとなしい。その点、CC8はトランジェントがしっかりしていてスモール・ダイアフラム特有の音なので、そのまま使いやすく、エンジニア以外の方々にとってコスト・パフォーマンスに優れる気がします。その形状から、低音に向かないように思っている方がたまにいらっしゃいますが誤解です。チェロやウッド・ベースにも良いですよ!
Artist|原田郁子 × OC818
生まれて初めて自ら買ったマイクがOC818
2020年、コロナの影響でライブ活動が止まってしまい、ものすごく時間ができたときに、少しずつ宅録を始めたのですが、エンジニアの星野誠さんにお薦めのマイクを聞いてみたところ、幾つか挙げてもらった中に“OC818 Live Set”がありました。2本あると何か面白いことができそうかも!?ということと、名前に“Live”と付いているのもいいなと思って、購入しました。生まれて初めて自分で買ったマイクだったのですが、その時の鬱々とした気持ちをポジティブに転換してくれるくらい、このマイクに出会ったことは大きかったです。
場所の空気感、臨場感が録れるところが好きです。クラムボンのライブPAをずっとやってくれているエンジニアの西川一三さんもすごく気に入っていて、クラムボンやフィッシュマンズで配信ライブをやったときに、必ずアンビ的に2本立てて、バンドの音にエアーとして混ぜていました。そうすることで、画面越しだとしても箱鳴りや音圧を感じられて、もう“ない”ことが考えられないくらい活躍していました。
私のソロ・アルバム『いま』に収録されている楽曲「いまここ」で、詩を書いてくださった谷川俊太郎さんの朗読の声を、エンジニアの奥田泰次さんとご自宅に伺って、OC818 Live Setで録音させてもらっています。プライベートな空間で、椅子に座って読んでいる。“そこにいる”という存在感が、とても自然に録音されていて、うれしいです。
OC818のほか、ヘッドフォンHi-X65を作業中に愛用しています。ローからハイまで、きれいに聴こえてきて、やっぱり空気感を感じるような気がします。ずっとつけていても耳が疲れず、リップ・ノイズや子音の響きもクリアに聴こえます。
Artist|ぷにぷに電機 × OD505
ライブでの“声のマイク乗り”が改善
レコーディングとライブのマイクの差。これは長らく私を苦しめていたもののうちの一つです。OD505は、その苦しみを終わらせるのに、現在最も有効な解決策と言えるでしょう。息と声をブレンドさせることで感情の機微を表現する私のスタイルは、ライブ会場ではものすごく“マイク乗りの悪い声”になってしまいます。OD505はダイナミック・マイクでありながら、マイクに内蔵されたアクティブ・ダイナミック・カプセルが声の些細な変化も拾い上げてくれます。まさにコンデンサー・マイク相当の感度! また、最初は少し強引かな?と思っていた本体の120Hzローカット・フィルターも、音数の多い曲の中で声の輪郭をすっきりさせてくれるので手放せないものになりました。
このマイクが、この価格帯なのはとても信じがたいことです。リーズナブルですよね。私のように、コンデンサーは大親友だけど、ダイナミックさんとはイマイチ仲良くなれないな……と感じている方にこそ、お薦めしたいマイクです。
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