注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップスタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回は、YAMAHAのパワード・モニタースピーカーHSシリーズに、新たにラインナップされたHS4とHS3を取り上げる。これまでのシリーズ製品よりもコンパクトなサイズとして誕生した両製品について、ヤマハミュージックジャパンの花形優一郎氏と、メディア・インテグレーションの福山智宏氏に語っていただいた。
Photo:Takashi Yashima(メイン画像)
HS4 / HS3
YAMAHAのパワード・モニタースピーカー、HSシリーズの新ラインナップ。それぞれブラックとホワイト、2つのカラーバリエーションが用意されており、左からHS4、HS4W、HS3、HS3Wとなっている。2台1組のペアで、電源スイッチやボリュームノブ、入力端子などはL側に搭載。外形寸法/重量は、HS4のL側が150(W)×240(H)×213(D)mm/3.7kg、R側が150(W)×240(H)×213(D)mm/3.1kg、HS3のL側が132(W)×223(H)×189(D)mm/2.8kg、R側が132(W)×223(H)×177(D)mm/2.1kg。付属品として、ステレオミニ〜RCAピンケーブル(1.5m)、左右の接続用のスピーカーケーブル(2.5m)、 ゴム脚×8(2台分)が用意されている。
●まずHSシリーズの成り立ちから教えていただけますか?
花形 成り立ちを語る上で必要不可欠なのが、1977年に発売され、通称“テンモニ”と呼ばれているNS-10Mです。スタジオモニターとして非常に多くのエンジニアに愛用していただき、世界中のスタジオで活用され、今でもファンが多い機種です。その後も1998年にMSP5をはじめとするMSPシリーズをリリースするなど、YAMAHAはこだわりを持ってモニタースピーカーを開発しています。HSシリーズは初代が2005年発売で、当時はハイビット/サンプリングレートの音楽制作に進化しつつあった頃ということもあり、より高品位なニアフィールドモニター需要に答えたいという背景がありました。HSシリーズは2013年から現在の第2世代となり、長年のノウハウと最先端の解析技術を融合させ、さらに精確性に磨きをかけた次世代モデルになっています。
●NS-10Mの思想も受け継いでいるのでしょうか?
花形 そうですね。YAMAHAのモニタースピーカーは一貫して、“何も足さないし、何も引かない”というフラットさを一つのポイントにしています。NS-10Mがそうであったように、原音に忠実であることを目指していて、そこはシリーズとして強く受け継いでいる部分です。
●HSシリーズについて、ユーザーからはどのような理由で支持されていますか?
福山 比較的求めやすい価格設定になっているのが、導入としての候補に挙がりやすい理由の一つですね。あとは白のカラーという見た目の特徴も話題になっています。
花形 制作の環境が白い部屋だったり、白い家具で統一したいというこだわりを持つ方も近年増えています。部屋に置いたときの見栄えも考慮して、ユーザーが選択できる2種類のカラーを用意しました。
●新たに登場したHS4とHS3は、シリーズの中でもコンパクトなサイズですね。
花形 どうしても空間や音量に制約がある方もいらっしゃると思います。そこで、制作に十分活用できるクオリティを持ったコンパクトなモニタースピーカーが欲しいという要望に応えるべく開発しました。
福山 数年前から、モニタースピーカーはコンパクトなモデルがトレンドになっています。持ち運び用途や、セカンドモニターとして導入するケースも多いですね。
●両機種のスピーカー構成など、スペックを伺えますか?
花形 どちらも2ウェイ・バスレフタイプのモニタースピーカーで、HS4はLFに4.5インチのウーファーを、HFに1インチのドームツィーターを採用し、HS3はLFに3.5インチのウーファーと、HFに0.75インチのドームツィーターを採用しています。アンプ出力はともにクラスDの26W+26Wで、周波数特性の低域がHS4は60Hz、HS3は70Hzまでという違いがあります。高域は両機種とも22kHzです。そのほか、機能面や入力端子などの仕様は共通しています。また、フロントにボリュームノブとヘッドホン端子を備えているのも、HS4、HS3の特徴になっています。
●確かに、前面でボリュームを操作できるのは便利ですね。また、ヘッドホンを接続するとスピーカーからの出力が即座にミュートされるのも親切な設計だと感じました。
花形 ヘッドホンに切り替えてすぐに聴き比べられるという利便性を考えた仕様です。ボリュームノブもそうですが、ミキサーやオーディオインターフェースを持っていない方に配慮した設計になっています。
●リアパネルも共通した仕様になっていて、あらゆるソースに対応できるよう入力端子がそろっています。
花形 使いやすさという点は常に意識しているところで、一般的な用途で考えられるすべての端子を搭載しました。ここでもやはりオーディオインターフェースだけでなく、コンピューターからの直接入力も想定しています。HS4、HS3はペアでの販売ということもあり、最初に音を出すまでの早さも重視しています。
●すごくユーザーフレンドリーな印象です。
福山 コンパクトなモデルだとXLR端子がないことも多く、そのスピーカーに対応するケーブルを持っていないというケースや、ボリュームが前にないと毎回手間がかかるといった話は、店頭で実際に聞いたこともあります。その点、ユーザーの声がきちんと反映されているんだなと感じますね。
花形 HS4とHS3には付属品として、2台の左右接続用のスピーカーケーブルと、ステレオミニ〜RCAピンケーブルを用意しています。ワンパッケージですぐに音が出せるようになっているというのも、これまでのHSシリーズとは異なったお薦めポイントです。
●バスレフポートは、YAMAHAのほかのスピーカーにも採用されている独自技術、ツイステッドフレアポートになっています。
花形 元々はオーディオビジュアル製品から始まった技術で、MSP3AやポータブルPAシステムのSTAGEPAS 1K mkIIといった製品にも備わっています。一般的なひねりのないストレートのポートでは、ポートの端の部分で少し空気の乱れが発生してしまい、それが実はノイズの原因になりやすい。そこで、このポートにひねりを加えています。特徴的な形なので、初めて見ると“おっ”と思われるかもしれませんが、これが空気の乱れを抑えて、非常にクリアな低域を実現しているんです。
●リアパネルにはROOM CONTROLとHIGH TRIMという2つのスイッチがありますが、これらはどういった機能となっているのでしょうか?
花形 ほかのHSシリーズにも備わっていて、ROOM CONTROLは低域の出力特性を補正するもので、500Hz以下をフラット/−2dBカット/−4dBカットから調整可能です。HIGH TRIMは高域のレベル調整で、2kHz以上をフラット/2dBブースト/−2dBカットから調整できます。積極的に追い込むためというよりは、設置した部屋の音響特性に合わせるためのものです。それぞれ低域も高域も、ある程度ポイントとなる帯域に設定していて、“結構変わるね”という声もいただいている機能です。
●サウンドの面では、HS4とHS3に違いはあるのでしょうか?
花形 2つの差としては、先ほど申し上げた周波数特性の低域が60Hzと70Hzという違いがあるという点です。それは恐らく実際に聴いていただいたときに感じられる部分かなと思いつつも、やはり大きな特徴である原音への忠実さ、出音の素直さはどちらにも一貫してあります。また、シリーズのHS8、HS7、HS5と順番に並べて聴き比べたときに、徐々に口径が小さくなっても原音忠実な“HSらしさ”は損なわないことを重視しています。HS3とHS4、HS3とHS7でも、全くキャラクターが変わらないようにというイメージですね。物理的に口径が小さくなると低音が出ないという差はありますが、小さなモデルを聴いても低音が想像できるという音質に仕上げています。
福山 特にミックス時は音をジャッジしないといけないので、HSシリーズのような原音忠実が求められる場合が多いと思います。HSシリーズは数あるスピーカーの中でも、硬すぎず柔らかすぎず、本当にフラットな印象です。
●サイズの選択肢が多いのもいいですね。
福山 スピーカーのサイズは、部屋の環境+再生ボリュームを判断基準にするのがよいと考えています。大きいスピーカーを小さな音で鳴らすのはよくないし、その逆もしかり。そのスピーカーのサイズに合った音量を鳴らすことで、最も性能を発揮できるんです。
花形 HS4、HS3もそこを考えて開発していまして。先に5インチを発売している場合、4インチを飛び越えて3インチを発売する、というメーカーが多いかと思います。今回HS4とHS3を発売したのはまさに福山さんがおっしゃったように、サイズの選択肢の幅を広げるという意図ですね。
●導入に適しているという面もありつつ、さまざまな用途にも対応し、幅広いユーザーが活用できそうです。
花形 我々としては、楽曲を制作するクリエイターだけでなく、映像制作をされている方やストリーマーにも一度聴いていただきたいし、実物を見ていただきたいと思っています。皆さん正確な音をお求めでしょうし、かつコンパクトなスピーカーが欲しいという方にはぜひお薦めしたいです。
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