Astell&Kern AK ZERO2 × 照内紀雄 〜原音追求の哲学を反映したイヤモニをプロ・エンジニアが検証

Astell&Kern AK ZERO2 × 照内紀雄

ハイレゾ・オーディオ・ブランドAstell&KernからオリジナルIEM(インイヤモニター:イヤモニ)の新製品AK ZERO2が登場。原音追求の哲学を詰め込んだこのIEMについて、青葉台スタジオのエンジニア照内紀雄が検証する。

Photo:Takashi Yashima(※を除く)

AK ZERO2|Astell&KernのオリジナルIEMの第2弾

Astell&Kern AK ZERO2

Astell&Kern AK ZERO2(179,980円)

 4種の異なるドライバーで構成されたQuad-brid設計と超精密クロスオーバーネットワークを採用。各ドライバーの音響特性を最大限に引き出しながら、バランスのとれたフラットなサウンドを提供する。

SPECIFICATIONS
●形式:密閉型 ●再生周波数:20Hz〜30kHz ●感度:105dB @1KHz(1mW) ●インピーダンス:5Ω @1KHz ●THD:0.7% @1KHz ●素材:アルミニウム ●付属品:4芯純銀コートOFCケーブル 約120cm×2(プラグ:3.5mmアンバランスL字×1/4.4mmバランス×1)、シリコンイヤーピース:5ペア(XS/S/M/L/XL)、ウレタンフォームイヤーピース:1ペア(F)、キャリングケース

スピーカーから聴こえてくるような音像。そして限りなくフラット

Astell&Kern AK ZERO2 × 照内紀雄

照内紀雄 【Biography】青葉台スタジオ所属のエンジニア。Vaundy、ザ・リーサルウェポンズ、amazarashi、和ぬか、なとり、にしな、キタニタツヤ、大橋ちっぽけ、go!go!Vanillas、NEE、ヒプノシスマイク、マハラージャン、超ときめき♡宣伝部などを手掛ける。趣味は筋トレと野営

 AK ZERO2の第一印象は、驚くほどフラットでクリアな音質であるということでした。一般的なイヤフォンは2~4kHzあたりの中高域や200kHz以下の低域が特徴的に作られているものが多いという感覚なのですが、AK ZERO2は上から下までの全帯域がとてもきれいに鳴ってくれます。そして密閉型イヤフォンなのに、音が耳にダイレクトに届いている感じがなく長時間聴いていても疲れにくい。まるでスピーカーで聴いているような感覚になるんです。

 これほど帯域ごとにドライバーが分かれていると位相の差が生じてもおかしくないですが、AK ZERO2は帯域同士がフラットにつながっています。おそらくドライバーやクロスオーバーネットワークといった電子部品と、3Dプリントで作られたチャンバーやハウジングといったアコースティックな部品が絶妙なバランスで調整されているからのでしょう。

Astell&Kern AK ZERO2

AK ZERO2の内部構造(※)

 ほかのイヤモニに比べると少し大きく見える印象ですが、見た目ほど重くなく装着感も全然問題ありません。アルミ削り出しの質感やスタイリッシュなデザインも高級感があって良いですね。イヤーピースは、サイズ違いのシリコン素材が5つ、ウレタン素材が1つと豊富に付属されているので、自分の耳に合うタイプが見つかるはずです。

ミックスの最終チェックで問題点が発見しやすい

 普段のミックスでイヤモニを使うのは“スピーカーではどうしてもその日の体調や気分に左右されやすいローエンドの鳴り方やトータルコンプ感をより正確に判断するため”というのが個人的な理由で、音質よりも“遮音性によって空気感をなくすこと”を重視しています。一方、AK ZERO 2はフラットで空気感のある音質なので、ミックスで使う場合は対照的になりますね。

 DAWを使ってEQやコンプを操作したときの音をチェックしましたが、細部まで聴こえます。パラメーター変化による音の違いがよく分かりました。AK ZERO2はミックスの初めの段階から使うと、聴こえすぎるが故にとことん作業をしてしまいそうなので、ミックスの最終チェックで使うと問題点が発見しやすくて良いですね。マスタリングのチェックにも向いていると思います。

Astell&Kern AK ZERO2 × 照内紀雄

 AK ZERO2は、レコーディングのモニター用としてもお薦めできます。声を張っても耳が痛くなる帯域が強調されにくい。会話が聴こえないぐらいの遮音性があるので、大きな音でも小さな音でも気持ちよくモニターできます。AK ZERO2とラップトップを持ち出せばどこでも音楽制作が楽しめるのではないでしょうか。

 今回、AK ZERO2をMac Book Proに直接刺してチェックした後、同社のUSB-DACのAK HC3も使ってチェックをしてみました。AK ZERO2だけでも十分すぎるぐらいの音質ですが、AK HC3を通すとレンジがさらに広がってパワー感もすごい。実はこういう通すだけで音が良くなるというアイテムにはずっと疑いの目を向けていたんですが、こんなにも音が良くなることに驚きました。これは合わせて使った方が全然良いですね!

Astell&Kern AK HC3

Astell&Kern AK HC3

製品情報

関連記事