「ACOUSTICSAMPLES VWinds Double Reeds」ダブル・リードの木管楽器4種をバンドルしたシンプルなUIの使いやすいソフト音源

「ACOUSTICSAMPLES VWinds Double Reeds」ダブル・リードの木管楽器4種をバンドルしたシンプルなUIの使いやすいソフト音源

フックアップが運営するオンライン・ストアbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのはACOUSTICSAMPLES VWinds Double Reedsです。ダブル・リードの木管楽器であるオーボエ、イングリッシュ・ホルン、バスーン、コントラバスーンの4種類をサンプリングとモデリングを組み合わせたハイブリッド方式で再現したソフト音源バンドル。Mac/Windowsで動作し、スタンドアローンのほか、AAX/AU/VSTプラグインとして使用可能です。

演奏時の空気量コントロールを再現

 VWinds Double ReedsはACOUSTICSAMPLESの木管楽器音源をバンドルした製品です。収録されているのは、VWinds Oboe(オーボエ)、VWinds English Horn(イングリッシュ・ホルン)、VWinds Bassoon(バスーン)、VWinds Contrabassoon(コントラバスーン)という、いずれもダブル・リードを使用する4種類。ただし、実際の内訳としてはオーボエ/イングリッシュ・ホルン/バスーンは、ニュアンスや響きの異なる2種類の楽器がそれぞれサンプリングに使用されているので、合計で7種類の楽器を利用できることになります。しかも、各2種類用意されているオーボエ/イングリッシュ・ホルン/バスーンは、楽器の個体も演奏したミュージシャンも異なるとのこと。そのため音源ごとに独自の個性を持っています。

 またVWinds Double Reedsは、サンプリングとモデリングを組み合わせたハイブリッドな音源方式を採用しています。そのためかライブラリー容量は、オーボエが201MB、イングリッシュ・ホルンが177MB、 バスーンが210MB、コントラバスーンが114MBと、近年のサンプリング音源と比較して非常に少ないと言えます。この容量でとてもリアルな音が出ることも本製品の特徴と言えるでしょう。

 さらにVWinds Double Reedsは、HAT(Harmonic Alignment Technology)と呼ばれる独自技術を採用している点も特色です。この技術を利用した機能を本製品ではエアフローと呼ぶのですが、これは演奏時の空気量コントロールを再現するもので、結果としてダイナミクスなどのアーティキュレーションを簡単に再現することができます。

 それでは、メイン画面を見てみましょう。本稿では例としてVWinds Oboeを使用します。ソフトを起動してメイン画面を確認すると、とてもシンプルなことに驚きます(画面①)。画面に3つ並んでいるノブは、左からビブラート、エアフロー、バーチャルスペース量となっています。

画面① VWinds Oboe(オーボエ)のメイン画面。画面に見える3つのノブは左からビブラート、エアフロー、バーチャルスペース量。その下にはMIX、VIRTUAL SPACE、PREFS(プリファレンス)という3つのタブが並んでおり、クリックするとそれぞれの設定用パネルが開く。

画面① VWinds Oboe(オーボエ)のメイン画面。画面に見える3つのノブは左からビブラート、エアフロー、バーチャルスペース量。その下にはMIX、VIRTUAL SPACE、PREFS(プリファレンス)という3つのタブが並んでおり、クリックするとそれぞれの設定用パネルが開く。

 ビブラートには3つのモードがあり、ノブの下の文字をクリックして、メニューから選択できます(画面②)。

画面② ビブラートのノブの下にある文字をクリックすると、Auto、Auto Time、Manualというビブラートの3種類のモードを選べる

画面② ビブラートのノブの下にある文字をクリックすると、Auto、Auto Time、Manualというビブラートの3種類のモードを選べる

 まずAutoモードは、ビブラート量を演奏の強弱によって自動的に変化させてくれるモードです。次にAuto Timeモードは、基本的にAutoモードと同じ挙動なのですが、エンベロープで設定した時間軸に沿ったビブラート量のコントロールを行えます。Manualモードはノブの操作でピッチをコントロールします。ノブにはCC(コントロール・チェンジ)の11、エクスプレッションが割り当てられているので、周期的でないビブラートを表現したいときにオートメーションを書くか、あるいはMIDIコントローラーなどでコントロールするとよいでしょう。

 次は中央のエアフローです。これは楽器演奏時の空気の量をコントロールするもので、ノブを右に回すと空気が多く流れる状態となり、結果として生じるサウンドが大きくなります。ノブを回して変化を付ける方法のほか、このノブにはCC1が割り当てられているので、MIDIコントローラーやオートメーションでコントロールします。

 右端のノブはバーチャルスペース量を調節します。これは後述するVIRTUAL SPACEパネルのROOM SIZEと連動していて、楽器の演奏空間の大きさを設定できます。

 メイン画面に用意されたパラメーターは以上となります。とてもシンプルで直感的です。VWinds Double Reedsは私がこれまで指で演奏した中で最も演奏しやすいソフト音源と言えるでしょう。

3本のクローズ・マイクで音作り

 VWinds Double Reedsは3本のマイクで収録されており、ソフト上でもそれらのバランスを調整して音作りできます。そのための画面が、メイン画面の左下にあるMIXタブをクリックして開くMIXパネルです(画面③)。

画面③ MIXパネルでは3本のクローズ・マイクの音量バランスを設定できるほか、3バンドEQやリバーブなども用意。VIRTUAL SPACEと呼ばれる仮想の演奏空間に設置されたステレオ・マイクとの音量バランスを取ることも可能

画面③ MIXパネルでは3本のクローズ・マイクの音量バランスを設定できるほか、3バンドEQやリバーブなども用意。VIRTUAL SPACEと呼ばれる仮想の演奏空間に設置されたステレオ・マイクとの音量バランスを取ることも可能

 ここでは3本のクローズ・マイクの音量バランスを設定できます。各クローズ・マイクは楽器からの距離が異なり、いずれもかなりドライな印象ですが、個々のマイクの位置は画面表示のイメージ通りでした。

 これら3本のクローズ・マイクには3バンドEQが用意されています。そして、EQの右隣には、クローズ・マイクと後述するVIRTUAL SPACE用マイクの混ぜ具合を調節するスライダーがあります。先ほども触れた通り、VIRTUAL SPACEとは演奏空間を仮想的に再現するもので、その仮想空間に置かれたステレオ・マイクとクローズ・マイクのバランスを調節するということになります。さらに、このセクションにはリバーブも用意されていて、プレートやスプリング、ルーム、ホールなどさまざまな響きが用意されています(画面④)。

画面④ MIXパネルにあるリバーブのメニュー。プレート、スプリング、ルーム、ホールなど、多彩な響きを用意

画面④ MIXパネルにあるリバーブのメニュー。プレート、スプリング、ルーム、ホールなど、多彩な響きを用意

 メイン画面下部のVIRTUAL SPACEタブをクリックすると、VIRTUAL SPACEパネルが開きます(画面⑤)。

画面⑤ VIRTUAL SPACEパネル。仮想の演奏空間で、ユーザーは画面をクリックして楽器の配置を決める。ステレオの広がり感を調節するSTEREO WIDTHや部屋の大きさを設定するROOM SIZEなどのパラメーターも装備

画面⑤ VIRTUAL SPACEパネル。仮想の演奏空間で、ユーザーは画面をクリックして楽器の配置を決める。ステレオの広がり感を調節するSTEREO WIDTHや部屋の大きさを設定するROOM SIZEなどのパラメーターも装備

 ここではIRを用いたポジション設定が可能で、クリックした位置が演奏者の位置ということになるためとても直感的です。また前述した通り、VIRTUAL SPACEにはステレオ・マイクがセッティングされています。しかも、ORTF、AB、AB Wide、XYという4種類のステレオ方式から選択可能です(画面⑥)。

画面⑥ VIRTUAL SPACE用ステレオ・マイクは4つの方式から選択可能

画面⑥ VIRTUAL SPACE用ステレオ・マイクは4つの方式から選択可能

 なお、実際に各楽器を演奏してみるとイングリッシュ・ホルン1とコントラバスーンは、バルブ操作やタンギングによるノイズなども発音されます。特にコントラバスーンはノイズがよく聴こえました。そのため、コントラバスーンをVIRTUAL SPACEの後方に配置した場合でもノイズが聴こえてきます。しかし、現実には後方の楽器からノイズが聴こえてくることはありません。そこで、配置場所によってはノイズをなくすように調整することが必要です。これはPREFS(プリファレンス)パネルで行えます。またノイズ以外に、楽器の配置に合わせてEQを調整することも必要になるでしょう。

 そのPREFSパネルには、ピッチやレガート、ビブラート、MIDIなどの初期設定項目が並んでいます。個人的に面白いと感じたの機能は、ピッチのセクションにあるNOTE PITCH IMPRECISIONで、これは調子外れの音をランダムに発生させるというもの。少しコミカルなニュアンスを加えたいときに重宝しそうです。またGENERALセクションでは前述の通り、バルブ操作やタンギングノイズ調整が可能です。

 ここまで各画面の主要な機能を見てきましたが、結論としてVWinds Double Reedsはシンプルに音が良く、CPU付加も軽く、使いやすいという、ソフト音源において重要なすべてがそろっている製品だと感じました。個人的にはイングリッシュ・ホルンの独特な響きや、コントラバスーンの低音感がとても好きです。曲を作るときに音の良さはとても重要だと思っているのですが、特に生楽器に近い響きの音源を使うと、よりクリエイティブにフレーズを生み出せそうです。その点でも、木管楽器を使用した楽曲を作る際は、VWinds Double Reedsを立ち上げることになりそうです。

 

ACOUSTICSAMPLES VWinds Double Reeds

beatcloud価格:31,040円 (2023年10月時点)

 Requirements 
■Mac:macOS 10.14〜13(64ビット)
■Windows:Windows 10/11(64ビット)
■共通:本製品はUVI Workstation 3で動作する。UVI Workstation 3のインストールには57.8MB、ライブラリー用には710MB以上の空き容量が必要。7,200回転仕様のハード・ディスク・ドライブまたはSSD推奨、4GB RAM(8GB RAMを推奨)
■対応フォーマット:スタンドアローン、AAX/AU/VST/VST3

 

近谷直之

【Profile】CMや映画、ドラマ、ゲームなどへの楽曲提供のほか、ロック・バンド鋭児のプロデュースも行う。2023年8月クール『●●ちゃん』(ABCテレビ)、10月クール『パリピ孔明』(フジテレビ)の音楽を担当。

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