Shin SakiuraがWAVES StudioVerseをレビュー 〜ラウドでパンチ感のあるドラムの音作りに最適なプラグイン・チェイン

Shin SakiuraがWAVES StudioVerseをレビュー 〜ラウドでパンチ感のあるドラムの音作りに最適なプラグイン・チェイン

プラグイン・エフェクトのシーンにおいて質量ともに大きな存在感を放つブランドWAVESが、AIサーチ機能搭載のミックス・アシスト・システム/オンライン・プラットフォーム、WAVES StudioVerseをリリース。ここでは、プロデューサー/ギタリストのShin SakiuraにStudioVerse/StudioRackをテストしてもらい、使用したチェインを分析/レビューしていただきました。また、今回特別にオリジナル・チェインをStudioVerseにアップしてもらったので、ぜひお使いください!

プロが作ったチェインを誰でも簡単に使えるのが最高です

今回使ってみたチェイン:DRUM BUS STARTUP

“ラウドでパンチ感のあるドラムの音作りに最適なプラグイン・チェイン”

 StudioVerse画面 

DRUM BUS STARTUPのStudioVerse画面

 StudioRack画面 

DRUM BUS STARTUPのStudioRack画面

 上の画面がDRUM BUS STARTUPをロードしたWAVES StudioRack。4つのマクロ・ノブを備え、RACKセクションにはParallel Split、16バンド・リミッター/マキシマイザーのWAVES L3-16 Multimaximizer、マルチバンド・エンハンサーのWAVES Infected Mushroom Pusher、マキシマイザーのWAVES L2 Ultramaximizerを格納している。

ASSIGNボタンで自分好みにカスタマイズ

 第一にStudioVerseの使いやすさに感動。StudioRackをインサートし、Scanボタンを押すだけで、AIが最適なプラグイン・チェインを複数集めてきてくれるんです。Loadボタンを押せば、一瞬でStudioRack内にチェインが組まれるので、後はマクロ・ノブを回すだけで良い感じの音になります。また“どのマクロにどのパラメーターがアサインされているのか”を、RACKセクションのEDITボタンを押せば一覧で確認できるのも便利。ASSIGNボタンでは、マクロ・ノブを自分好みにカスタマイズすることが可能です。

 今回試したのはDRUM BUS STARTUP。読んで字のごとくドラム・バス用のチェインで、“4つのマクロ・ノブを触れば、ドラムにパンチ感やラウドさを加えられます”というもの。ドラムの処理をしたいけれど“どうしたらいいの?”といったビギナーの方にもお薦めのチェインです。

 まずはRACKセクション1段目のParallel Splitから。スロット1がサイド成分でスロット2がミッド成分に作用するように設定されています。純粋に“M/S処理もできるのか!”と感心しました。

Parallel Splitの画面。スロット1とスロット2の最上段にはメニューが表示されており、ここでミッド/サイド/モノラル/ステレオの設定を切り替えることができる

Parallel Splitの画面。スロット1とスロット2の最上段にはメニューが表示されており、ここでミッド/サイド/モノラル/ステレオの設定を切り替えることができる

 スロット1にはEQのWAVES Linear Phase EQとマキシマイザーのWAVES L3-LL Ultramaximizerが挿さっていて、MACROセクションのWIDTHノブにはLinear Phase EQの入力ゲイン・スライダーがアサインされています。L3-LL Ultramaximizerも詳しく見たところ、スレッショルドが0.0dBに設定されていたため、要は“自分でリダクション具合を決めてくださいね”ということなんでしょう。

EQプラグインのWAVES Linear Phase EQ。画面右上にある入力ゲイン・スライダーは、マクロのWIDTHノブにアサインされている

EQプラグインのWAVES Linear Phase EQ。画面右上にある入力ゲイン・スライダーは、マクロのWIDTHノブにアサインされている

リミッター/マキシマイザー・プラグインのL3-LL Ultramaximizer。デフォルトでは、スレッショルド値が0.0dBに設定されている

リミッター/マキシマイザー・プラグインのL3-LL Ultramaximizer。デフォルトでは、スレッショルド値が0.0dBに設定されている

 ドラムで特に重要になってくるのはミッド成分ですが、スロット2は低域を補強するためのプロセッサーWAVES Renaissance Bassや、スロット1でも使用されているLinear Phase EQおよびL3-LL Ultramaximizerを格納しています。

 Linear Phase EQはスロット1とスロット2のどちらにおいてもローカット用途で使われていますが、サイド成分をつかさどるスロット1のLinear Phase EQの方が、ミッド成分をコントロールするスロット2のそれよりもローカットのEQポイントが高く設定されていたので“細かいところまでしっかり作り込まれているな”と感じました。

 スロット2におけるRenaissance BassのIntensity、そしてFreqというパラメーターは、MACROセクションのSUB AMTノブ、およびSUB FREQノブにそれぞれアサインされています。例えばSUB AMTノブをブーストするとIntensityの値も上がるため、マクロ・ノブからミッド成分の低域を補強する効果を簡単に得られるのです。この点、ビギナーの方にとっても扱いやすいように練られているなと思います。

Parallel Splitのスロット2の2段目に用意されたWAVES Renaissance Bass。低域を補強するためのプラグインだ。ここではパラレル処理でミッド成分に使用されている

Parallel Splitのスロット2の2段目に用意されたWAVES Renaissance Bass。低域を補強するためのプラグインだ。ここではパラレル処理でミッド成分に使用されている

 このように、Parallel Splitからだけでも王道のM/S処理が学べます。実はこのテクニック、自分はスタジオに居るミックス・エンジニアさんから直接教えてもらったのですが、StudioVerseとStudioRackがあれば何も知らなくても使えてしまうという……何と素晴らしいシステムなんでしょうか。

ビギナーにも優しい操作感

 RACKセクションの2段目を見てみましょう。ここには、リミッター/マキシマイザーのWAVES L3-16 Multimaximizerが入っています。スレッショルドの値は0.0dBになっていて、このスレッショルドはMACROセクションのLOUD!ノブにアサインされているのです。ユーザーが好きなように音圧感を決めてくれということなのでしょう。

リミッター/マキシマイザー・プラグインのWAVES L3-16 Multimaximizer。画面左上に見えるスレッショルド値は、デフォルトでは0.0dBに設定されている。なお、このスレッショルドはMACROセクションのLOUD!ノブにアサインされている

リミッター/マキシマイザー・プラグインのWAVES L3-16 Multimaximizer。画面左上に見えるスレッショルド値は、デフォルトでは0.0dBに設定されている。なお、このスレッショルドはMACROセクションのLOUD!ノブにアサインされている

 なお、このLOUD!ノブにはあと2つのパラメーターがアサインされています。それは3段目にインサートされたマルチバンド・エンハンサー、WAVES Infected Mushroom PusherのMAGICノブとPUSHノブです。MAGICノブは全帯域のエンハンス効果とダイナミクス調整を同時に行え、PUSHノブはリミッター/クリッパーといった効果を持っています。普段、自分もこのプラグインをよくドラム・バスに使っているので、このプリセットを作ったエンジニアのプレストン・リード氏にめちゃくちゃ共感しましたね。LOUD!ノブのかかり具合はとても強いので、例えば破壊的なドラムを演出したいときにも有効だと思います。Infected Mushroom Pusherは、挿すだけでも音が良くなるのでお薦めです。

3段目にインサートされたマルチバンド・エンハンサー・プラグイン、WAVES Infected Mushroom Pusher。DRUM BUS STARTUPでは、MAGICノブとPUSHノブが、マクロのLOUD!ノブにひも付いている

3段目にインサートされたマルチバンド・エンハンサー・プラグイン、WAVES Infected Mushroom Pusher。DRUM BUS STARTUPでは、MAGICノブとPUSHノブが、マクロのLOUD!ノブにひも付いている

 最終段にはWAVES L2 Ultramaximizerがありますが、これは本来通りリミッターとして使用しているのでしょう。前段のInfected Mushroom Pusherで暴れたとしても、最終的にはここでピークが付かないようにしています。

最終段にはリミッター/マキシマイザー・プラグインのWAVES L2 Ultramaximizerを使用。「音割れ防止のために用いられているのでしょう」とShin Sakiuraは語る

最終段にはリミッター/マキシマイザー・プラグインのWAVES L2 Ultramaximizerを使用。「音割れ防止のために用いられているのでしょう」とShin Sakiuraは語る

 DRUM BUS STARTUPは一見シンプルですが、細かいところまでしっかり作り込まれているチェイン。StudioVerseにおける最大の利点は、プロ中のプロが作ったチェインを誰でも簡単に使えてしまうこと。もっと早く存在していたら、今ごろ自分はミックスにもっと詳しくなっていたと思いますね!

使ってみよう! Shin Sakiuraのオリジナル・チェイン

使ってみよう! Shin Sakiuraのオリジナル・チェイン

 一言で表すと、ボーカルに挿すだけで音が整うプラグイン・チェインです。自分は毎回ボーカル処理で扱うプラグインや処理の方法が同じなので、それをギュッとこの中に凝縮しています。まずは基本的なコンプとEQの処理があり、次に倍音を持ち上げ、さらに欲しい帯域をEQでブーストして、それでも持ち上がらないときはエキサイターを用いるという流れです。最終段にはディエッサーやリバーブ、ディレイ、ダブラーを並列処理で入れておきましたので使ってみてください。

 

Shin Sakiura

Shin Sakiura
【Profile】東京を拠点に活動する音楽プロデューサー/ギタリスト。バンド・サウンドからヒップホップ、R&B、エレクトロまで広い音楽性を持ち、自身の作品制作のほか、SIRUPやアイナ・ジ・エンドなどの楽曲制作や、海外アーティストとのコラボと活動は多方面にわたる。

 Recent Work 

【特集】WAVESの最新システムを5人のクリエイターが使ってみた

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