多種多様なタイプをそろえるWAVESのラインナップから、クリエイティブ系のプラグイン、Flow Motion、Codex、OVoxの3種類をピックアップ。愛用WAVESプラグインを紹介してくれたbizとかごめPによるレビューをお届けしよう。
Flow Motion
EQやコンプ系の印象が強いWAVESですが、ソフト・シンセの品質もやはり侮れません。Flow MotionはハイブリッドFMシンセ、Codexはグラニュラー・ウェーブテーブル・シンセシス・エンジンという方式を採用したソフト・シンセです。
多様な表情を生み出せるハイブリッドFMシンセ
Flow Motionは“ハイブリッド”というように、FM方式と減算方式が組み合わさっているシンセです。驚いたのは、プリセットが即戦力になりそうな音色ばかりだったこと。優等生的なこじんまりしたサウンドかと思いきや、しっかりと存在感のある音像になっており、さすがWAVESだと感じました。また、スナップショット・シーケンサーという独自機能があるのも魅力的です。
Flow Motionが放つ音の存在感は、主張し過ぎず音のなじみも両立させた扱いやすいサウンドです。しっかりと個性があり、かつサウンドも扱いやすいので、曲作りの際にまず最初に立ち上げるソフト・シンセとしても使えます。
テクニック紹介:スナップショット・シーケンサーで音色を複雑に変化
ソフト・シンセで一から音作りをする……これはプロの作曲家には当たり前のことですが、ライト・ユーザーには敷居が高いものです。Flow Motionのインターフェースはユニークなデザインを採用しており、直感的なサウンド・メイクを行うことができます。円形にデザインされた4つのオシレーターや視覚的なモジュレーションは視認性も良く、自分のイメージする音色を感覚的に作ることが可能です。加えて前述したスナップショット・シーケンサーという機能が搭載されており、ここで個性的なサウンドを生み出すことができます。スナップショット・シーケンサーはFlow Motionの音色設定を16種類まで保存し、任意の順番で切り替えていくことが可能。白玉のコード演奏でも全く違う音色を連続して変えていくことができます。さらにRecordボタンを押すと、シーケンス再生中に触れたパラメーターのオートメーションを記録/再生も行えるので、複雑な音色変化を得られるのが魅力的です。
Codex
ハードウェアの質感を持つウェーブテーブル・シンセ
Codexは内蔵されているウェーブテーブルのほかに、自分で波形をインポートすることも可能です。WAVES独自のバーチャル・ボルテージ・テクノロジーを採用しており、ハードウェア・シンセのような感覚で音作りできるのも特徴となっています。
印象的だったのは、ほかのシンセ類のプリセットに比べて、リバーブやディレイが強めにかかった音色が多いことです。確かにCodexに備え付けられたリバーブ、ディレイが作り出すサウンドや空気感は独特で、手持ちの空間系プラグインとは異なるものでした。そのほかにもコーラス、ディストーション、ビット・クラッシャーも備わっており、エフェクトも含めて音色作りをこだわるというスタンスは、数々の名プラグインを作ってきたWAVESの心意気を感じる部分です。
テクニック紹介:波形&フレーズの動きでサウンドを演出
Codexにはアルペジエイター/16ステップ・シーケンサーが搭載されており、ホストDAWに同期したテンポで動きのある音を演出することができます。16ステップで好みの音階やリズムを設定することで、自由自在なフレーズを作り、楽曲に彩りを加えることが可能です。細かい部分ではありますが、SWINGやGATEなど、かゆいところに手が届く機能もうれしいところです。モジュレーション・マトリクスでウェーブテーブルの響きに動きを付け、さらにアルペジエイター/ステップ・シーケンサーでフレーズの動きを加えることで、多彩なサウンドが作り出せるでしょう。音色の組み合わせや可能性は無限大で、使いこなせば自分だけの武器になるのがCodexだと思います。
Recent Work
『東亰カニバリズム』
biz feat. Ado
OVox
複雑なモジュレーションも簡単に行える現代的なボーカル・マルチエフェクト/シンセ
OVoxは一言で表すとボコーダー的な機能を持ったボーカル・シンセ・プラグインです。ボコーダーは昨今のシンセウェーブなどの流行により、今またその存在が見直されてきています。しかしOVoxの実態は、ボコーダーの域に留まらず、ハーモナイザーのようにも、ボーカル・シンセのようにも、ボイス・チェンジャーのようにも、また単純にライブ用の手軽なマルチエフェクターとしても動作する、多彩に使えるボーカル・エフェクト/ボーカル・シンセとなっています。
OVoxは、旧来のボコーダー・プラグインに比べて圧倒的に使いやすいのもポイントです。内部にシンセを備えているため、DAW内でのルーティングもシンプルに済ませられるのがうれしいです(サイド・チェイン信号を外部から入力することも可能)。ボコーダーと聞いてピンと来ない方も、OVoxをスタンドアローンで起動し、マイクの入力とMIDI入力を設定すれば、すぐにその魅力が分かるでしょう。自分の声がシンセ・サウンドに変調され、MIDIキーボードで思いのままに弾くことができる楽しさはほかと比べようがありません。さらに入力した声をMIDIに変換し、別のインストゥルメントを演奏するということも可能になっています。
著名プロデューサーによる数多くのプリセットを内包しているのも魅力です。プリセットを巡っていくと自分の声がモンスターになったり、ビート・ボックスになったり、性別が変わったりと、インターフェースの色のごとく七色に変化する声を楽しめます。時代の流れとともにその種類も少なくなっていったボコーダーですが、手軽に“らしいサウンド”を出せるOVoxはとてもありがたいです。
インターフェースは一見シンプルですが、右上のボタンをクリックすることでエディット範囲が広がり、パッと見では戸惑うほどのパラメーターが現れます。このExpanded Viewという画面上では各種エフェクトも設定することができ、4バンドEQやコンプ、ディストーションなど計8種類を用意。これらを使用することで、OVoxを単純にボーカルのマルチエフェクターとして活用することも可能です。また、OVoxはモジュレーション機能も充実しているので、例えば4バンドEQを入力信号でモジュレートとしてダイナミックEQのように動作させるなど、複雑なアプローチも行えます。
流行に合わせつつ、それだけでは終わらない新鮮さも提示するOVox。いろいろな局面で使っていきたい存在です。
テクニック紹介①:モジュレーションを駆使して過激なサウンドに!
OVoxは各パラメーターにモジュレーションをかけることができます。モジュレーション・ソースを関連付けたいパラメーターにドラッグ&ドロップするだけです。LFO×4、ADSRエンベロープ×2、さらに入力音の音量やピッチ、フォルマントもモジュレーションに使用可能。さらにさらに1つのパラメーターあたり4つまでモジュレーション・ソースを設定可能と非常に強力です。
例えばフィルターやフォルマント・フィルターにLFOを関連付ければ、過激なウォブル・サウンドを得ることができます。また、ADSR1(A1)をOVOX 1のTUNEに関連付ければ、テープ・ストップのようにピッチが下がる声を作ることが可能です。これを応用して、声をパーカッションのように使うこともできるでしょう。ピッチ・ベンドもモジュレーション・ソースに加えたら、ビルド・アップのリフを自分の声で作ることだってできます。自身の声を使って過激にフロア映えするサウンドを作れるのです!
テクニック紹介②:ライブで役立つリアルタイム・ハーモナイザー
OVox下部(Expanded View時は中央)のミキサー・セクションは、入力音とシンセ音、変調音などのミックス・バランスを変えることができます。これを利用して、曲のコード進行に合わせたハーモニーを原音とミックスして出力することが可能です。また、その際のコード音は鍵盤で律儀に弾いてもいいですが、NOTE MAPPER機能を使うことで、指一本で簡単に曲のコード進行に合わせることができます。
EDITボタンからNote Map Editorを開き、鍵盤の上にあるピンク色の■マークをクリック。次いで、ピンク色で指定した鍵盤を弾いたときにトリガーしたい和音の構成音をクリックし、青色の■マークを出しましょう。上の画面ではC2を弾いたときにCのコードがトリガーされます。このマッピングを幾つも組んでおくことで、曲のコード進行に合わせたハーモニーを指一本で簡単に生成することが可能です。