FKAツイッグス『カプリソングス』、ザ・ウィークエンド『Dawn FM』 〜D.O.I.'s ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。D.O.I.氏の今月のセレクトは、FKAツイッグス『カプリソングス』、ザ・ウィークエンド『Dawn FM』です。

流行を意識していない独自性

FKAツイッグス『カプリソングス』(ワーナーミュージック・ジャパン)

FKAツイッグス『カプリソングス』(ワーナーミュージック・ジャパン)

 2013年リリースのFKAツイッグス「Water Me」は、サウンドはもとよりビデオの斬新さで当時かなり衝撃を受けました。2019年からまた活動が増え、今回ミックス・テープという形でアルバム・サイズの非常に素晴らしい作品をリリース。近年は動画配信などで楽曲制作のノウハウが共有されやすくなり、世界中で楽曲のクオリティが高まった反面、どうしても個性が失われがちな弊害もあるような気がします。今作は最近のはやりを意識していない独自性が武器になり、かなり面白いサウンドになっているように感じました。流行にとらわれず、自分の中にある面白さに忠実に制作された雰囲気が非常に心地良く、マーケティング的あざとさみたいなものと対極にあります。大半のミックスを御大マイク・ディーンが手掛け、トラヴィス・スコットやカニエ・ウェストなど最先端のサウンド感との親和性が上がっている気がして、そこも大きな魅力になっていると思いました。

レトロ感と相反する作り込まれたミックス

ザ・ウィークエンド『Dawn FM』(ユニバーサル)

ザ・ウィークエンド『Dawn FM』(ユニバーサル)

 ザ・ウィークエンドが、またしても圧倒的な勢いで抗うことのできない魅力にあふれたアルバムをリリース。かつて自分がヒップホップにのめり込んでいった1990年代は、この手のアレンジや構成、メロディはJポップ的で忌み嫌う対象だった気がしますが、時代が変われば正解も変化。非常に新しい、まさに今のサウンドを感じます。トータルのレトロ感と相反してハイからローまでしっかり作り込んだサーバン・ゲネアによる見事なミックスは、本当にすごいレベルです。

D.O.I.

D.O.I.

【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心としながらも、さまざまなプロダクションに参加している