アンダースコアズ『boneyard aka fearmonger』、ランシー・フー『LIVE.EVIL』 〜D.O.I.'s ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。D.O.I.氏の今月のセレクトは、アンダースコアズ『boneyard aka fearmonger』、ランシー・フー『LIVE.EVIL』です。

アイディアがふんだんに詰まった面白さ

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アンダースコアズ『boneyard aka fearmonger』

 予告無しで突如リリースされたニューヨークのプロデューサー、アンダースコアズの新作。SNSを見てみると、自分の好きな玄人筋の方々の反応が思った以上にあって、良い意味でここまで人気があったのかと驚きました。前作『Fishmonger』も圧倒的なクリエイティブの高さを感じましたが、今作も期待を上回る出来。無造作に突然いろんなことが起こるという芸風はそのままに、今回は異なったジャンル(インディー・ポップと往年のダブステップ)が並走するみたいな曲があったり、語尾だけにボコーダー的なニュアンスが混じるボーカル処理があったり、ギミックやキメの面白さが多彩過ぎたり、空間処理を突然変えて音像がバグったように感じさせる技など、このアルバムの面白さは枚挙にいとまがありません。コラージュ音楽的雰囲気もありますが、とにかくアイディアが湧きまくった結果さまざまな要素がふんだんに詰め込まれ、最終的にこうなったという感じかと思います。

デジタルの悪いところが強調されて斬新

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ランシー・フー『LIVE.EVIL』

 音の良さというのは時代時代で正解が変わりますが、イギリスのラッパー、ランシー・フーのアルバム『LIVE.EVIL』は最先端過ぎて理解されるのが難しいレベルの音の良さかもしれません。とても大雑把に言うと、いわゆるローファイ系ではないローファイ感で、デジタルの悪いところを強調した感じのもの。ロニー・J的なローエンドのひずみ感、デジタルのビット落ち的なボーカルのザラつき、空間系の質感も非常に独特な悪さがあり、とにかく斬新で格好良いです。

 

D.O.I.

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【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心としながらも、さまざまなプロダクションに参加している