PIONEER DJ VM-50 〜【ペアで約5万円以下】宅録/DTMに最適なモニター・スピーカー9モデルをレビュー

PIONEER DJ VM-50 〜【ペアで約5万円以下】宅録/DTMに最適なモニター・スピーカー9モデルをレビュー

宅録やDTMに最適なペアで約5万円以下のモニター・スピーカー全9モデルを、音楽クリエイター/ギタリストのShin SakiuraとエンジニアのSUI氏が徹底レビュー! ここでは、PIONEER DJ VM-50を紹介します。

低域~高域まで滑らかに聴こえるよう設計。正確な音を目指し不要な振動を軽減

PIONEER DJ VM-50|製品価格:22,000円/1台

PIONEER DJ VM-50|製品価格:22,000円/1台

 ウーファー、ツィーターそれぞれに30Wの高効率でひずみの少ないクラスDアンプを1つずつ搭載。ツィーターのホーン部分の幅をウーファーとそろえることで、低域と高域の交わる帯域が滑らかにつながるように設計されている。また厚さ4mmの強固なアルミニウム製のフロント・バッフルを使用することで不要な振動を軽減し、正確な音を表現できるという。高域と低域それぞれの音響バランスを4種類から選択可能なため、部屋の環境や用途に合わせて計16種類の音響バランスで再生することができる。

 Point 

  • ウーファー口径:5.25インチ
  • 入力端子:XLR/TRSフォーン・コンボ、RCAピン
  • その他:部屋の環境や用途に応じて音響バランスを4種類から選択可能

SPECIFICATIONS
●形式:2ウェイ・アクティブ・スピーカー ●スピーカー構成:1インチ径ツィーター+5.25インチ径ウーファー ●周波数特性:40Hz~36kHz  ●外形寸法:198(W)×300(H)×265(D)mm ●重量:5.5 kg/1台

低域の見やすさが好み。各楽器の定位も正確に分かる 〜Shin Sakiura

 “フラットな中高域と色付けのないサウンド・キャラクター”という点においてはDM-40Dと共通しているものの、VM-50はより高解像度な印象です。リア・パネルにあるDSP CONTROL機能で、高域と低域のEQ設定をそれぞれ4段階で切り替えられるのがうれしいですね。

 これらの設定をすべてフラットにした状態でチェックしたところ、キックの胴鳴りがする50Hz辺りに迫力を感じますが嫌らしくない程度で、80Hz付近はDM-40Dと同じでよく聴こえるため、ベース・ラインが非常に分かりやすいです。つまりキックとベースの分離感が良いので低域の音作りやミックスがしやすいと思います。低域の処理を一番気にする自分としては、VM-50がすごく好きになりました。

 VM-50は奥行き感や定位感に関しても優秀で、センターにある楽器やパンニングした楽器の位置が正確に分かります。そして、5インチ・サイズのウーファーを搭載しているためか、やはり音像に余裕があるように感じますね。バンド系だけじゃなく、ダンス・ミュージックを作るDTMerから、ミックス・エンジニアまでお薦めできるスピーカーだと思います。

中域の解像度が濃厚なのでトレンドの音楽ともマッチ 〜SUI

 VM-50は“端正な音作り”ができるスピーカーという印象で、DM-40Dと近いものを感じます。特にエンジニアの人にも推薦できるスピーカー。というのも、実際にEQプラグインで特定の帯域を0.5dBブーストすると、その微量な変化をモニターできるからです。あと、パンニングしてもかなりシビアに定位感が分かりますし、奥行き感も良い。リバーブのテイルや、楽器同士の位置関係などが非常に見やすいです。

 中域の解像度が濃厚なので、ポップスはもちろん、近年はやりのシティポップやシンセウェーブ、チル系のヒップホップ/R&Bといった音楽ジャンルとも相性が良いでしょう。6kHz付近の聴こえやすい周波数帯域にフォーカスした音作りができます。

 一方の低域はあっさりしているのでミックス向きかもしれませんが、もし“物足りないかな?”と感じた場合は、内蔵DSPによるEQで低域をブーストするといいでしょう。低域と高域を調整すれば、モニター時の音量を上げすぎる必要もありません。このことから、VM-50は宅録環境で使用するのにぴったりのモニター・スピーカーだと言えます。

レビュワー紹介

Shin Sakiura

Shin Sakiura
東京を拠点に活動する音楽クリエイター/プロデューサー/ギタリスト。2015年より個人名義でオリジナル楽曲の制作を開始。バンド・サウンドからヒップホップ、R&B、エレクトロまで広い音楽性を持ち、自身の作品制作のほか、SIRUPやアイナ・ジ・エンドなどの楽曲制作や海外アーティストとのコラボと活動は多方面にわたる。ギター、ベース、サンプラーなどさまざまな楽器を駆使したライブ・パフォーマンスも注目を集めている。

 Recent Work 

『WILD CHILD feat. brb.』
Shin Sakiura
(PARK)


SUI

SUI
エンジニアのほか、リミックス・ワークも手掛ける音楽クリエイターとしても活動。ギターやベースなどの演奏からプログラミングまでを一人でこなすマルチプレイヤーでもあり、その柔軟なプロダクション・スタイルはメジャー/インディーズ問わず定評がある。近年では作曲家として劇伴音楽にも携わり、ますますその活動の場を広げている。セミナー講師としては自身の技術を惜しみなく講義することも多く、業界内での信頼も厚い。

 Recent Work 

『WATW “ing”』(『Honey, You!』収録)
WATWING
(トイズファクトリー)
※作編曲/エンジニアリング

試聴環境

 今回試聴を行った場所は、多目的スペースである御茶ノ水RITTOR BASEだ。スタジオ内には、一般的な部屋を想定して6畳ほどの空間を用意。そこに簡易デスクとスピーカー・スタンドを設け、モニター・スピーカーを配置した。ここで2人のレビュワーに、リファレンスとなる楽曲を再生したりDAWを立ち上げて作業したりして、全9モデルのスピーカーの性能をチェックしていただいた。

御茶ノ水RITTOR BASE内に作られた、6畳ほどの試聴スペース。L/Rのスピーカーとリスニング・ポジションが正三角形になるように配置している。スピーカーはやや内側に向け、ツィーターは耳の高さになるようスピーカーごとに座椅子の高さを調整する

御茶ノ水RITTOR BASE内に作られた、6畳ほどの試聴スペース。L/Rのスピーカーとリスニング・ポジションが正三角形になるように配置している。スピーカーはやや内側に向け、ツィーターは耳の高さになるようスピーカーごとに座椅子の高さを調整する

製品情報

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