AVANTONE CLA-10A 〜【ペアで約30万円以下】プロがうなる!選りすぐりのモニター・スピーカー11モデルをレビュー

AVANTONE CLA-10A 〜【ペアで約30万円以下】プロがうなる!選りすぐりのモニター・スピーカー11モデルをレビュー

ペアで30万円以下のモニター・スピーカーから選び抜かれた全11モデルを、音楽制作の第一線で活躍するエンジニアの染野拓氏、プロデューサー/コンポーザーのT.Kura氏が徹底レビュー! ここでは、AVANTONE CLA-10Aを紹介します。

クリス・ロード=アルジ氏監修のもと開発。伝統的なリニア電源とクラスABアンプを搭載

AVANTONE CLA-10A Lch フロント
AVANTONE CLA-10A Lch リア
AVANTONE CLA-10A Rch フロント
AVANTONE CLA-10A Rch リア
AVANTONE CLA-10A|製品価格:148,500円/ペア
※写真左がLchスピーカーの前後、同右がRchスピーカーの前後

 エンジニアのクリス・ロード=アルジ氏監修のもと開発されたパッシブ・スピーカーCLA-10に、アンプを加えたモデル。伝統的なテクノロジーへのこだわりから、ノイズが発生しやすいスイッチング電源ではなくリニア電源を採用し、200WのクラスABアンプを搭載。アンプのパフォーマンスを再現するために、旧式のトロイダル・トランスが組み込まれている。背面にはボリューム・ノブのほか、ツィーターのブライトネスを調整するVTPC(Variable Tissue Paper Control)ノブを搭載する。

ユーザーの好みに応じて高域のブライトネスを調整できるVTPC(Variable Tissue Paper Control)ノブ

ユーザーの好みに応じて高域のブライトネスを調整できるVTPC(Variable Tissue Paper Control)ノブ

SPECIFICATIONS
●形式:2ウェイ・パワード ●スピーカー構成:180mm径ウーファー+35mm径ツィーター ●周波数特性:60Hz~20kHz ●外形寸法:381.5(W)×215(H)×197(D)mm ●重量:8.2kg/1台

中〜高域の処理に特化。独自機能で高域がシルキーに 〜染野拓

 大規模なスタジオに置いてあるパッシブ・モニターと言えばYAMAHA NS-10Mのイメージが大きいですが、CLA-10AはNS-10Mの音に近いものを感じます。もちろん使用するアンプや設置環境、個体差で音は変わりますので、あくまでもパッと聴いた印象という意味です。

 CLA-10Aの良いところは中〜高域の解像度が高く、アタックが聴きやすい点。なので、ボーカルやシンセ、ピアノ、ギター、ストリングスといった中〜高域の楽器の処理に向いていますし、ロックやポップスといった音楽ジャンルとも相性が良いでしょう。ゲインを上げていくとペーパー・コーンらしい独特のサウンドになり、2〜300Hz付近にある音のたまり具合を判断しやすくなります

 最もユニークだと思ったのはVTPC機能。これはNS-10Mのツィーターにティッシュをかぶせて高域をコントロールするというかつて流行した手法を、CLA-10Aで再現するものです。リア・パネルにあるVTPCノブでツィーターのブライトネスを調整できるのですが、これがまたよくできていて、ノブを1段階回すだけで、ティッシュを本当にかぶせたかのようなシルキーな高域になります。ぜひお試しを!

NS-10Mを踏襲しつつ現代的な音色を有する 〜T.Kura

 CLA-10Aは、NS-10Mをほうふつさせるペーパー・コーンらしい中〜高域の鳴りがしますが、CLA-10Aの方が若干あっさりしているので、より現代的なサウンド・キャラクターを持っていると感じます。ゲインを上げ下げしても、周波数特性のバランスがさほど変わらない点が高評価。ステレオ感や奥行き感は明確で、何よりも位相が奇麗に整っていることが最大の特徴だと言えるでしょう

 個人的に好みだったのはVTPC機能。これによって高域の張り具合を細かく調整できるため、空間系エフェクトやディエッサーの処理がより簡単になります。生産完了となったNS-10Mのポテンシャルを、CLA-10Aで再現できるという点が素晴らしいと思います。しかも、パワー・アンプを内蔵しているため、NS-10Mより省スペースなのも大きな利点。これは大規模なスタジオだけでなく、自宅で音楽制作やミックスを行っている方々にとってもうれしいポイントです。既にラージやニアフィールド・モニターを所有している方は、CLA-10Aをサブモニターとして導入するのもよいでしょう。CLA-10Aで良いミックスができるなら、どんな環境でも良い音で鳴らせると思います。

レビュワー紹介

染野拓

染野拓
レコーディング/ミックス・エンジニア、PA。2017年、東京藝術大学音楽環境創造科を卒業。2019年からStyrismに所属し、これまでにCHARA、SIRUP、odol、WONK、モノンクルなどの作品を手掛けている。

 Recent Work 

『Where is "LAGHEADS"?』
LAGHEADS
(LAGHEADS LABEL)
※全8曲のうち7曲のミックスを担当


T.Kura

T.Kura
プロデューサー/コンポーザー。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、Crystal Kay、安室奈美恵、AI、三浦大知などの国内トップ・アーティストを手掛けるほか、1996年にプロデュースしたエリーシャ・ラヴァーンのシングル「Say Yeah!」がUKの『Blues&Soul』誌のチャートで1位を獲得。2010年には、EXILE「I Wish For You」で第52回日本レコード大賞を受賞。日本国内にとどまらず世界で活躍しているR&B/ヒップホップ・プロデューサー。

試聴環境

 モニター・スピーカーの試聴は、前回の特集“はじめてのモニター・スピーカー選び”に続き、東京・御茶ノ水にある多目的スペースのRITTOR BASEで行なった。スタジオにはデスクとスピーカー・スタンドを用意し、全11モデルを個別にスタンドへ配置してレビュー。レビュワーの2人には、リファレンスとなる音源を再生したり、AVID Pro Toolsのセッションで作業したりして、各モニター・スピーカーの性能をチェックしてもらった。

御茶ノ水RITTOR BASE内に設置したデスクとスピーカー。リスナーの位置と各スピーカーの位置が正三角形になるようにリスニング・ポジションを設定している。なお、この写真はレビュー当日のセット・アップを再現したものであり、本番では各レビュアーが持ち寄ったラップトップやオーディオ・インターフェースをデスクに配置した

御茶ノ水RITTOR BASE内に設置したデスクとスピーカー。リスナーの位置と各スピーカーの位置が正三角形になるようにリスニング・ポジションを設定している。なお、この写真はレビュー当日のセット・アップを再現したものであり、本番では各レビュアーが持ち寄ったラップトップやオーディオ・インターフェースをデスクに配置した

製品情報

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