ADAM AUDIO A7V 〜【ペアで約30万円以下】プロがうなる!選りすぐりのモニター・スピーカー11モデルをレビュー

ADAM AUDIO A7V 〜【ペアで約30万円以下】プロがうなる!選りすぐりのモニター・スピーカー11モデルをレビュー

ペアで30万円以下のモニター・スピーカーから選び抜かれた全11モデルを、音楽制作の第一線で活躍するエンジニアの染野拓氏、プロデューサー/コンポーザーのT.Kura氏が徹底レビュー! ここでは、ADAM AUDIO A7Vを紹介します。

音のひずみの要因を可能な限り排除した作り。A ControlソフトウェアでDSPを遠隔操作可能

ADAM AUDIO A7V フロント
ADAM AUDIO A7V リア
ADAM AUDIO A7V|製品価格:オープン・プライス(市場予想価格:91,300円前後/1台)

 ウーファーにマルチレイヤー・ミネラル・ファイバー製のコーンを採用し、音のひずみの要因を可能な限り排除。ツィーターには、正確な指向特性を特徴とするHPSウェーブガイドを装備する。背面に搭載されたEQは、A Controlソフトウェアを使用してMac/Windowsでリモート・コントロール可能。またSONARWORKSの音響補正ソフトSoundID Referenceが内蔵されており、DSPで動作するため、パソコンとスピーカーを接続していない状態でもキャリブレーションの効果を得られるのが特徴だ。

Mac/Windowsで無料で使用できるA Controlソフトウェア。スピーカーのDSPを遠隔かつリアルタイムに制御可能

Mac/Windowsで無料で使用できるA Controlソフトウェア。スピーカーのDSPを遠隔かつリアルタイムに制御可能

SPECIFICATIONS
●形式:2ウェイ・パワード ●スピーカー構成:7インチ径ウーファー+2インチ径ツィーター ●周波数特性:41Hz~42kHz ●外形寸法:200(W)×337(H)×280(D)mm ●重量:9.5kg/1台

制作時とリスニング時で2つのモードを使い分け 〜染野拓

 これまでさまざまなスタジオでADAM AXシリーズのモニターを使用したことがありましたが、今回のAシリーズは初めての体験。A7Vを試してみたところ、非常に聴きやすいバランスに仕上がっていると感じました。全体的に落ち着いたサウンドですが、高域は張りがあり、だけど耳に痛くないので、長時間の作業にも適しています。

 A7Vは2つのサウンド・プロファイルを搭載しており、リア・パネルにあるVoicingボタンで切り替えることができます。Pureモードはフラットで、とても聴きやすいサウンド。高域はアグレッシブですが、ナチュラルさもあるので、やはり聴き疲れしない音になっています。もう一つのUNRモードは低域がブースト気味になり、中域が抑えられる印象ですが、嫌みはなく、主にリスニング用途としてテンションが上がる音だと感じました。制作とリスニングでこれらの2つのモードを使い分けられるため使い勝手が良いです。

 ADAM AUDIO独自技術であるX-ARTツイーターは、リバーブ成分や声の倍音を細かく再現してくれます。音響補正ソフトSONARWORKSとのスムーズな連携もトピックですが、A7Vはデフォルトでも申し分ないサウンドです。

各楽器の輪郭が見えやすくピーク探しにも向いている 〜T.Kura

 A7Vは“高域のスピードが速い”というのが印象深いスピーカー。Voicingボタンで、PureとUNRの2つのサウンド・プロファイルを切り替えてみたところ、僕が好みだったのはPureモードです。バランスが良く、高域と低域が若干強く出ているため、作曲時にテンションを上げてくれるサウンドだと感じました。“アグレッシブになれる音”という表現も近いです。特に高域は情報量が多いので、作曲やミックスの際は判断を間違わないでしょう。一方の低域は、フロント・パネルにバスレフが採用されていますが、ボワッとしておらずタイトな音が特徴的です。総合してA7Vは、各楽器の輪郭が見えやすいスピーカーだと思います。また、ミックスの弱点やピーク探しにも向いているため、作編曲家からエンジニアまで広く使えるモデルだと言えるでしょう。

 さらに、A7VにはA Controlソフトがあり、コンピューターから遠隔操作できます。A7V内蔵のDSPを操作するボタン類はリア・パネルにあるため、これまではいちいちスピーカーの後ろに回り込まなくてはなりませんでしたが、A Controlがあればデスクに座ったまま調整ができるため、快適です。A7Vで作業すれば間違いなし! 

レビュワー紹介

染野拓

染野拓
レコーディング/ミックス・エンジニア、PA。2017年、東京藝術大学音楽環境創造科を卒業。2019年からStyrismに所属し、これまでにCHARA、SIRUP、odol、WONK、モノンクルなどの作品を手掛けている。

 Recent Work 

『Where is "LAGHEADS"?』
LAGHEADS
(LAGHEADS LABEL)
※全8曲のうち7曲のミックスを担当


T.Kura

T.Kura
プロデューサー/コンポーザー。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、Crystal Kay、安室奈美恵、AI、三浦大知などの国内トップ・アーティストを手掛けるほか、1996年にプロデュースしたエリーシャ・ラヴァーンのシングル「Say Yeah!」がUKの『Blues&Soul』誌のチャートで1位を獲得。2010年には、EXILE「I Wish For You」で第52回日本レコード大賞を受賞。日本国内にとどまらず世界で活躍しているR&B/ヒップホップ・プロデューサー。

試聴環境

 モニター・スピーカーの試聴は、前回の特集“はじめてのモニター・スピーカー選び”に続き、東京・御茶ノ水にある多目的スペースのRITTOR BASEで行なった。スタジオにはデスクとスピーカー・スタンドを用意し、全11モデルを個別にスタンドへ配置してレビュー。レビュワーの2人には、リファレンスとなる音源を再生したり、AVID Pro Toolsのセッションで作業したりして、各モニター・スピーカーの性能をチェックしてもらった。

御茶ノ水RITTOR BASE内に設置したデスクとスピーカー。リスナーの位置と各スピーカーの位置が正三角形になるようにリスニング・ポジションを設定している。なお、この写真はレビュー当日のセット・アップを再現したものであり、本番では各レビュアーが持ち寄ったラップトップやオーディオ・インターフェースをデスクに配置した

御茶ノ水RITTOR BASE内に設置したデスクとスピーカー。リスナーの位置と各スピーカーの位置が正三角形になるようにリスニング・ポジションを設定している。なお、この写真はレビュー当日のセット・アップを再現したものであり、本番では各レビュアーが持ち寄ったラップトップやオーディオ・インターフェースをデスクに配置した

製品情報

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