声の入力で操ることが可能なボーカル・シンセ〜WAVES OVox Vocal ReSynthesis

声の入力で操ることが可能なボーカル・シンセ〜WAVES OVox Vocal ReSynthesis

 Reviewed by 
Blacklolita
【Profile】サウンド・デザイナー/音楽クリエイター。ダブステップを軸にさまざまなダンス・ミュージックやゲーム音楽を制作する。また、サンプル・パックのデベロッパー、KYMOGRAPHの運営も手掛けている。

ボコーダー・ボイスから声とマッチするシンセ・サウンドまで

 数あるボコーダー/リシンセシス・プラグインがある中でWAVESが満を持して発表したこのOVox Vocal Resynthesis(以下、OVox)。普通のボコーダーとは違う魅力を持ったプラグインということを、まだ知らない方も多いかと思われます。

 

 “普通のボコーダーではない”と書きましたが、このOVoxは、なんと声でソフト・シンセを操作できる点が画期的です。筆者もそうですが、楽器が弾けない作曲家も数多く活躍する時代になってきた中で、MIDIで打ち込んでいくのはどうしても時間がかかるというもの。中には突然良いメロが舞い降りてくるといったタイプの方々もいらっしゃることでしょう。APPLE iPhoneボイスメモを耳コピしているうちに創作意欲や当初のバイブスが失われてしまう経験をした方も多いのではないしょうか。OVoxでは入力されたオーディオ・ソースを解析し、リアルタイムにMIDI出力を行うことが可能な機能があります。もちろんマイクで歌ったものをMIDI出力することも可能です。まさに夢のような機能ですね。

 

 まずOVoxを立ち上げ、右上のExpand/Collapse(ウィンドウが2枚重なったボタン)をクリックしましょう(画面①)。そうするとシンプルかつ強力に作用するOVoxのシンセ音を決めるセクションとFORMANT FILTERのセクションが出現します。この部分をいじることでボイス・シンセ・サウンドを作り込んでいくことができるわけですね。扱い方はシンセと似ていますが、ボーカルに作用させるという関係上、複雑なウェーブテーブルを使った独創的なサウンドというより、より使いやすく声とマッチするようなシンプルなシンセ・サウンドをメインとした構成になっています。

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画面① 右上にある、四角が二重になったExpand/Collapseボタンを押すと、詳細なパラメーターが展開される。フォルマント・フィルターを備えたシンセ・エンジンが左右に2系統。その間はピッチ検出とピッチ補正、さらには原音やシンセ音などのバランスを決定。下段でEQ、エフェクト、モジュレーションを操る。MIDIノートを入力して、ソフト・シンセとして扱うことも可能

 画面下部にはEFFECTSやEQ、またLFOやステップ・シーケンサーでのモジュレーションも内蔵。OVoxで音作りが完結されるような仕組みも個人的には良いポイントです。

声をMIDIノートに変換し出力可能、入力音声でモジュレーションのトリガーも

 さて、声でのシンセ操作に戻ります。まずはSYNTHと書かれた歯車マークをクリックしましょう! ここでMIDI OUTと書かれたボタンをクリックし、DAW側で任意のMIDIトラックに信号をルーティングするだけ!(画面②)。簡単な手順で自身の声が本物の楽器として使うことができる画期的なデバイスに生まれ変わりました!

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画面② SYNTHと描かれた横の歯車をクリックし、MIDI OUTを設定。するとDAWのトラックへMIDI信号が出力される

 入力ノートの検出間隔を決めることも可能で、画面上部のTOLERANCEに注目(画面③)。TIME部分を調整することで、記録するMIDIノートの最小単位を決めることができます! 隣の音符マークをクリックすれば、クオンタイズされた状態でMIDIレコーディングできるので非常に便利です。

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画面③ 右のTOLERANCEは、一つのノートとして認識される最小単位を設定する項目。NOTE SOURCEをMIDIにすると、ソフト・シンセとして使うこともできる

 この状態でも面白いのですが、声をトリガーにして、エフェクトやシンセサイズを行えたらさらに面白いとは思いませんか? それができてしまうのがこのOVoxのポテンシャルを表しています。

 

 MOD1にTriggerをRetriggerにして、PLAY MODEをOneshotにすると声やマイクで拾った音に反応してモジュレーションが作動します。これを任意のパラメーターにアサインすれば、自分の声に反応するオリジナル・ボコーダー・システムの完成です! これは配信やライブなどのリアルタイムな変化が求められる場面で非常に有効なので、ぜひまずはデモ版を試して実感してみてください!

 

 声を外部のMIDI機器として扱うことが出来るのは非常に面白いですし作業の効率化にも繋がります。新たな視点での音作りやライブ・パフォーマンスの手段としてOVox Vocal ReSynthesisをぜひ試してみてください!

 

WAVES OVox Vocal ReSynthesis【ボーカル処理】

19,690円

 Requirements 
■Mac:macOS 10.13.6(High Sierra)〜11.2(Big Sur)、INTEL Core I5/I7/I9/Xeon
■Windows:Windows 10(64ビット、2014年以降)
■AAX/AU/VST3プラグイン、SoundGrid、スタンドアローン

 

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