Reviewed by
福田聡
【Profile】フリーランスのレコーディング・エンジニア。ファンクやR&Bといったグルーブを重視したサウンドを得意とし、ENDRECHERIやK、Shunské G & The Peasなどを手掛ける。
レベル/ディレイ/スペクトラル/フェイズの4種類のパンニング・モードを搭載
2014年、カリフォルニアにて設立された気鋭のプラグイン・ブランド、GOODHERTZ。クリストファー・ノーラン氏が監督を務める2020年公開の映画『TENET テネット』では、音響作業全般にGOODHERTZのプラグインが使用されたそうです。今回紹介するPanpot GHZ-0009 V3(以下Panpot)は、4種類のパンニング・モードを備える秀逸なプラグイン。Mac/Windowsで動作し、AU/AAX/VST/VST3プラグインに対応します。
今までパンニングと言えば、コンソールに備わったパン・ノブでやるような“音量差”による調整が主でしたが、Panpotはそれに加えて、“時間差”“左右前後の聴こえ方(スペクトラル・キュー)”“位相”を使ったパンニングを実現。Panpotは3Dパンナーではありませんが、非常に3D的な効果を生成できます。
Panpotの画面は至ってシンプル(上画面)。最上段にはマスター・パン、その下には4種類のパンニング・モードがスタンバイしており、それぞれ0〜100%の範囲で調整可能となっています。それぞれにはオン/オフ・ボタンやL/R反転ボタンなどもあるため、個々のサウンドをミックスすることもできます。
4種類のパンニング・モードは、左からレベル/ディレイ/スペクトラル/フェイズです。“レベル”はベーシックな音量差によるパン、“ディレイ”は人間の知覚遅延を利用したショート・ディレイを使用することで、ステレオ・バランスを保ったまま奥行きと広がりを作り出します。画面下段にある“1X”(0.7ms)とある部分をクリックして、ディレイ・タイムの倍率を選ぶことが可能です。
スペクトラルは音色を変化させることなく、高域成分を左右に広げます。よって低域成分は不鮮明にならず、センターにとどまりながらも広くて自然なステレオ・フィールドの音像を作り出せるのです。
一番右側にあるフェイズは非常に珍しいパンニング・タイプ。L/R間において一定のフェイズ・シフトを行うことでソースのセンター要素を無くし、広い音場を作り出します。ステレオ・イメージを強めるエフェクトとして使うとよいでしょう。
そのほかとしては画面右端にある“…”ボタンを押すと、拡張パネルが画面右側に出現(画面①)。L/Rのトリムや反転など、より細かな調整が可能です。
ほとんど感じないCPU負荷、奥行き感や広がりを簡単操作で実現
実際にPanpotを使ってみると、CPU負荷はほとんど無い様子。通したときの音は特に癖も無く、上質でややウェットな印象です。また、当然ながらモノラル・トラックに挿すと、ステレオ・トラックに切り替わります。ステレオ・トラックでも最上段にあるマスター・パンで一括調整ができるので、ステレオで書き出されたモノラル音源のパンを調整するときのわずらわしさが解消したことは何とも快適です。
4種類のパンニング・モードの中で個人的に気に入ったのは、ディレイ・パン。パンニングと同時に奥行き感も付加できるため、レベル・パンで処理したときと比べても、ミックスへのハマり具合が全然違いました。オケに混ぜて聴くと、ちょうど良い具合に溶け込みます。
また、シングル・トラックのギターをダブルのように広げられるのも魅力的。コーラスやディレイで広げる感じとは、ひと味違ったニュアンスが良いです。
さらにスペクトラル・パンは汎用性が高く、フェイズ・パンは位相の変化がかなり強力なので、ほかの種類のパンとブレンドして使うのも有効だと感じました。
Panpotは、これまでパンニング+別エフェクトを併用して作っていた奥行き感や広がりを簡単操作で実現できるプラグインです。クリエイターやエンジニアたちにとっても、パンニング処理の新たなレパートリーとして使える、高性能なマルチパンナーと言えるでしょう。
GOODHERTZ Panpot GHZ-0009 V3【特殊処理】
5,200円
Requirements
■Mac:OS X 10.7以上、AU/AAX/VST/VST3(いずれも64ビット)対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 7以上、AAX/VST/VST3(いずれも64ビット)対応のホスト・アプリケーション