イコライザーとは?〜EQテクニック再入門

イコライザーとは何か?〜EQテクニック再入門

“なんとなくEQしてみたけど、これで本当に良いのかな?”というモヤっとした疑問を持つ方のために、EQテクニックをあらためておさらいする本特集。ここでは、EQ=イコライザーとは何か、そしてEQ処理をする上で知っておきたい基本的な用語を紹介します。パラメトリックEQのプラグインFABFILTER Pro-Q3を元に解説していますが、基本的にはどのEQも同様の項目が搭載されているので、お手持ちのものと見比べてみてください。

イコライザーとは何か?

 イコライザー(Equalizer / EQ)という名の通り、もともとは原音と再生音をイコールにするための補正用に作られたものでした。そこから発展して、今ではいろいろなエンジニアが音色を整えたり、積極的な音作りにも用いるようになっています。

 具体的には、録り音の中で不要な部分をカット、もしくは足りない部分をブーストしたいときに、該当する周波数を特定して、その音量を調整していきます。不要な部分とは、耳障りな部分、もしくはほかの楽器をマスキングし過ぎている部分など。

 例えば、“良いテイクなのにシンバルだけ強くたたき過ぎてしまった” “サウンド・メイクでドラムを大胆にひずませたことでタムの共振が気になってきた” などさまざまなケースが考えられます。それぞれの楽器の音が影響を与え合うので、あっちをやったらこっちを削ってと少しずつ研磨していく感じです。

イコライザー/EQ用語解説

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  1. ピーキング/ベル
    設定した周波数ポイントを中心に、その前後の範囲を含めてカット/ブーストする
  2. HPF/ローカット
    高域成分のみを透過するフィルター。設定値より低い周波数成分を最小値までカットする
  3. LPF/ハイカット
    低域成分のみを透過するフィルター。設定値より高い周波数帯の成分を最小値までカットする
  4. シェルビング
    設定した周波数より下(または上)の帯域をカット/ブーストする
  5. フィルター・スロープ
    カーブの角度。減衰率(カーブの角度)は○dB/octで表される。値が大きいほど急峻なカーブを描く。
    −6dB/Oct…1オクターブ下(または上)が6dB減衰
    −12dB/Oct…1オクターブ下(または上)が12dB減衰
  6. FREQ(フリケンシー)
    EQポイントに設定する周波数帯域の選択
  7. ゲイン
    指定した周波数をカット/ブーストする音量
  8. Q値
    値が大きいほどQ幅が狭く、小さいほどQ幅が広くなる
  9. Q幅
    周波数ポイントをカット/ブーストする前後の範囲。Q値によって幅が変動する

周波数と音を擬音で紐付ける

 僕は擬音で周波数帯域をイメージしています。例えば、スネアが“ポンポン”しているのが気になるとしたら、200〜400Hzを調整する。“コンコン”しているのであれば500〜600Hz。“カンカン”しているならば700Hz〜1kHz。ギターであれば、“ゴォーッ”なら120Hzくらい、“カァーッ”と言っていたら800Hz〜1kHz、“キィーッ”は2.5〜3kHzくらい、“シーシー”なら4〜5kHz、“チリチリ”なら8kHzくらいかなとポイントを探っていきます。

 逆に、“カンカン”言わせたい、“ブンブン”させたいと思ったらその辺りをブーストすればよいのです。自分の中で擬音と周波数を紐付けることで、その音を聴いたときにどの辺りを処理すればよいかがすぐに分かるようになってきます。これは、エンジニアであればクライアントとのやり取りでも役立ちます。スネアが“モヤモヤ”していると言われたら100〜200Hz辺りが多過ぎるのかなとか、擬音だと分かりやすくやり取りできるのです。

 周波数帯域と擬音の結び付けは、耳でやっていくしかありません。最初はEQを大胆に上げ下げしてみて、どの楽器のどの帯域がどういう音をしているのかを自分で確認すると良いと思います。EQに慣れていないと控えめに上げ下げしてしまうかもしれませんが、耳を痛めない範囲で大胆にやることで、どの帯域がどういう音をしているのか把握できますし、Q幅の違いによる上がり方の感覚も身に付いていくでしょう。


 続く「EQテクニック〜基礎編〜(会員限定)」では、EQ処理の事前準備から作業中に「なんとなく」が生じがちなポイントを挙げて1つずつ解説していきます。

 

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講師:大野順平

【Profile】スタジオ・サウンド・ダリ所属のレコーディング・エンジニア。中田裕二、SUGIZO、福原美穂らの作品を多数手掛けるほか、浜端ヨウヘイ、秦基博、LUNA SEA、KOTEZ andYANCYと多ジャンルにわたって個性的なアーティストの作品に携わる。

 

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