昨今の洋楽EDMやダンス/クラブ・ミュージック・シーンにおける主流なシンセ・サウンドやミックス・テクニックなど、最新の音作り術をプロ・クリエイターたちが紹介! ここでは、フューチャー・ハウス(Future House)やベース・ハウス(Bass House)などと並んで今注目されているスラップ・ハウス(Slap House)に登場する“グルービーなシンセ・ベースの作り方”を作曲家/サウンド・クリエイターのSoda Sphereが解説します。
スラップ奏法で演奏したようなシンセ・ベース
ここで紹介するのは、スラップ奏法で演奏したベースのようなサウンドを持つシンセ・ベース、その名もスラップ・ハウス・ベースです! このサウンドは2018年ごろに登場したという比較的新しい音楽ジャンル、スラップ・ハウスでよく用いられています。世界的レーベルSPINNIN' RECORDSなどがこのブームのけん引役となり、TikTokを中心に多くのヒット曲が生まれているようです。
これに併せて、トレンドに敏感な音楽プロデューサーたちもこぞって自身のプロダクションに取り入れているため、スラップ・ハウスはこれからさらに大きく伸びることが期待される“注目のダンス・ミュージック”だと言えます。
テンポは120〜130BPMほどで、バウンシーなベースにハウス系のパーカッションが乗るという構成がポピュラーなのですが、シンプルなアレンジとなっている分、今回紹介するベースも含めて一つ一つのパートをいかに洗練された音にするのかが大切だと言えるでしょう。
参考音源
STEP 1:3つのオシレーターを使用
Shapesを読み込み、ピッチ・トランスポーズを−24(赤枠)、ユニゾンのボイス数を16、デチューンを10%(青枠)に設定してみましょう。
オシレーター2にはVital内蔵のDrink the Juiceというノイズ波形をアサインし、オシレーター1と同じセッティングにします。オシレーター3にはThree Gracesというノコギリ波形をセットし、ピッチ・トランスポーズを−12、ユニゾンのボイス数を1にしましょう。最後はオシレーター1〜3におけるすべてのFrameを120前後に調整します(黄枠)。
STEP 2:フィルターを設定する
次はFILTER1をオンにして、OSC1/OSC2/OSC3をクリック。こうすることで、オシレーター1〜3の音が1つのフィルターに送られます。FILTER1ではフィルター・カーブを“Analog:24dB”にし、右端にあるレゾナンス・バーを0.000%、DRIVEは14dBに設定しましょう。
STEP 3:エンベロープをフィルターにアサイン
エンベロープの調整です。ENV1において、アタックは0.005s、ホールドは0.009s、ディケイは0.471s、サステインは0.479s、リリースは0.197s付近にしましょう。歯切れの良い、アタック感のある音になります。
続けてこのENV1をドラッグし、先ほどのFILTER1の画面のカーブ部にドロップ。これでエンベロープがFILTER1のカットオフにアサインされました。かなりスラップ・ハウス・ベースっぽくなってきたと思います。
STEP 4:ディストーションでメリハリを付ける
仕上げのエフェクト処理です。EFFECTSタブをクリックしてディストーションをオンに。TYPEはHard Clip、Mixは100%にし、DRIVEには前述のENV1をアサインします。すると発音時に最も強くディストーションがかかるようになるため、メリハリのある音に!
なお“イメージしている音に近いんだけど若干違う”という場合は、オシレーター波形を変える前にこのディストーションのTYPEをいじってみるとよいかもしれません。
STEP 5:キックとあまりかぶらないように打ち込む
最後に打ち込む際のポイントです。スラップ・ハウス・ベースのリフは、4つ打ちキックとあまりかぶらない位置でリズムを刻みつつ、ところどころで1オクターブ上のノートへジャンプする部分を多用することが大切(赤枠)。一気にスラップ・ハウスっぽいベース・リフになるでしょう。
完成した音源の試聴はこちら!
Soda Sphere
【Profile】23歳の作曲家/サウンド・クリエイター。18歳のころにSTEINBERG Cubaseを用いた作曲を始める。3年後には登録者数311万人を誇るYouTubeチャンネルAirwave MusicTVから代表曲となる「You And Me」を発表し、世界のトップDJの一人であるニッキー・ロメロからサポートを受ける。