SE ELECTRONICS Z5600A II ~【10~20万円台】ワンランク上のコンデンサーマイク15本をレビュー

ワンランク上のコンデンサー・マイクで歌録りのパフォーマンス&録り音を向上させたい方向けに、10~20万円台の現行モデル15機種をエンジニア&ボーカリストがレビュー!ここでは、SE ELECTRONICSのZ5600A IIを紹介。自社工場でのハンドメイド・カプセルを備える真空管マイクです。

ハンドメイドのカプセルを備えディテールの描写力を重視

SE ELECTRONICS Z5600A II

 自社工場でのハンドメイド・カプセルを備える真空管マイク。無垢の真ちゅう製シャーシも手作りで、温かみのあるサウンドと細部の描写力により、ボーカル録音で高評価を得ているという。本体内のハイパス・フィルターやPADを用いれば、ドラム録りにも使えるだろう。

価格:オープン・プライス(市場予想価格:148,500円前後)

●発売年:2020年(リニューアル再発) ●ダイアフラム径:35mm(2枚とも) ●指向性:無~単一~双(9段階) ●アンプ回路:真空管 ●ハイパス・フィルター:50Hz ●PAD:-10dB ●出力インピーダンス:200Ω ●外形寸法:62(φ)×220(H)mm ●重量:850g

【Engineer】インパクトのある声を録りたいときにお薦め〜中村公輔

 真空管マイクですが、結構ザクっと前に出てくるタイプのサウンドですね。見た目の印象と真空管マイクという情報から、上品でまろやかな音を想像していましたが、かなりユニークな色付けがあって、良い意味で期待を裏切られました。今回テストした中では中域の張り出し感が最も強く、原音よりもかっこいい感じになる傾向です。2~5kHzが少し持ち上がった周波数特性なので、かなり前に出てくる感じがします。

 ただ、それでも不自然さは全くなく、恐らくほとんどの人がボーカル用の真空管マイクに欲している音がすると思います。録音後に軽くひずませると、ビンテージ・マイクに近いニュアンスが出ますね。ロックやポップスでは男性/女性の両ボーカルによく合い、特にもうちょっと派手な声にしたいときにお薦めです。

【Male Vocalist】中低域がしっかりしていてロックに合う音 〜高畠俊太郎

 音色がロックっぽくて好みですね。中低域の声の芯の部分はしっかりあるんですが、声を張ったときに高域がちょっと強めに出ていたので、その部分の歌い方が少し難しかったです。でもモニター音量を調整すれば、理想の歌に近づけられると思いました。曲へのなじみ方に関しては好きなイメージで、小さく歌った部分や低域の質感、歌の芯がマッチしていると感じます

【Female Vocalist】吐息のニュアンスまで捉える解像度の高さ 〜シバノソウ

 吐息などのニュアンスまで、しっかり捉えるマイクだと思います。周波数レンジが広く、解像度が高い印象ですね。その分、ピッチの取り方にも敏感になりますが、歌の表現力を存分に聴かせたい曲に合っていると思います。宅録の場合は部屋の環境に左右されるので、録音の技量が求められるものの、表情やニュアンスをきちんと収める一本だからこそ、使っていて楽しいでしょう。

製品情報

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