NEUMANN TLM 103 ~【10~20万円台】ワンランク上のコンデンサーマイク15本をレビュー

ワンランク上のコンデンサー・マイクで歌録りのパフォーマンス&録り音を向上させたい方向けに、10~20万円台の現行モデル15機種をエンジニア&ボーカリストがレビュー!ここでは、NEUMANN TLM 103を紹介。同社U 87スタイルのカプセルを備えるFETコンデンサー・マイクです。

同社U 87スタイルのカプセルやトランスレスの回路を採用

NEUMANN TLM 103

 NEUMANN U 87スタイルのカプセルを備えるラージ・ダイアフラムのFETコンデンサー・マイク。7dB(A-weighted)のセルフノイズを誇り、出力段はトランスレスとなっている。カラー・バリエーションとして、サテン・ニッケル(写真)とマット・ブラックを用意。

価格:オープン・プライス(市場予想価格:168,300円前後)

●発売年:1997年 ●ダイアフラム径:非公開 ●指向性:単一 ●アンプ回路:FET ●ハイパス・フィルター:非搭載 ●PAD:非搭載 ●出力インピーダンス:50Ω ●外形寸法:60(φ)×132(H)mm ●重量:約450g

【Engineer】声が前に出つつも低重心なサウンド〜中村公輔

 中域に張りがあって、押し出しを感じるサウンドです。ほかのマイクと比較すると全然ニュートラルな音ではないと感じますが、この色付けが歌に説得力をもたらす方向に働いて“ああ、これこれ”ってなるんですよね。周波数特性のグラフを見ると、中域が持ち上がっているわけではないものの、エッジが立った食いつき感というか、程良いザラつきで前に出てくるように聴こえます。派手な音ではあるんですけど重心はちゃんと低いし、トランスレスなのでややツルっとしたところもあるんですが、往年のマイクに近いニュアンスを備えていると感じます。

 同社の上位機種に比べて等価ノイズ・レベルがかなり低いので、オーディオI/Oの内蔵マイクプリで宅録するような場面では、本機の方が良い結果を得られる可能性があると思います。

【Male Vocalist】音のかっこよさに触発される 〜高畠俊太郎

 “かっこいい音”というのが第一印象。そしてロックっぽい音でもあり、ノリながら歌えました。歌った曲に合っていたというのもあると思いますが、ダイナミクスが安定していて、良い感じにグッと声を押し出してくれたので、その音に触発されてパフォーマンスできたんでしょうね。いつも使っているマイクとキャラクターが近いのか、すごくなじみのある感じでした。

【Female Vocalist】声のおいしい成分がしっかりと出る 〜シバノソウ

 普段から使っているメーカーのマイクですし、聴き慣れた音という感じです。マイク自体のコンプ感は薄い印象で、声のおいしい成分がしっかりと出る一方、ちょっとへたに歌ってしまうと、それもありのまま録れてしまう。素直な音ですが、割とキラキラしたニュアンスもあるので、その部分をきちんとコントロールできるようになれば録り音のクオリティを高められると思います。

製品情報

レビュワー紹介

中村公輔

Engineer|中村公輔
特集のイントロでも健筆を振るってくれたエンジニアの中村公輔氏。今回は、普段からエンジニアリングで携わっているボーカリスト2名を招いて、モニター音やプレイバックを聴き、各マイクを評価した


高畠俊太郎

Vocalist|高畠俊太郎
LOOP LINE PASSENGERで活動中のボーカリスト/ギタリスト/ソングライター。今回は、同バンドのミドルテンポ・ロック・チューン「life」を歌い、各マイクを試した


シバノソウ

Vocalist|シバノソウ
アーティスト/シンガー・ソングライター。2020年にリリースしたアルバム『あこがれ』からエモーショナルなポップ曲「あこがれの先」を選び、製品チェックに臨んでくれた

サウンド・チェックをした場所:マジコンスタジオ

マジコンスタジオ

製品チェックは、am8でのアーティスト活動で知られる冨田恭通氏が主を務めるマジコンスタジオで敢行。写真は、SSLのアナログ卓AWS900(初期型)を擁するコントロール・ルームの様子。各マイクをNEVEのマイク・プリアンプ1073で増幅し、AVID Pro Tools | HD I/Oを介してPro Toolsへ24ビット/96kHzで録音した

マジコンスタジオのボーカル・ブース

ボーカル・ブース

特集|ボーカル用マイク、次はどれにする? ワンランク上のコンデンサーマイク15本をレビュー