MANLEY Core〜上位機のトランス部/コンプ/リミッター技術を2Uに集結

MANLEY Core〜上位機のトランス部/コンプ/リミッター技術を2Uに集結

宅録の機会が増えている昨今、高品位なオーディオ・インターフェースやマイクに次いで需要が高まっているのが、マイクプリにEQやコンプを兼ね備えるチャンネル・ストリップだ。この企画では、現在注目の4機種をピックアップし、プロデューサー/DJのWatusiとエンジニアの大西慶明氏が徹底レビュー。ボーカル・テストではシンガーの内田もあが協力してくれた。続いては、MANLEY Coreのレビューを見ていこう。

Photo:Takashi Yashima (except*)

Overview|MANLEY Core

 MANLEYの技術が融合する2Uのチャンネル・ストリップ。同社のハンドメイド・カスタム入力トランスIronのほか、高電圧の真空管マイクプリにはMANLEY Voxboxでも採用されているクラスA回路を内蔵する。またコンプ部には同社のELOPテクノロジーを、リミッター部にはMANLEY Slam!譲りであるブリックウォール・タイプのFETリミッターを搭載。また高域(12kHz)/低域(80Hz)のシェルビングのほか、100Hz〜10kHzに対応するEQを備えている。

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(*)リア・パネル。左から、メイン・アウト(XLR)、インサート(TRSフォーン)、ダイレクト・アウト、ライン・イン、マイク・イン(いずれもXLR)が並ぶ

 SPECIFICATIONS 
■マイク入力インピーダンス:1.2kΩ ■ライン入力インピーダンス:10kΩ ■DI入力インピーダンス:10MΩ ■出力インピーダンス:50Ω(メイン) ■周波数特性:10Hz〜20kHz(±0.5dB) @メイン出力 ■THD&ノイズ:0.02%@1kHz、+4dBm(LOWゲイン時) ■ノイズ・フロア:−70dB wideband typical (最小ゲイン時) ■外形寸法:480(W)×88(H)×180(D)mm ■重量:3.8kg ■価格:オープン・プライス(市場予想価格:297,000円前後)

 

Watusi|“全部入り”で積極的な音作りができる

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 自分は長年MANLEYユーザーでもあるので、同社のサウンドについては熟知しているのですが、Coreを使ってみて思ったのは、“進化したMANLEYだ”ということ。積極的な音作りができる、そんなモデルです。

 

 注目すべきは、フロント・パネル中央にあるEQ部。もはやフィルターのように派手に効くEQが印象的で、シンセの音作りに近いような感覚を得ました。また広いレンジ感を持ち合わせているため、現代的な音像作りにも一役買うことでしょう。このEQ部に慣れてしまえば、あとはこちらの使い方次第。ボーカルだけでなくあらゆる楽器において、独特の“癖”を付けられます。CoreのEQは、男性ロック・シンガーの声とも相性が合うことでしょう。

 

 EQ部の左側にはコンプ、同右側にはリミッターを搭載しているのも便利。コンプの効き方は自然な一方、リミッターは良い意味で“過激な音作り”が可能です。Coreは定評あるMANLEYのトランスIronを備え、前述の通りコンプ/EQ/リミッターも内蔵する“全部入り”なので、コスト・パフォーマンスの面でも非常に優れていると言えます。

大西慶明|現代的なMANLEYの音が詰まっている

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 ステレオ真空管リミッター/コンプのMANLEY ELOPが好きなのですが、その技術がCoreのコンプ部に採用されているという点が気に入りました。コンプ部は、マイクプリの前段にあるという独特の構造で、大きな信号入力があってもひずまない設計です。真空管の音は、“パリッ”としているというより、どちらかというと滑らかな質感だと言えます。

 

 Coreで一番印象的だったのはリミッター部。ブリックウォール・タイプのリミッターで、“ピタリ”と奇麗に音を止めてくれます。ボーカル録りでは、既にいろいろな処理をすべてし終わったかのようなサウンドを簡単に作ることができて驚きました。この部分一つだけでも“Coreは十分買いだな”と思います。

 

 総合的に見ると、Coreはどの楽器とでも合うと思いますが、中でもアコギのレコーディングとは相性が良いかも知れません。真空管の音色や、コンプの滑らかなつぶれ方がその理由です。またアコギが持つ急なピークには、ブリックウォール・リミッターがきっちり対応してくれるでしょう。現代的なMANLEYの音が詰まった一台です。

製品情報

 

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大西慶明
(写真中央)エンジニア。SONATA CLUB、equalize、TinyVoiceを経て2013年にprime sound studio formへ移籍。近年はAwesome City Club、中島美嘉、Uruなどを手掛ける

Watusi
(同右)COLDFEETのプログラマー/ベーシスト/DJとして、国内のみならず欧米やアジア各国でも多くの作品を発表。中島美嘉、hiro、安室奈美恵、BoAなどの楽曲をプロデュースしている

 

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内田もあ
北海道出身のシンガー・ソングライター。ライブ配信アプリの17LIVE(イチナナ)を中心にファンを増やし続け、2021年8月時点でのフォロワー数は約10万人に昇る

 

【特集】一点豪華主義でいくチャンネル・ストリップ

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