【動画連動】milet×360 Reality Audio〜360 Reality Audioを意識して作るとそこから引き出されるメロディやボーカルも変わると思います

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360 Reality Audioを意識して作ると
そこから引き出されるメロディやボーカルも変わると思います

 2019年のデビュー以来、ハスキーな歌声と歌唱力で爆発的な人気を得たシンガー・ソングライター、milet。今回は昨年リリースされた1stアルバム『eyes』から「Parachute」を360 Reality Audio化することに。miletと、プロデューサーでエンジニアリングも務めたRyosuke "Dr.R" Sakai氏にコメントしてもらった。

 

【Profile】思春期をカナダで過ごし、グローバルなソングライティングと独特な歌声を兼ね備えたシンガー・ソングライター。2019年にメジャー・デビュー。2020年6月に1stフル・アルバム『eyes』、12月にミニ・アルバム『Who I Am』を発表。4月29日に最新配信シングル「checkmate」がリリース予定

 

もともと考えていたよりも「Parachute」に

 Sakai氏による「Parachute」360 Reality Audioミックスをスタジオで聴いたmilet。まず音場の広さに驚きを示した。


 「この曲って、こんなポテンシャルを持っていたんだということに気付かされて、すごくうれしかったです。パラシュートのように上から下に落ちていくようなイメージで作った曲でしたが、360 Reality Audioで聴くと空の奥行きが見えるような感じがして。もともと考えていたよりも、より「Parachute」になっていました。音がもともと持っていた意思みたいなものが感じられる……そんな世界に連れて行かれたような気がして。音を楽しむってこういうことなんだなと実感できました」


 そんなmilet、普段の制作はスピーカー、リスニングは密閉感のあるヘッドホンを好んでいるという。この「Parachute」を個人最適化した音源でヘッドホンでも聴いてもらった。


 「音の配置がスピーカーで聴いたときと同じところにあって、作り上げたい世界は同じなんだなと分かりました。これが自分の持っているヘッドホンで聴けるなら、こんなにすごいことはないと思います。360 Reality Audioを意識して作ったら、あの位置で鳴らしたいというものも出てくるので、そこからインスピレーションが湧いてきます。例えば、下で鳴っている印象のベースを上に持ってきたらどういう印象になるんだろうとか。曲の世界感も変わってくるでしょうし、それによって引き出されるボーカルとかも、メロディとかも変わってくると思うので、すごくやってみたいですね」


 miletには、自身の楽曲以外に、ある海外アーティストのライブを360 Reality Audio化した音源も試聴してもらった。


 「360°で音が行ったり来たりしなくても、その位置でずっと鳴り続けているだけで、空気感や会場の大きな広がりが伝わってきました。たまらなかったですね……ずっと聴いていたいなと思って。どんどん前のめりになっていきます。自分のライブが360 Reality Audioでどうなるかも楽しみですし、実現できたら最高だなと思いますね。もう、永久保存。ライブ会場よりもライブしている気がしました。知った以上、今作っているデモとかも、完成したら360 Reality Audioで聴いてみたいと思います。360 Reality Audioを前提とした曲も作りたいなと考えちゃいますね」

 

インタビュー・ムービーはこちらから

 

体験度や感動が上がり音の存在感が増す

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【Ryosuke "Dr.R" Sakai Profile】miletのほか、ちゃんみな、AK-69、Poppy、Ms.OOJA、などの作品に携わる音楽プロデューサー。米インタースコープとマネージメント契約を結び、国外でも活躍。Dr.Ryo 名義でのソロ作「Late Night Flex feat. Bipolar Sunshine」もこの1月にリリース。MNNFレコーズ主宰

 

 miletと同様、ライブ音源の360 Reality Audioミックスに感銘を受けたというSakai氏。


 「最初はギミック的に音を動かしていく方が面白いのかなと思っていたんですが、考えを改めました。今回は、できる限り広いサウンド・キャンバス……360°の球体の中に、どう存在感強くmiletの歌を置けるか。そこを念頭に置きました」


 聞けば、「Parachute」のステレオ・ミックスの楽器パートは、たったの8trしかないという。


 「ステレオだと音を置く位置はほぼ決まっていて、リバーブの送り量で聴かせ方を変えていくのが基本。360 Reality Audioの場合もほぼ同じです。ただ、ステレオより広く配置できるので、miletのボーカルに対してかなり多めにリバーブをかけてもうまいことなじむ。その方が空間の広さも表現できるので、あまり悩まずに、すんなりとできました。リバーブは上下/左右/前後に専用のものをそれぞれ作り、どれだけ空間を広げるかというアプローチをしました」

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「Parachute」の360 Reality Audio Creative Suite画面。左に、左側から見た図、右に上から見た図を配置している。リバーブ類は後ろ、追加したハイハットは後方の上など、空間を意識した配置に。イントロから鳴るベルはぐるっと水平回転している

 空間に余裕ができた分、このリバーブに加えて楽器パートも追加したため、最終的には計65trに。特に印象的なのはパラシュートのように天から降り注ぐシンセ・ストリングスだ。


 「上下の動きを再現したくて今回「Parachute」を選んだのですが、そこがすごく難しくて。上下の動きだけだと知覚しづらいので、前後の動きと組み合わせて、全体で動かしながら壮大な感じを作っていきました。そこが一番のキモだったと思います。そうした動きをAVID Pro Toolsのオートメーションとして描けるのは助かりました」


 今回のミックスを通じて、360 Reality Audioに手応えを得たとSakai氏は語る。


 「オブジェクトをオートメーションで動かすのも面白いですが、ライブのようなオーソドックスな形でも、体験度や感動が上がります。アーティストや一個一個の音の存在感が一層増した音楽が、きっと作りやすくなると思います」

 

インタビュー・ムービーはこちらから

360 Reality Audio公式情報

 

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