Yamaha RUio16-D × niko and ... ONLINE LIVE 〜配信ライブ現場での活用術

Yamaha RUio16-D × niko and ... 配信ライブ現場での活用術をレポート!

Yamahaの“Rシリーズ”で最もコンパクトなRUio16-Dは、Dante/USB/アナログでの音声入出力が可能で、2chアナログ入力にはゲインとファンタム電源付きマイクプリも搭載する多機能I/Oラックだ。その上、Yamaha製およびSteinberg製プラグイン・エフェクトを33種類同梱したプラグイン・ホスト・ソフトウェアVST Rack Proが付属。そのバーサタイルな仕様から用途は多岐にわたるが、本稿では2023年2月26日に開催された『niko and ... ONLINE LIVE』の第12回、ソウルフルな歌声が魅力のシンガー・ソングライター、baneの配信ライブでの活用法をご紹介しよう。

Photo:Hiroki Obara

オケや最終アウトのマスタリング的な処理とイアモニ用ヘッドフォン・アンプに利用

シンガー・ソングライターのbane(左)とDJ AKITO(右)

シンガー・ソングライターのbane(左)とDJ AKITO(右)

 本イベントの会場は、東京・原宿にあるアパレル・ショップ、niko and ... TOKYO。閉店後に店舗の一角をステージとして利用している。この企画の初回時から音響を手がけているのが、PAカンパニーのアーティカルに所属するエンジニア、福井清一氏だ。同社はライブ、配信、設備などのオーディオ関連事業を手がけており、RUio16-Dは、Danteとアナログの変換が行えることやVSTプラグインを利用できる点に魅力を感じて、発売初期にいち早く導入したという。今回の配信ライブでは2台のRUio16-Dをそれぞれ異なる役割で利用している。福井氏にご説明いただこう。

配信の音響を担当したアーティカルの福井清一氏

配信の音響を担当したアーティカルの福井清一氏

 「入力ソースは、baneさんのボーカル・マイク1chと、DJ AKITOさんのDJセットから送られてくるバック・トラックの2chで、それらをYamahaのデジタル・ミキサーQL1でミックスして映像チーム側の配信システムへ送出しています。このQL1はDante(イーサネット・ケーブル)経由でYamahaのL2スイッチ、SWP1-16MMFと接続し、そこからやはりDanteで2台のRUio16-Dと、バックアップ録音用のDAWを立ち上げたコンピューターに接続しています。1台のRUio16-DはコンピューターにUSB接続してVST Rack Proを立ち上げ、DJのチャンネルと配信用ステレオ・アウトにプラグイン・エフェクトをインサートしました。またもう1台のRUio16-Dには、baneさんのイアフォンを接続し、モニター回線を送ってヘッドフォン・アンプ代わりに使用しています」

配信ライブの音響システム。左にデジタル・ミキサーのYamaha QL1を設置。右上段のノート・パソコンでYamaha VST Rack Proを使用。下段は録音用のDAW。その右がVST Rack Pro用のYamaha RUio16-D。これらの下のラックに見えるのがL2スイッチのYamaha SWP1-16MMF

配信ライブの音響システム。左にデジタル・ミキサーのYamaha QL1を設置。右上段のノート・パソコンでYamaha VST Rack Proを使用。下段は録音用のDAW。その右がVST Rack Pro用のYamaha RUio16-D。これらの下のラックに見えるのがL2スイッチのYamaha SWP1-16MMF

今回のシステム図。Danteによりシンプルに音声がまとめられている

今回のシステム図。Danteによりシンプルに音声がまとめられている

 では、VST Rack Proはどのように使っているのだろうか。

 「DJのチャンネルでは、コンプレッサーのYamaha Compressor 276で軽く音量を整え、テープ・シミュレーターのVintage Open Deckでアナログ的な質感を加えてラインっぽさを抑え、ボーカルとなじませています。また配信用ステレオ・アウトではマルチバンド・コンプのSteinberg MultibandCompressorで整え、Maximizerで音圧を稼ぎました」

 基本的なEQやボーカルのリバーブはQL1で処理しているそうだが、加えてVST Rack Proを利用することにした理由を尋ねてみたところ、「エフェクトの選択肢を手軽に増やすことができるから」という答えが返ってきた。

 「コンピューターとRUio16-Dがあって、ミキサーがDante接続できれば、手軽にSeinbergのプラグイン・エフェクトが使える。これは大きな魅力です。PAでSteinberg製はあまり見かけないので新鮮で楽しさもあります。今回は使っていませんが、Yamaha Dynamic EQもよく使っているんです」

今回使用されたVST Rack Pro。立ち上がっているのはSteinberg MultibandCompressor。Maximizerとともに配信用のステレオ・アウトにインサートされた。またDJのチャンネルではYamaha Compressor 276とVintage Open Deckを使用

今回使用されたVST Rack Pro。立ち上がっているのはSteinberg MultibandCompressor。Maximizerとともに配信用のステレオ・アウトにインサートされた。またDJのチャンネルではYamaha Compressor 276とVintage Open Deckを使用

 次に、RUio16-Dのモニター用途での使い方について尋ねてみると「イーサネット・ケーブル1本で接続できるので、アナログ・ケーブルのようにノイズの心配がありません。ヘッドフォン・アンプの音質もクリアで素直です」と福井氏。ちなみにアーティカルでは、ライブのリハーサルでもイアモニ用ヘッドフォン・アンプとしてRUio16-Dを使用しているそうだ。最後に、今後のRUio16-Dの利用法についてを伺ってみたところ、「手軽なI/Oボックスとして使っていきたいですね」とのこと。

 「アナログ・ケーブルではノイズが心配ですが、RUio16-DならDante接続で簡単に設置できて便利だと思います。とにかくRUio16-Dは多機能なのに、何をするにしても大げさではないところがいいですね。インプットを増やしたモデルが欲しい気はするものの、サイズが大きくなると手軽ではなくなってしまうので、今のサイズがベストでしょう」

ステージ後方に設置されたイアモニ用のRUio16-D

ステージ後方に設置されたイアモニ用のRUio16-D

 なお、今回ご紹介した配信ライブは、niko and ...のYouTubeチャンネル“ニコアンドCh.”にアップされている。ぜひそのサウンドをあなたの耳で確かめてほしい。

 

製品情報

Yamaha RUio16-D
価格:オープン・プライス(※数量限定特別価格:105,000円前後)

SPECIFICATIONS
●サンプリング・レート:44.1/48/88.2/96kHz ●アナログ入出力(XLR): 2イン(マイク/ライン、+48Vファンタム電源、-25dB PAD)/2アウト、ヘッドフォン(ステレオ・フォーン) ●Dante入出力(イーサコン):16イン/16アウト ●USB(USB Type-C):18イン/16アウト ●外形寸法:180(W)×42(H)×121(D)mm ●重量:1.0kg

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