レコーディング仕様のマイク・スタンド、TAMA Iron Works Studio Series

TAMAのマイク・スタンドIron Works Studio Seriesは何故レコーディングにうってつけなのか?

TAMAはドラム・ブランドとして名高いが、マイク・スタンドも手掛けており、Iron Works StudioやIron Works Tour、Standardといったシリーズを展開している。本企画では、ドラム用スタンドの技術を応用し、録音の現場に向けたIron Works Studio Seriesにフォーカス。仕様面の特徴を整理した上で、エンジニア原真人氏とシンガー・ソングライターのシンリズムがホーム・レコーディングに試したレポートをお届けする。

Photo:Hiroki Obara(*を除く)

なぜレコーディングにうってつけか?

Iron Works Studio Series

左から:
MS737BK(22,550円)
高さ:96.5~ 166.5cm ブーム・アーム長:105.5cm 重量:5.75kg

MS736RBK(20,350円)
高さ:99~170cm ブーム・アーム長:55~85cm 重量:8.2kg

MS736BK(20,350円)
高さ:97.5~165cm ブーム・アーム長:50.5~85cm 重量:5.4kg

MS736LBK(20,350円)
高さ:44~60.5cm ブーム・アーム長:50.5~85cm 重量:4.7kg

MS734ELBK(20,350円)
高さ:32.5cm ブーム・アーム長:33.5~52cm 重量:4kg

Point① ブーム・アームが“しならない”

ブーム・アームが“しならない”

 ブーム・アームは2段式となっており、マイクを取り付ける方(写真内の右側)には中空ではない鉄製ロッドを使用。重いマイクでもしならず、振動にも強いという。マイク・ホルダー装着部はロック・ナットを採用し、マイク・ポジションの固定に効果的。ブーム・アームの後端にあるのは、取り外し可能なカウンター・ウェイトだ。

Point② 角度を強力に固定できる

角度を強力に固定できる

 ブーム・アームの角度調整部には、6枚の金属板を使用。摩擦力を高め、強く固定するための構造だ。ゴム製の摩擦板とは違い、使用による摩耗、気温からくる締まり具合の変化などが無いのも特徴。角度調整に使うTハンドルは、どの位置で締めつけた際にもノイズが発生しづらい構造となっている。

Point③ 低重心&安定の三脚

低重心&安定の三脚

 三脚には鉄製ロッドを使い、低重心化を図ることで安定性を向上させている。垂直パイプを固定するロック部には、マイク・ケーブルが誤って引っ掛からないように丸い形状のノブを採用。

Point④ 振動対策のフローティング設計

振動対策のフローティング設計

 三脚先端部の脚ゴムには、TAMAオリジナルのフローティング・デザインを採用。設置面からの振動を伝えにくくする効果がある。

Point⑤ 安定性と省スペースを両立

安定性と省スペースを両立

 MS736RBKには、約5kgの鋳物ベースを採用。低重心化で安定性を高めつつ、直径約30cmというコンパクトさを実現し一般的な三脚マイク・スタンドの約半分のスペースで設置できるという。

原真人&シンリズムが宅録で試す!

原真人&シンリズムがTAMA Iron Works Studio Seriesをホーム・レコーディングでチェック!

 Iron Works Studio Seriesは、自宅録音にどのような恩恵をもたらすのか? スタンダードなマイク・スタンドとしてMS736BK、ローポジション用のMS736LBKをエンジニアの原真人氏(写真左)とシンガー・ソングライターのシンリズム(同右)がチェック。製品試用の場はシンリズムのホーム・スタジオで、歌やアコギ、ギター・アンプなどの録音に使ってもらった。

軽い力で強力に固定できる

エンジニア 原真人

原さんは製品の試用中、しきりに“よく考えられたマイク・スタンドです”と、おっしゃっていましたね。

 はい。まずはMS736BKの三脚とブーム・アームの長さが、自宅録音に向いているなと。三脚は少し短く作られていて省スペースですし、何台か並べて設置してもぶつかりにくいと思います。取り回しの良さと安定性を両立していて、日本の住環境まで考慮した設計という印象です。ブーム・アームについては、1本の長いパイプを使ったマイク・スタンドもありますが、特に自宅だと、設置の仕方によってはアームの末端がどこかにぶつかってしまいやすい。でもMS736BKは2段階式なので、ブーム・アームを程良い長さに調整しつつセッティングできるんです。

三脚の設計とブーム・アームの“2段構造”は、MS736LBKにも共通しています。

シンリズム そのMS736LBKを試していて実感したのは、重いマイクでも垂れ下がってこないということ。一度セットしたら、本当にガチッと固定されるんです。特に、金属板を使用した角度調整部が優秀で、軽い力でTハンドル(ブーム・アームの角度を調整するためのハンドル)を締めてもしっかりと固定してくれる 。例えば、家で自らアコギを録る場合は楽器を抱えたままマイク・スタンドを調整するので、マイクの位置が下がってくると無理な姿勢で直すことになってストレスなんです。その点、MS736LBKならセッティングが一発で決まって動かないので、演奏や録音そのものに集中できますね。

 両モデルとも、Tハンドルをはじめ“締める部分”が優れています。マイク・ホルダーを取り付けるネジ部にしても、指で押して使えるロック・ナットがあって強力に固定されるから、マイクを下振りにしてタムを録るような場合に、ホルダーがくるっと回ってしまうことがないでしょう。あと、三脚部のネジ止めノブが薄い金属ではなく丸い樹脂製で、締めるときに指が痛くならないのもうれしい仕様です。

シャープな録り音が得られる

シンガー・ソングライター シンリズム

三脚部の特徴としては、設置面からの振動を低減する“フローティング・デザイン”も挙げられます。

 宅録音においては楽器用アンプやパーカッション、スタジオではドラムのトップやキックの録音にも効果的だと思います。振動は、床にカーペットを敷いてもマイクに伝わるし、特にパーカッションは一つ一つの音が短いので、防振が甘いと焦点がブレたように聴こえることもあるんです。

シンリズム ギター・アンプを録ったときに、いつも使っているスタンドとMS736LBKを比べてみたら、MS736LBKを立てて録った音の方が幾分かシャープに聴こえました。

 振動が低減されることでスタンドが震えず、マイクの性能が発揮されたからだと思います。あと、MS736LBKはパイプが結構な高さまで伸びるため、身長160cm台の方なら立った状態での歌録りにも使えるかもしれません。MS736LBKもMS736BKも、さまざまなソースに使えて安定感も抜群なので、自宅録音向けにまずは1台購入しておけば、長く使用できるのではないかと思いますね。

原真人
フリーランスのエンジニア。大森靖子、細野晴臣、古川麦のほか、最近は原 摩利彦『流浪の月』(OST)、松木美定 feat. 浦上想起『舞台の上で』、パジャマで海なんかいかない『Trip』などを手掛ける

シンリズム
シンガー・ソングライター。最新作は「LADY」を含む7インチ・バイナル。藤井隆や中島愛への楽曲提供、流線形/一十三十一の管弦編曲、秦基博のツアー・サポート(g、k)なども務める

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