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NEUMANN M 49 V 〜よみがえった伝説の真空管マイクロフォン

NEUMANN M 49 V 〜よみがえった伝説の真空管マイクロフォン

NEUMANN M 49は、1951年から20年にわたり製造された同社を代表する真空管マイクの一つ。“シルキー”と称されるそのサウンドは、歌や弦/管楽器、ピアノなど幅広いソースに対応する懐の深さで愛された。また電源ユニットからのリモート操作で、無〜単一〜双指向までの連続可変を実現した点も大きな特徴だ。そのM 49が2022年、M 49 Vとして復刻された。多くの改良が施されたM 49の最終版であるM 49 cと同回路を採用し、1950年代後期モデルと同様のK49カプセルを搭載することで往年のサウンドを再現したという。本稿では、いち早くM 49 Vを試用したビクタースタジオのエンジニア、安田博城氏、渡辺佳志氏、八反田亮太氏によるインプレッションをお届けする。同スタジオはM 49を多数保有することで知られ日常的に使用しているとのこと。そんな環境の方々の耳にM 49 Vの音はどう響いたのだろうか。

協力:ビクタースタジオ 撮影:小原啓樹

優しく繊細、温かくリッチなサウンド

お話を伺ったビクタースタジオのエンジニア、左から渡辺佳志氏、安田博城氏、八反田亮太氏

お話を伺ったビクタースタジオのエンジニア、左から渡辺佳志氏、安田博城氏、八反田亮太氏

 ビクタースタジオでは、1957年登場の改良版M 49 bと最終形であるM 49 cの2種を所有している。両者にもサウンドの違いはあるそうだが、共通する印象について伺ってみたところ、渡辺氏から「丸くて太い」という答えが返ってきた。

 「ゲインが低いので、マイクでひずむということがなく、いろんな楽器を録りやすいです。僕が特に使うのはブラスで、アコギを柔らかく録りたいときにも、すごくいいですね」

 安田氏もこの意見に賛同する。

 「僕もペンシル型のマイクと組み合わせてアコギによく使います。トロンボーンやトランペット、弦のアンビエンスやピアノ、あとは歌にもいいですね」

 続けて、八反田氏は「やはりブラスに使いますし、ピアノ録りでは必ず使います」とのこと。

 「ピアノの低域から中域をバランスよく収音できて、高域は柔らかい音で録れるんです。ドラムのアンビエンスにもいいですね。ドラム全体を広く大きく録れます」

 さらに渡辺氏によれば「ミックスでも扱いやすい」という。

 「近年の超低域まで録れるようなマイクは処理が難しいんですけど、M 49は低域が自然に減衰していて、高域もEQで持ち上げれば出てくるのでミックスしやすいです」

 M 49の特徴をほかのNEUMANNマイクとの比較で表現するとすれば、安田氏のこの言葉がわかりやすいだろう。

 「U 67がパンチの効いた派手な音であるのに対し、M 49は優しく繊細で温かい。リッチで彫りが深い音です」

左がビクタースタジオ所有のM 49、右が復刻されたM 49 V。独特の形状は踏襲しつつも、現代のネットワーク事情を踏まえた耐RFコネクターを採用し、ヨーク・マウントには着脱用の金具とケーブルの個体伝搬ノイズを軽減するケーブル・ホルダーが用意されている

左がビクタースタジオ所有のM 49、右が復刻されたM 49 V。独特の形状は踏襲しつつも、現代のネットワーク事情を踏まえた耐RFコネクターを採用し、ヨーク・マウントには着脱用の金具とケーブルの個体伝搬ノイズを軽減するケーブル・ホルダーが用意されている

左がM 49、右がM 49 Vの内部。構造的にも両者はほぼ同じだ。真空管はさらに内側にセットされているため、この状態では見ることができない

左がM 49、右がM 49 Vの内部。構造的にも両者はほぼ同じだ。真空管はさらに内側にセットされているため、この状態では見ることができない

M 49 Vの電源ユニット、NM V。指向性は前面左上のつまみで設定する。M 49にも利用可能だ

M 49 Vの電源ユニット、NM V。指向性は前面左上のつまみで設定する。M 49にも利用可能だ

3種の電源ユニット。左端はNM V、中央はM 49用、右端はケーブルを着脱しやすいようにビクタースタジオが改造したもの

3種の電源ユニット。左端はNM V、中央はM 49用、右端はケーブルを着脱しやすいようにビクタースタジオが改造したもの

ステレオ・ペアで広がる使用用途

 では、いよいよM 49 Vについて伺っていこう。まず渡辺氏によれば「M 49 bとM 49 cで比較してみたのですが、音の傾向はやはりM 49 cに近いと思います」とのこと。

 「ピアノやアコギで聴いてみたのですが、M 49 cだと経年劣化のせいか1〜2kHz辺りが少しにじんで聴こえます。しかし、M 49 Vは同帯域がクリアでフォーカスが合っている音でした」

 八反田氏も同様に感じたそうだ。

 「自分の声でチェックしたところ、M 49だとモニター音が少しモヤっとして聴き取りづらかったのですが、M 49 Vはモニターしやすかったので、恐らく歌いやすいと思います」

 さらに、渡辺氏はステレオでの使用に期待を寄せる。

 「今回お借りしたのは1本だけだったので試せませんでしたが、ステレオでピアノやオフマイクに使ってみたいです。ビンテージだと個体差があるので、ペアにできる個体はどうしても数が限られてしまうんですよね」

 安田氏も「2本あるとさらに魅力が増しそう」と語る。

 「合唱のディテールもすごくきれいに録れそうです。ストリングスのオフマイクとしてデッカ・ツリーで使うのもよさそうですし、ドラムのトップに立てるならビンテージより、M 49 Vのほうがクリアで良い音になると思います」

 八反田氏に至っては「本数をたくさん使えたら、どのマイクよりも魅力的かも」という発言も飛び出した。これはストリングスやブラスなどのレコーディングで多くの本数を同時使用する際に、個体差やコンディションに悩まされてきた経験からくるものだそう。

 おもいがけず、“ステレオ”“本数”というキーワードで取材現場は盛り上がったが、歌や生楽器、それにオンからオフまで多用途で活躍するM 49 Vは、1本あるだけでも重宝するマイクと言えるだろう。機会があれば、現代によみがえった伝説の音をぜひご自身の耳で確かめていただきたい。

 

SPECIFICATIONS
●周波数特性:40Hz〜16kHz ●指向性:連続可変(無〜単一〜双) ●感度(@1kHz into 1kΩ):6.5/8/10mV/Pa ±1dB −43.5/−42/−40dBV ●最大SPL(THD 0.5%):125dB(単一) ●S/N(A-weighted、94dB SPL):73/74/75dB ●重量:800g(本体) ●外形寸法:80(φ)×163(H)mm

製品情報

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