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エンジニア青野光政に聞くMotorcity Equalizerの独自性とパート別セッティング

エンジニア青野光政に聞くMotorcity Equalizerの独自性とパート別セッティング

井上陽水、中島みゆき、Kinki Kidsなど、これまで数多くのアーティストの作品において、エンジニアとして携わってきた青野光政氏。ビンテージ機材への造詣が深い青野氏だが、昨年発表されたばかりのMotorcity Equalizerのユーザーでもある。その印象を語ってもらった。

Photo:Hiroki Obara 撮影協力:スタジオトライブ

1980年代に触れたMotown EQと同じ印象

 まずは青野氏にMotorcity Equalizerを入手したきっかけを聞いた。なんと青野氏は、元となったMotown EQの実物を使ったことがあるそうだ。

 「1980年代の初めにLAで使っています。ほかのEQとは違うなと思ったのを覚えていますね。そういった印象もあったのでMotorcity Equalizerを入手してみたところ、こんな感じだったなと。開けて中を見てみたら、パーツを1つずつしっかり作ってあるし重さもある。よくできていますね」

 では、その音の特徴とは何なのかを伺った。

 「例えば歌だと、鼻をつまんだようなと言うか……オールドな雰囲気を出すことができるんです。それをプラグインで同じことをやろうとすると、本当に古臭くなってしまうけれども、Motorcity Equalizerだと、音楽的な音として奇麗になるんです。レンジが広くて、ひずみもうまく出てくれます」

 グラフィックEQとして7バンドに分かれているが、それぞれの周波数帯域に特徴はあるのだろうか。

 「どれも効きますが、よく効くのは320Hz〜5kHzですね。320Hz付近は、歌うときに胸の辺りが響いて出ている音。2kHzは、持ち上げると歌をグッと押し出す。800Hzも鍵ですね。あとは、マスター・ゲインの上げ下げによってEQで起きたサチュレーションを調整できるので、コンプと組み合わせて質感を調節することもできます」

かなり音を変化させてもうまくなじんでくれる

 青野氏はこれまでビンテージ機材を数々所有していたが、最近は新しく発売される機材を導入しているそうだ。

 「近年ビンテージ・リイシューの良い機材も安く出ているので、壊れるかもと心配しなくて済むし安定していますから。HERITAGE AUDIOの製品は、この価格でよくできているなという部分まで作ってありますね。モニター・コントローラーのBaby RAMなんかも良いものですし、入門機から高価格帯まで種類がある。コンピューター内で制作を完結している人が、もうワンランク上の音にしたい、研究したいと思うなら手に取りやすいブランドではないでしょうか」

 Motorcity Equalizerは、現在のDAWが主流の制作環境にもマッチすると青野氏は語る。

 「DAW内でミックスするときでも、うまくなじむんです。ハイエンドをガッと上げてもひずみっぽくならないし、EQを結構かけて音が変わってもなじむ。それはやはり、音楽的な倍音で構成された、おいしい帯域がセレクトされているからだと思います。きっと当時のモータウンで、EQが無い中での現場の“こういうものが欲しい”という声が反映されているのかなと。今の音楽でも全く問題無く使えますよ」

 音楽をより良いものに、という強い思いで作られた機材は、時代を超えても力を持ち続ける。Motorcity Equalizerは、その思いと力を受け継いだ機材なのだろう。

 「Motorcity Equalizerと同じような音がするEQは、知っている限り無いですね。ちゃんと当時の音が再現されているし、現行のEQやプラグインには無い独特な音で、そういう意味ではちょっと特殊。でもそれが楽しいんです(笑)。すごく必要な機材だし、ずっと活躍してくれるでしょう」

青野光政
【Profile】イデア・サウンド主宰のレコーディング・エンジニア。1970年代からキャリアをスタートさせ、アイドルからジャズ、クラシックまでジャンルを問わず幅広い作品を手掛けている

青野光政が実践! パート別Motorcity Equalizerセッティング

 ボーカル 

5kHzでエアー感を演出。例では男性を見越していて800Hzをカットしているが、女性の場合は2kHzをカットすることもあるそう

 5kHzでエアー感を演出。例では男性を見越していて800Hzをカットしているが、女性の場合は2kHzをカットすることもあるそう。

 アコースティック・ギター 

130Hzを大きく持ち上げることで、アコギの低音が持つグルーブ感を出す。その分320Hzを切ることで、低域の膨張を防いでいる

 130Hzを大きく持ち上げることで、アコギの低音が持つグルーブ感を出す。その分320Hzを切ることで、低域の膨張を防いでいる。

 ベース 

800Hzがベースの鍵となる帯域のためブースト。その分320Hzをカットしているが、おいしい帯域でもあり切り過ぎはNG

 800Hzがベースの鍵となる帯域のためブースト。その分320Hzをカットしているが、おいしい帯域でもあり切り過ぎはNG。

 キック 

50Hzを大きく持ち上げ、130Hzを少しカット。どの帯域でもそうだが、持ち上げた分ほかをカットすれば、より前面に出すことができる

 50Hzを大きく持ち上げ、130Hzを少しカット。どの帯域でもそうだが、持ち上げた分ほかをカットすれば、より前面に出すことができる。


 国内でも愛用するエンジニア/クリエイターが増え続けている気鋭ブランド、HERITAGE AUDIOの近年のラインナップを紹介。

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