2011年にエンジニア/プロデューサーのピーター・ロドリゲス氏が設立したスペインの音響機器ブランド、HERITAGE AUDIO。社員数は少数ながら、生産から物流まで厳格に管理することでクオリティを保ち、現在では世界40カ国以上に製品が届けられている。名機をモデルとしたEliteシリーズなど、国内でも愛用するエンジニア/クリエイターは増え続けている。ここではHERITAGE AUDIOの近年のラインナップ紹介とともに、1960年代からモータウンのスタジオで使われていたというMotown EQをモデルとしたパッシブEQユニット、Motorcity Equalizerにスポットを当てていこう。
Photo:Hiroki Obara 撮影協力:スタジオトライブ
Baby RAM|パッシブ・モニター・コントローラー
電源不要のパッシブ式モニター・コントローラー。ステレオ2系統のアナログ入出力(TRSフォーン)を備え、トップ・パネルのスイッチで入出力系統を切り替えられる。中央のマスター・レベル・ノブは24ステップのロータリー式。そのほか、モノラル/ミュート/DIMスイッチも装備する。デスクトップの邪魔をしないサイズ感も魅力となっている。
RAM System 2000|モニター・コントローラー
ステレオ3系統のアナログ入出力(TRSフォーン)のほか、ヘッドフォン出力×2(ステレオ・フォーン)、サブウーファー出力(TRSフォーン)などに加え、デジタル入力のS/P DIF(コアキシャル)とBluetooth接続にも対応。プリセットとしてレベル設定を2つまで保存できるなど、可能な限りユーザーのニーズを満たしたモニター・コントローラーだ。
HA-609A|2chコンプレッサー/リミッター
名機をモデリングした“Eliteシリーズ”のアウトボードで、デュアル・モノ/ステレオとして使用できる2chのコンプ/リミッター。クラスA設計で、各チャンネルに3つのCARNHILL製トランスを搭載する。コンプ/リミッター両方に高速のアタックに切り替えるFASTスイッチも実装。各パートからミックス・バスまで幅広い用途に適応する。
73JR II|マイク・プリアンプ
ブリティッシュ・スタイルを謳う500シリーズのマイク・プリアンプ。CARNHILL製トランスを採用する。ハイパス・フィルターは、オール・ディスクリート仕様のクラスA設計で20〜220Hzまでの可変式。DI入力端子も備え、エレキギター/ベースの入力にも対応している。
73EQ JR|3バンドEQ
500シリーズ用の3バンドEQモジュール。Baxandallタイプの低域&高域EQを採用しており、高域は10/12/16/20kHzの4つの帯域から選択できる。73JR II共に、本体に+24Vのスロー・ターン・オン・レギュレーション方式を採用し、電源にも配慮。高いSN比を実現する。
OST-4 v2.0|500シリーズ用電源ラック
最大4基のモジュールをセッティング可能な500シリーズ用電源ラック。各スロットに個別の電源を用意しており、負荷の大きなモジュールを使った場合でもほかのモジュールに影響を与えない設計だ。v2.0から備わったリンク機能は、隣接する次のスロットとのリンクをボタン操作のみで実現する。
OST-6 v2.0|500シリーズ用電源ラック
6基までのモジュールを使用できる500シリーズ用電源ラック。OST-4 v2.0同様、独自のOn Slot Technologyを採用し、各スロットに独立して安定化した電源を供給可能となっている。なお、10スロットを備え電源スイッチをフロント・パネルに搭載したOST-10 v2.0も近日発売予定。
Motorcity Equalizer|パッシブEQ
1960年代に音楽業界を席巻したレーベル、モータウンのスタジオで使われていたイコライザーのMotown EQをモデルとして開発された。本体前面には、50Hz〜12.5kHzまでの7バンドを、±8dBのゲイン幅で調節可能なステップ式ロータリー・スイッチがスタンバイ。右側に電源のオン/オフを切り替えるトグル・スイッチ(IN/OUT/OFF)、±8dBのゲイン幅を有するマスター・ゲインを実装する。背面にはXLR入出力端子を装備。HERITAGE AUDIOとBLACK LION AUDIOが共同開発し、当時使われていたコンデンサーとインダクターが、カスタム・メイドで再現されている。
マイケル・ブラウアー氏が語るMotorcity Equalizer開発のきっかけ
Motorcity Equalizerは、私が4〜5年をかけて探し出した2台のMotown EQが元になっています。入手したのは確か1980年代半ばから後半辺りでしょうか。Motown EQのサウンドは、温かみがあり、豊かで、パンチのあるとても素晴らしいものです。
2020年に、2台をBLACK LION AUDIOへ修理に出したのですが、そのときに同社のCEOであるジョン・ヘイバーがMotown EQのサウンドを絶賛したのです。私が「ほかでは無いものだよ」と答えると、「この音をオープンにして、みんなに聴かせることができたら最高じゃないか」と彼は言っていましたね。ただ、中には現在だと入手不可能なパーツもあります。彼らはそれを一から設計していったのです。
完成したMotorcity Equalizerに初めて触れた際に、Motown EQと同じように使ってみました。キックを鳴らして、320Hzと800Hzを下げて、50Hzと130Hzを上げる。すると、私が記憶している通りの音になったのです。
Motorcity Equalizerは美しいユニットです。手にした人は皆さん幸せになれると思いますよ。
続いては、Motorcity Equalizerのユーザーでもあるエンジニアの青野光政氏に、氏が実践するパート別のお薦めセッティングを紹介していただこう。