ウィーン拠点のブランド、AUSTRIAN AUDIO。そのコンデンサー・マイクOC818はカプセルと出力を２つずつ備え、専用プラグインのPolarDesignerで録音後に指向性を調整できる一本だ。単一指向性の機種、OC18とともにシンガー・ソングライターのa子へ渡してみたところ、彼女がけん引するクリエイティブ・チーム＝londogの中村英士（k）と白川詢（g）も製品試用に参加してくれた。マンションの一室にあるlondogの制作場で３人に語り合ってもらおう。
Photo：Hiroki Obara Hair & Make：Natsuko Ogita（UpperCrust） Styling：Yuki Yoshida
力強い歌にOC18、ウィスパー感が強い歌にはOC818 そういう使い分けができればベストだと思います
【Biography】ウィスパー・ボイスを軸に、陰影に富む表現を展開するシンガー・ソングライター。君島大空やVaundyにも評価され、クリエイティブ・チームlondogを率いて曲作りからMV制作までこなす
ウィスパーらしさをとどめつつ声を前に出すOC18
a子 OC18は、いつも歌録りに使っているコンデンサー・マイクより、すっきりと聴こえる感じがすごく良いと思います。自分の曲はボーカルが奥に行ってしまいがちで、それが悩みなんですけど、OC18を使えばウィスパー・ボイスらしさをとどめつつ声が前に出てくれる。OC818の音は、より上品かつ繊細な印象で、“広い感じ”です。その広さにウィスパーの息遣いまできっちりと入ってくるし、声の低域成分がバランス良く収められるのも良いなと。だから“力強い歌にはOC18、ウィスパー感が強い歌にはOC818”みたいな使い分けができればベストですね。ただ、２本まとめて買うには結構な予算が要るから、“どっちか”となればOC818の方が汎用性の面で良いのかもしれません。
中村 OC818は、録音後に指向性をマルチバンドで変えられるのが大きいですね。アコギを録った後、低域の指向性を鋭くしてみたら変な膨らみを除去することができて、EQやコンプで強引に加工しなくてもよかったんです。
白川 録音中にマイキングを変えているような音の変化でしたね。OC818とPolarDesignerがあれば、“せっかく良いテイクが録れたのに、嫌な部屋鳴りが入っているから泣く泣く録り直す”といったことが減りそうです。
a子 この部屋の中にはシャワー・ルームがあるので、録音の仕方によっては不要な響きに悩まされるんですよ。だからこそ“加工していない感じ”で調整できるのが良いなと。
宅録素材を本チャンに高めるOC818
a子 部屋鳴りと言えば、マイクの本体に付いているローカットも役立ちました。ドラムは、ローカットを使う方が気持ち良い音で録れたんだよね？
中村 そう、妙な部屋鳴りをカットできたから。２本のマイクをドラムに立ててみると、OC18の引き締まった音の方が格好良いと思える瞬間もありました。特に、サンプラーで鳴らすためのワンショットを録っていたときです。２つに共通して感じたのは周波数レンジの広さ。そして“その楽器らしい音が録れる”ということです。例えばハイハットは、コンデンサー・マイクをオンで立てると耳に痛くなりがちですが、それが全然無くてナチュラルな音を得られます。OC818であれば、録音後にPolarDesignerで追い込めるので、宅録した素材を本チャンに使いたい場合にも有用でしょうね。
a子 だから、私たち向けのマイクです。もうめっちゃ欲しい！（笑）。みんな、本当に気に入ってしまったから。
