3段階で調節できる
ステレオ・ペアの可動式マイク
まずはPCM-D10を箱から取り出してみた感想ですが、筐体は予想以上に大きく、外形寸法は80.2(W)×197.6(H)×37.4(D)mmとのこと。本体上部に搭載された可動式ステレオ・マイクにはゴールドのパーツが装飾されていて、高級感があります。外観が格好良いため、これだけで購買意欲をかき立てられました。可動式マイクは低域から高域まで非常にフラットな周波数特性を持っており、最高24ビット/192kHzでのハイレゾ録音が可能。また、XY/ステレオ/ワイド・ステレオ・ポジションの3段階で設定でき、さまざまな録音状況に対応することができます。
フロント・パネルの最上部には、L/Rのマイク入力レベルを−20/−12dB/Overで示す3つのランプを装備。ディスプレイ内の上部にはL/Rの入力レベル・メーターが表示され、本体右側にあるダイアルでL/Rのマイク入力レベルを個別に調節することができます。また、フロント・パネルの下半分にはスイッチやボタンが複数配置されていますが、ある程度のレコーダー使用経験がある方なら説明書を読まずとも直感的に操作することが可能でしょう。C1/2ボタンには、よく使用する機能を登録することができるので便利です。
本体底部には2系統の入力端子(XLR/フォーン・コンボ)を搭載し、外部マイクや音楽機材などを接続できます。さらにPCM-D10は、48Vファンタム電源供給が可能なのでコンデンサー・マイクにも対応。フロント・パネルの最下部には、入力切り替えスイッチや接続機器の出力レベルに合わせたマイク/ライン入力切り替えスイッチ、48Vファンタム電源オン/オフ・スイッチが配置されています。
PCM-D10の両サイドも見てみましょう。本体右側にはプラグイン・パワー対応のマイク/ライン入力(ステレオ・ミニ)や入力切り替えスイッチ、マイク入力レベル調整ダイアル、−20dBのマイク・アッテネーター・スイッチ、SDカード(別売り)を挿入するスロット、コンピューターへのファイル転送や外部電源供給の際に使用するUSB Type-C端子を装備。ちなみにPCM-D10は16GBの内蔵メモリーを搭載し、単三電池×4本で駆動するので、電源を入れてすぐに使うことができます。
本体左側には、ライン出力(ステレオ・ミニ)やステレオ・ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力切り替えボタン、ディスプレイのバックライト・オン/オフ・ボタン、そのほか音量や電源スイッチなどが並んでいます。PCM-D10にはモニター・ソースをステレオ/L/Rと別々に切り替えられる機能があるので、あとで聴いたときに“Lchの設定だけおかしかった”というようなトラブルも防ぐことができるでしょう。
SN比が良く解像度の高いサウンド
Bluetooth接続でリモート操作が可能
本体の可動式マイクを使用し、バンドのライブを24ビット/192kHzでエア録音してみたのですが、そのサウンドはデュアルADコンバーターを搭載しているためかSN比が良く、非常にクリアで“素晴らしい”の一言。ドラム/ベース/ギター/ボーカルというバンド編成でしたが、低域から高域まで広いレンジ感で、ライブの空気をまさにそのまま収音できていたように思います。耳障りな高域のジャキジャキ感も全く無く、細かい音量の変化なども忠実に再現されていました。
3段階に調節可能な可動式マイクについては、XYポジションではセンター感が強くなるため、単体楽器を近距離で録音すると存在感のある音をキャプチャーできます。ステレオ・ポジションでは空間や空気感も収音できるので、ライブのエア録音など、オフマイクでの使用が向いているでしょう。ワイド・ステレオ・ボジションでは、マイクを外側に傾けることが可能なため、近距離での録音においてステージ上にある左右の楽器をL/Rに収めたい場合などに有効だと思います。
またPCM-D10にコンデンサー・マイクを接続してアコギを録ってみたところ、タイトで解像度の高いサウンドを得ることができました。低域の量感も十分あり、高域もナチュラルなサウンドです。またPCM-D10はBluetooth接続が可能なので、録音した音源をすぐにBluetooth対応のスピーカーなどで再生/確認することができます。ほかにもiOS/Android対応の無償アプリSONY REC Remoteと連携すれば、スマートフォンからPCM-D10を操作可能。個人的には、モノラル・レコーディングにも対応しているところがうれしかったです。
PCM-D10だけで、ライブやコンサート、ポッドキャストなどのさまざまな録音が手軽に、そして高音質で行えるでしょう。非常にコスト・パフォーマンスが優秀なので、プロ・ミュージシャンやPAエンジニアの方はもとより、一般の方にも使ってみてほしい製品です。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)