
大きなロータリー・エンコーダーを搭載
視認性に富むカラフルなボタン
まずは外観から見ていきます。Faderport Classicと比べると横幅はほぼ変わらず、奥行きが50〜60mm伸びていてちょうどパーム・レストのように手の平を乗せられるスペースがあります。特徴である100mmフェーダーも相変わらず滑らかで細かな調整も可能です。Faderport 8/16のデザインと共通したカラフルで視認性に富むボタンと、ロータリー・エンコーダーを配置。基本的に説明書無しでもすぐに使えると思います。筆者は本誌にてFaderport 8のレビューを執筆したこともあって(それ以外にもたくさん触っているので)今回も説明書無しで全機能をチェックできました。
レイアウトとしては上部にミキサーのチャンネル・ストリップのようにソロ、ミュート、アーム(録音待機)、シフト。その下にプラグインのバイパス・ボタン、オートメーションのタッチ、ライト、リードとよく見慣れたボタンが続きます。そして、中央部にはリニューアルされたFaderportの特徴である“セッション・ナビゲーター”と呼ばれるセクションがあります。8つのナビゲーション・ボタンと大きめのロータリー・エンコーダー、その脇の2つのボタンから構成され、複数の機能を扱えるようになっています。
さらにその下に再生、録音、停止といったトランスポート系がボタンの大きさを変えて、使いやすいように配置。ただ、Faderport Classicと比べて大きく違うのはボタンを押したときの感触です。“カチ”っとした感触は無く、どちらかというと“ポチ”っというソフトな感じ。ここは好みなので慣れれば問題無い点だと思います。
主要なプロトコルに対応
直感的なオートメーション描画も可能
Faderportは主要コントロール・サーフェスのプロトコルに対応しているのでほとんどのDAWで使える仕様になっています。参考までに新しくなったFaderportの呼び名ですが、ファームウェアを管理するアプリケーション、Universal Control上では“FaderPort(2018)”、DAWのコントロール・サーフェス・ドライバー上では“FP2”となっています。
まずはPRESONUSのStudio One(以下、S1)から試してみましょう。Nativeモードとして対応し、純正だけあってボタンに印字されている機能は問題無く使えます。その中でもS1(Version 4でテスト)でしか使えない機能がありました。一つ目は“Link”ボタンです。これは、純正インストゥルメント/エフェクトの動かしたいパラメーターの上にカーソルを持っていくと、ロータリー・エンコーダーによって動かすことができ、面倒なアサインを排除して直感的にオートメーションを描くことなどが可能になります。サード・パーティ・プラグインはマウス・オーバーではなく、パラメーターをクリックすることで同じようにロータリー・エンコーダーでコントロールできます。
個人的に気に入ったのはフェーダー、パン、マスターのロータリー・エンコーダーのプッシュによるゼロ・リセットでしょうか。リセットされると気分が良いです。もう一つは、セッション・ナビゲーター下段の、シフト時の機能。F1〜F4と記載されいるボタンは、S1のControl Link機能から編集することができます。S1のキー・コマンドで扱えるすべての機能がアサイン可能なので、よく使うキー・コマンドをここにカスタマイズしておくのも便利です。

ほかのDAWですが、基本はHUI(Pro Tools)やMCU(APPLE Logic、STEINBERG Cubase、ABLETON Liveなど)にて対応しています。実際にPro Tools 2018、Logic 10.4、Cubase Pro 9.5でチェックしてみました。それぞれのDAWに対応させるにはモード切り替えをする必要があり、電源投入時にNextボタンを押して、その後どのボタンを押すかによってHUIとMCUを切り替えられるようになります。
各種機能の対応ですが、基本的にボタンに表示されている第一階層の機能は問題無く動きます(現ファームウェアで非対応もあり)。本当に説明書を見る必要がないくらい簡単に使うことができるのもFaderport Classic自体の設計コンセプトがいかに先を見据えたものだったかということをあらためて感じました。
マウスのみで作業を行っているユーザーがこの小さなFaderportを導入するだけで作業効率が上がるのは間違いありません。オートメーションなどを描くだけではなく、編集画面のズームやリージョンのナッジ、1小節ごとのトランスポート、これらをすべてマウスでやっている方はぜひ導入を! 次の定番になり得る、機能満載な一台と言えるでしょう。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年12月号より)