
EQとディレイを2種類ずつ内蔵
パラメーターはプリセット保存が可能
705P Poweredの大きさと重量は、152(W)×269(H)×273(D)mmで5.5kgとなっています。予想していたよりも小型で軽量。若干奥行きはありますが、横幅はかなり細い印象です。小規模スタジオや、自宅などの設置スペースの制約を受けずに、好みの位置にセッティングができそうですね。
ツィーターは25mm径で、原音に忠実な再現性を持つ環状ポリマー振動板を採用しています。ウーファーは127mm径で、2つのボイス・コイルで駆動する独自のディファレンシャル・ドライブ方式。高域と低域を各250Wのパワー・アンプで駆動するバイアンプとなっています。前面にあるバスレフ・ポートは開口の両側に丸みを持たせたデザインで、乱流を抑えてノイズを低減するスリップストリーム設計とのこと。705I Passiveから受け継いだフォルム・デザインですね。
接続端子はXLR入力、AES/EBU入力、AES/EBUスルー・アウト。アナログの入力感度は+4dBu と–10dBVから選択可能です。デジタル入力時のサンプリング・レートは最高192kHzまで対応しています。
705P Poweredは32ビット/192kHzの高性能DSPを内蔵していて、背面にあるLCDディスプレイとホイールを操作して、各種設定を行うことができます。

設置する環境による影響を補正する8バンドのROOM EQ、ハイパス/ローパス・フィルターと4バンドEQで最終的な出音を調整できるUSER EQが利用可能。タイム・アラインメントを補正できる最大18msの“SPEAKER DELAY”と、映像とのズレを補正する最大150msの“FRAME DELAY”も装備しています。EQとディレイの設定はプリセットとして最大6パターンを登録可能です。
ひずみの少ない低域を再現
ミックスの問題点が細かく見えてくる
実際に705P Poweredの音を聴いてみましょう。JBL PROFESSIONALのスピーカーは派手めでパンチのあるサウンドだと勝手なイメージを持っていましたが、705P Poweredの音を聴いてみると解像度がかなり高いことに驚きます。また、音量を上げていってもひずみ感が無く、サイズから考えると信じられないほどパワーが出ました。また、我が家ではあまり再現できていなかった低域の量感が自然に感じられましたね。小型のバスレフ式スピーカーでは、不釣り合いな低域に戸惑ってしまうことが多々あるのですが、そのような違和感は無く、ROLAND TR-808/TR-909系のキックの輪郭も不自然に張り付くことなく、ひずみの少ない低域が再現されています。低域の暴れ具合がよく見えるので、ミックス時の低域へのアプローチも、より積極的にできそうです。中域/中高域のボーカルの子音やリップ・ノイズ/ポップ・ノイズなども、とても明快に再現されていました。
高域についても、もう少し派手なサウンドを予想していましたが、スムーズでとても好印象。実に正直なサウンドで、このスピーカーでミックスしたら、かなり細部まで処理できそうです。トラックの処理が雑だったり、バランスが取りきれていないミックスは、それぞれの問題点が細かく見えるでしょう。
705P Poweredのもう一つのポイントは、先述したDSPによる音場(ルーム・アコースティック)の補正システム。そもそも、音の聴こえ方は部屋の広さや壁、床、天井の材質による吸音/反射に非常に大きく影響されてしまいます。左右のスピーカーでドアや窓、壁との距離が違うこともありますし、理想的なモニター・スピーカーの設置環境になっていない場合もあります。テストのときも若干低域の量感が出過ぎている傾向があったので、EQを設定しました。操作を行うホイールは使いやすく、パラメーターを細かく調整できます。環境に合わせてDSPを活用することで、より自然でスムーズな聴こえ方になり、大満足な結果となりました。ただし、コントロール部が背面にあるため、スピーカーを設置した後に再度セットアップするのは少し大変かもしれません。リア・パネルにHARMANのネットワーク規格であるHiQnet用の端子が備わっていますが、将来的にHiQnetを使って外部機器から設定を変更することが可能になると思われます。今後のアップデートでリモート・コントロールに対応することを期待しましょう。
音量を下げていってもバランスの変化は少なく、自然な鳴りで解像度と低域の明りょうさを実現している705P Powered。“原音の再現性の高さ”を実感できるスピーカーだと感じました。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年11月号より)