
EQとディレイを2種類ずつ内蔵
パラメーターはプリセット保存が可能
まずはマイクプリの6X-500VIN。本体には2バンドEQも内蔵しており、これ一台で簡単な音作りもできるのはうれしいところです。マイクプリ部はGAINノブと位相切り替えボタン、48Vファンタム電源供給スイッチという基本的な機能は押さえつつ、簡易的なVUレベル・メーターもあるのは非常に便利。EQ部は高域と低域のブーストのみという仕様で周波数は固定になっており、HIGH BOOSTが6/10/16kHz、LOW BOOSTは30/60/100Hzをトグル・スイッチでそれぞれ選べます。サウンドはパッシブEQのようなナチュラルな傾向です。積極的な音作りには向いていませんが、ちょっと高域を上げたいとか、低域を膨らませたいときなどに便利。特に高域に関しては自然に上がってくれるので、原音を崩しにくいのが特徴です。
全体の音質ですが、従来のモデルとは違うキャラクターになっています。これまではどちらかといえば色付けの無いイメージでしたが、今回のVintage Editionは中高域の力強さが加わって、音がより前に出てくる印象です。
次はコンプレッサーの7X-500VINです。こちらはFETタイプのコンプレッサーで、INPUTの上げ下げでコンプのかかり具合、OUTPUTで最終的な音量を調整します。ATTACKとRELEASEはFAST/MED/SLOWの3つのタイムを選べ、初心者でも分かりやすくなっています。RATIOは4:1/12:1/100:1の3種類からの選択。100:1はいわゆるレシオ全押しのような雰囲気が得られます。便利なサイド・チェイン・フィルターもあり、カットオフ周波数はOFF/100/300Hzの3種類から選択可能。また、原音とコンプレッション後の音のバランスが調整できるCOMP MIXも装備しているので、“コンプをかけつつちょっとナチュラルに”といった調整ができるのはありがたいです。

サウンドは全体的に中高域が張った音。ナチュラルにレベルをそろえるというタイプではなく、アタックをはっきり出すタイプと言えます。今回はドラムで試してみました。ATTACKをSLOW、RELEASEをFAST、RATIOを100:1にしてアタック感を出し、COMP MIXでDRYの音にパッツンパッツンになったアタック音をブレンドしていくと、原音の雰囲気は残りつつもアタック感が付加された音に。そんな効果も7X-500VINでは簡単に作れます。これだけキャラの強いコンプ感を演出できる機材で、DRY/WETの調整ができるのは本当に便利です。ボーカルでは、RATIOを4:1にしてATTACKをSLOW、曲のテンポによってRELEASEをFASTまたはMEDで試してみました。テンポの速い曲や派手な曲ではそんなに気になりませんが、バラードなどでは少しコンプ感が出てくるので、COMP MIXで調整すればよいと思います。本機は、アタック感が出せる音のキャラクターなので、エフェクト的にも積極的に使え、楽器系には特に有効でしょう。
ひずみの少ない低域を再現
ミックスの問題点が細かく見えてくる
最後はEQのPEX-500VIN。3バンドのパッシブEQで、一番上のHIGH ATTEN(アッテネート)が10/15/20kHzから周波数を選べるシェルビング・タイプ。その下のHIGH BOOSTはパラメトリック・タイプで、周波数を6/10/16kHzから選べます。HIGH BOOSTは、真ん中にあるBWでバンド幅を調整することが可能です。LOW BOOSTとLOW ATTENは、周波数を30/60/100Hzから選択できるシェルビング・タイプ。カーブ特性を生かし、“持ち上げつつちょっとカットする”なんていうプロ定番技も使えます。

サウンドは、パッシブEQの特徴である“原音を大幅に変えることなく音作りができる”タイプなので、音によってはフルにブーストしても極端に変わらず、ナチュラルなかかり方がします。特にボーカルなどの原音のイメージを変えずに音作りをしたいときに有効に使えました。音がシャリシャリして軽いというときは、高域をカットして丸くしてあげるとうまくまとまったりします。
どのモジュールもトランス・タイプの入出力、フル・ディスクリート回路を持ち、オペアンプの変更で内部的にもアップグレードされ、以前のシリーズより音質的に使いやすくなっています。ハイファイという感じではないですが、“VIN”とあるように、ビンテージを意識させる中高域のキャラクターは、特に宅録で重宝するでしょう。ぜひ試してみてください。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年11月号より)