着脱可能な10chパワード・ミキサーに
1-Knob Master EQを装備
Stagepasシリーズは、2本のスピーカーと着脱式のパワード・ミキサーが一体となったオールインワンのPAシステム。片側のスピーカーにミキサー、もう片側のスピーカーにはケーブルやマイクなどを収納できる。
Stagepas 600BTのパワード・ミキサーは10ch仕様で、ch1とch2はXLR端子(30Vファンタム電源供給に対応)、ch3とch4はXLR/フォーンのコンボ端子、ch5/6はフォーン端子(L/R)、ch7/8はフォーン端子(L/R)とRCAピン端子(L/R)、ch9/10はフォーン端子(L/R)とステレオ・ミニ端子が備わっている。
各チャンネルにはHIGH/MID/LOWの3バンドEQがあり、1-Knob Master EQと合わせれば細かな音質調整が可能だ。Stagepasの特徴の一つである1-Knob Master EQはノブ一つでマスターの音質調整ができる機能で、SPEECH→MUSIC→BASS BOOSTの順に低域のボリューム感を調整できる。トーク・ショウなどで低域が不要な場合はSPEECHを、DJなどにはBASS BOOSTを使うとよい。
Bluetooth接続による音楽再生に対応
最大8台までペアリング機器を記憶できる
ch9/10は新しくBluetooth接続による入力に対応している。ミキサー本体にはBluetoothマークが書かれたボタンがあり、電源投入時はオフになっているこのボタンを長押しすると、LEDが素早く点滅を繰り返す。これはペアリング待機で、この状態時にスマートフォンなどのBluetooth対応機器側の設定画面でStagepas 600BTの名前を選択すれば接続が完了する。筆者の手持ちのスマートフォンで試してみたところ、思いのほかあっさりと接続できてしまった。
では、このBluetooth接続を使って音をチェックしてみよう。出音は全帯域に渡ってフラットな音質&大音圧で、インストア・ライブやストリート・ライブには必要十分な性能だ。ちなみに最大8台まで接続したBluetooth対応機器を記憶しているので、一度接続してしまえば次回以降ペアリングの必要は無くなる。
気になるのは混線などのトラブルだが、プレーヤー側でStagepasを選択しない限り自動で接続されるということは無いようだ。また、1台が接続状態であればほかの機器が割って入ることもできないので安心してほしい。
次にソースを音楽プレーヤーからマイクに替えてみた。ここで、ミキサーに内蔵されたSPXデジタル・リバーブを使用してみよう。1-Knob Master EQと同じく、ノブ一つでHALL/PLATE/ROOM/ECHOの4種類が面倒な設定無しで使えるようになっている。慣れ親しんだ往年のSPXアルゴリズムによるリバーブが誰でも簡単に使えるわけだ。面白いと思ったのは、このSPXデジタル・リバーブが別売りのフット・スイッチでオン/オフできるという点である。アーティストがStagepasを持ち込んで1人でライブをする際、演奏が終わってリバーブを切るのにわざわざミキサーを触る必要が無いということだ。なんとスマートなのだろうか。さらにフィードバック・サプレッサーをオンにすればマイクのハウリングを自動でカットしてくれるので、EQ補正に追われることなくライブに集中できる。
このStagepas 600BTは背面にパワード・ミキサーとケーブルを収納した状態で25.6kgと、大人であれば片手に1台ずつ持つことができる重量であることも魅力。ぜひミニ・ライブが可能な店舗やセルフPA希望のアーティストにお薦めしたい一品である。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年5月号より)