
金メッキの1インチ・ダイアフラム採用
本体やiOSデバイスに音声を保存
手のひらサイズで、シンプルなデザインのMikme。金メッキの1インチ・ダイアフラムがスリットからのぞくさまは、まるで“良い音が録れますよ”と言わんばかりです。
リア・パネルには電源ボタン、Bluetoothボタン、コンピューターへのファイル転送と充電が可能なマイクロUSB接続端子、ヘッドフォンなどのための出力と一眼レフ・カメラ(DSLR)の外部音声入力を兼ねたミニ端子、ボリューム・ボタンを備えています。

操作方法は至って簡単。電源を入れると本体上部のLEDボタンが白く光り、Mikmeは録音待機状態となります。そして、このボタンを押すとLEDが赤く点灯し録音がスタート、再び押すとストップ。ダブルタップで音声がプレイバックされ、さらにもう一度このボタンを押せば、本体内蔵の16GBメモリーにサウンド・ファイルが保存されるといった仕組みです。万が一入力がクリッピングした場合は、録音終了時にLEDボタンがピンク色に点滅してお知らせしてくれるという優れもの。そのときはLEDボタンを長押ししてピンク色に点灯させ、リア・パネルにあるボリューム・ボタンの+/−で入力ゲインを調整することができます。洗練されているのはデザインだけではなく操作性にも言え、とても好印象です。
また、無償のiOSアプリMikme Recordingをインストールしたスマートフォンなどの端末とMikmeを、Bluetoothボタンを使って接続することで次の3つのことができるようになります。まず1つ目はAUDIO機能で、Mikmeで収音した音声を端末内にM4Aで保存することが可能。次の2つ目はREMOTE機能で、Mikmeのレコーディング機能を端末から遠隔操作することができ、このときに録音された音声は、Mikmeの本体内に保存されます。最後の3つ目はVIDEO機能。iOSデバイスのカメラで撮影した映像とMikmeで収音した音声を、端末内にMP4で保存することが可能です。また、アプリ内にはオーディオ・エディット/エフェクト機能も搭載しているので、とても可能性を秘めたプロダクトだと言えるでしょう。
幅広いレンジでクリアな音質
マイク・スタンドなどにも取り付け可能
それではMikmeの性能を試すべく、近所のカフェへ行きレコーディングしてみます。ちなみに内蔵バッテリーは最大3.5時間も連続使用でき、録音フォーマットは24ビット/44.1kHzがデフォルト設定ということです。Mikmeを机の上に置いたら、上部のLEDボタン一押しでたちまち録音開始。マイク・スタンドやオーディオI/O、わずらわしいケーブルの配線も必要無く、さっとレコーディングできる手軽さは快適そのものです。コーヒーを飲みつつしばらくレコーダーを回した後、スタジオへ帰ってすぐに録音素材をプレイバック。カップやフォークなどの食器が触れる音や本のページをめくる音、スチーマーの蒸気音、客同士の会話などが、とても細かくキャプチャーされていました。何気無くテーブルに置いただけなのですが、こんなコンパクトなレコーダーで録ったとは思えないほど幅広いレンジで録音できていたので驚きです。
続いて筆者私物のRYCOTE製グリップを装着し、サンプリング・レートを96kHzに変更。河原へ行ってレコーディングを行いました。結果、こちらはさらに音のディテールまでキャプチャーできた印象です。レコーディング当日は路上に雪が残っていたのですが、シャーベット状の雪の上を歩く“シャリッ”とした音、枯葉を踏みしめる音、その背後から聴こえる清流の音など、その質感までクリアにしっかりと録ることができていました。
Mikmeの底部には3/8、1/4インチのネジ穴があるので、市販のマイク・グリップやマイク・スタンドに取り付け、しっかりと安定させた状態でのレコーディングも可能です。
今回使用してみて、Mikmeの特徴である“ワイアレス・レコーディング”はケーブルなどの煩雑さから解放し、マイク・セッティングの自由度を広げ、想像以上の快適さを実現してくれたと思います。普段フィールド・レコーディングで使用しているハンディ・レコーダーとは異なったニュアンスで収音できるので、手軽に持ち出せるサブ機としても活用できそうです。ポッドキャストやロケ時のマイクとしても大いに活躍が期待できるでしょう。何と言ってもボタン一つですぐに録音できるので、パッと浮かんだメロディも鮮度をそのままに記録しておくことができます。読者の皆さんも、Mikmeをポケットに入れて街へ出かけてみてはいかがでしょうか。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年4月号より)