
DIMやミュートの操作ボタンを装備
トークバック用の小型マイクを内蔵
僕は昨年の頭から自宅のオーディオI/OとしてApollo 8 Quadを使用しています。これは1Uのモデルなので、購入の際はApollo Twinの持ち運びやすさや機動性を考えて、どちらにしようか悩みました。しかしApollo 8は初代ApolloやApollo Twinよりも音質が向上していたので、そちらを選ぶことに。もし当時Apollo Twin MKIIが出ていれば、購入していたかもしれません。
初代Apollo Twinはシルバーでしたが、Apollo Twin MKIIはマットなグレー塗装になり、シックな雰囲気が所有欲をかき立てます。変更点で目立っているのは、中央ノブ下のインジケーターとボタン類。ボタン類は、入力やモニターに関する諸機能をオン/オフしたりするものです。
ボタンの数は8つで初代と変わりませんが、インジケーターの項目が倍に増えています。追加されたのはDIM、ALT(スピーカーの切り替え)、MONO、MUTE、FCN、TALK。DIM〜MUTEの4つは、Apollo 8では既に物理ボタンでコントロールできる機能ですが、初代のApollo Twinではミキサー・ソフトのConsoleからでないと操作できませんでした(画面①)。FCNボタンは、ユーザーが好みの機能を割り当てられるボタン。TALKは、その名の通りトークバック機能のスイッチです。パネルをよく見ると、中央ノブの下に穴があります。これがオペレーター側の声を拾う小型マイクで、トークバック回線を引く余裕が無い小規模な歌録り現場などでは助かる機能です。

製品ラインナップについては、初代Apollo TwinがDSPを1基内蔵する“Solo”と2基内蔵の“Duo”の2製品展開だったのに対し、本機では4基搭載の“Quad”が追加されています。これによりUAD-2プラグイン使用時のパワー不足に悩まされることも減るのではないでしょうか。また3月にUADソフトウェアのバージョン9.1がリリースされ、MacのOS X 10.12やWindows 10に対応したり、5種類のプラグインが追加されるなどしました。
非常にワイド・レンジな音質で
スピード感にも富んでいる
では音質をレポートしましょう。初代Apolloから2代目Apolloにアップデートしたときと同様、AD/DA共に初代Apollo Twinとはかなり違います。初代が中域押し、かつ低域と高域が少し抑えられた印象なのに対して、本機は低域も高域も伸びていて非常にワイド・レンジです。初代に慣れている方は驚くかもしれませんが、個人的には本機の方が圧倒的に好みです。ヘッドフォン・アウトもスピーカー・アウトと同じ傾向で、両者の音質差はほとんど無いと思われます。次に本機とApollo 8を比較。これは同じ音質と言っていいと思います。スッキリとした感じやスピード感も健在で、何度も両者を聴き比べましたが、違いが分かりません。同じです。
プリアンプ・シミュレーション“Unison”テクノロジーにも対応。無垢でワイド・レンジな内蔵マイクプリの音に色を付けることが可能です。例えばUAD-2プラグインの中のNeve 1073 Preamp & EQ Collectionを使うと、中域〜中高域の押し出しが増しタイトな音像に。個人的にはベースに使うとオケ中でもラインがしっかり見える音になり、ミックスもしやすく、普段とても重宝しています。
このApollo Twin MKIIは、自宅スタジオやプロジェクト・スタジオなど小規模な制作場所が増えて行く中、そうした環境で作業する人に向けて最もお薦めしたい機材です。個人的にはデジタル・アウトが付いていたら怖いもの無しで、Apollo 8から乗り換えてもよいかもしれません。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年6月号より)