
9.5kgと軽量で側面に持ち手を用意
入出力端子のバラエティが豊か
手元に送られてきたEMX7を箱から取り出すと、とてもオシャレなデザインです。最大出力710W(4Ω)のクラスDパワー・アンプがL/Rの2台分入っているのに、本体は9.5kgと軽量。側面には持ち手があります。
インプット部は先述の通り12chで、マイクは最大8本接続できます。ch1〜4にはワンノブ・コンプを搭載。コンプの難しい動作原理を覚えることなく、1個のノブを回すだけで最適な効果を得られます。マイクのほかは、電子キーボードやCDプレーヤー、携帯オーディオ機器などのライン入力にも対応。ch11/12には、スマートフォンなどを接続できるステレオ・ミニのライン・インがあり、心憎い仕様です。もちろんHi-Zスイッチやファンタム電源なども装備しています。出力端子もバリエーション豊かで、メインのスピーカー以外にパワード・モニターやパワード・サブウーファーを接続することが可能です。
大きな進化を感じるのは、フロント・パネルに備わった液晶パネル。ステレオ・アウトやAUXセンドに使える内蔵グラフィックEQ、“Flex9 GEQ”の操作画面などを表示できるのです。このFlex9 GEQでは、選択肢として用意された31バンドの中から任意の9バンドを選んで調整することができます。また、スピーカーの性能を最大限に引き出すDSPプロセッサーも装備されています。こちらも液晶パネルを見ながら操作でき、CBRシリーズなどのYAMAHA製パッシブ・スピーカーを接続すれば、使い勝手の良いシステムを構築できます。そのほか、BASS BOOSTモードや、不快なハウリングをボタン1つで除去するフィードバック・サプレッサーなども内蔵しています。
とても素直な音質のマイク・イン
内蔵DSPで併用するスピーカーに最適化
まずは弊社の倉庫にてチェックしてみました。リアにはスピーカー・アウトとして、スピコン/フォーンのコンボ端子があります。既存のミキサーから置き換えやすい端子形状なので、うれしい配慮ですね。
まずはマイク・インにダイナミック・マイクを接続。とても素直な音で、安っぽくありません。ワンノブ・コンプは、効き過ぎるくらいしっかりとかかりますね! しかし、かかっているときには出力ゲインがアップされるようで、オーバー・コンプで音量が下がり過ぎるようなことはありません。チャンネルEQは3バンドで、高域10kHz、中域2.5kHz、低域100Hzとおいしいポイントが設定されていて、使いやすいです。
続いてFlex9 GEQをチェック。直感的に使えますし、効きも良く操作が簡単です。そのほかの出力系機能に関しては、システム設定でアンプ出力を“L+R/AUX1”にセットすれば、L+Rのモノラル信号をメイン・スピーカーに、モノラルのAUX信号をモニター・スピーカーへ送ることが可能。すぐにパワー・アンプを追加できない現場でもモニターを使えるので、これはうれしい仕様ですね。
一通りの機能を理解したところでフィールド・テストをしてみたくなり、弊社管理のビア・ガーデン・ライブ会場に持ち込みました。併用したスピーカーはCBR12です。まずはノーEQで音を出してみました。音量は十分で、会場内でのエリア・カバーも問題ありません。
ここでEMX7の内蔵スピーカー・プロセッサーをCBR12用のモードに設定すると、出音がさらにハイファイに。高域が聴きやすくなったのもさることながら、主に低域の補正を行ってくれたようで、ボトムが伸びてとても立体的になりました。音量も十分です。内蔵スピーカー・プロセッサーで基本的な音作りができますので、さまざまな会場でグラフィックEQでの補正に困らないと思います。
新しい機能を取り入れながら操作しやすいミキサーを作るのには、かなりの技術的努力を要すると思います。筆者は、音色の向上をベースに正常進化したEMXシリーズを高く評価したいと思います。



(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より)