【スタジオ・モニターYAMAHA HSシリーズ】エンジニア・レビュー第2回 SUI

今の時代、これからの時代の
クリエイターに向けて作られたHSシリーズ

“精確性”という設計理念のもと、製作されているYAMAHAのスタジオ・モニター=HSシリーズ。ラインナップは、5インチのHS5、6.5インチのHS7、8インチのHS8、8インチのサブウーファーHS8Sとなっている。ここでは第一線で活躍するエンジニアによるHSシリーズの使用レポートを紹介していこう。今回は作曲からアレンジ、ミックス・エンジニアまで幅広く活躍するSUI氏にHS7とHS8Sという組み合わせで試してもらった。
(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2013年9月号の記事に加筆・修正を加えたものです)

レンジが広く、高い低域の解像度

HS7は、高域に1インチのドーム・ツィーター、低域に6.5インチ・ウーファーを採用した2ウェイ・バスレフ・タイプ、そしてHS8Sは低域に8インチ・ウーファーを採用したバスレフ・タイプのパワード・モニター。SUI氏はこれまでのキャリアの中でNS-10Mを使う機会が多かったと言うが、HS7HS8Sの第一印象を次のように話してくれた。

SUI: いつも使っているリファレンスCDで聴き、さらに曲作り、ミックス、簡単なマスタリングまでオールラウンドに試してみました。まず感じたのは、レンジの広さと低域の解像度が素晴らしいということ。特にサブウーファーをセットしてみて、低域の聴こえ方が格段に良くなりました。それまで僕自身サブウーファーは好きではなかったんですよ。それは低域のスピード感が損なわれることが多かったから。でもHS7HS8Sの組み合わせは速度感がそろっていて、音が“面”で届いてくれたので、とても楽しいスピーカーですね。

これはHS8Sで採用された空気の流れと音を可視化し、解析/制御する流体音制御技術によるものだ。そしてSUI氏はこう続ける。

SUINS-10Mとは全く別物という印象で、より原音に忠実で素直なサウンドですね。これは音楽を仕事にする身としてはありがたいです。つまり、パソコン上のデータが脚色なしに正確に鳴らないと、別の環境で違和感のある音で鳴ってしまう。そうなると仕事にならないんですよ。

設置環境に合わせて簡単調整

HSシリーズは、設置環境に合わせて音の細かな調整が可能な点も特徴だ。今回設置したSUI氏のプライベート・スタジオでもその調整機能が効果を発揮したという。

SUI:今回設置した際に、HS7のROOM CONTROLを−2dBに設定しました。僕のスタジオは、中域の160Hzあたりがデスクに跳ね返るのでそれをカットするためですね。それから、HS8SにもHIGH CUT、LOW CUTのツマミで周波数を調整でき、自分の欲しい帯域をしっかり出すことができました。調整もしやすかったです。スピーカーの設置環境は人それぞれだと思うので、こうやって簡単に調整できるのはすごく良いと思います。

最後にSUI氏に本機最大の魅力を聞いた。

SUI:歌の広がり感をはじめ、各音の奥行きが分かりやすく、かつローエンドがはっきり聴こえる点。これで音作りしてミックスしたらもう一段上に行けるなと、自分で自分に期待する感じがしました。僕はシンセ・ベースをメインに使いますが、近年のクリエイターはそのレンジをかなり下まで広げて作っているんですね。HSシリーズはそこの音までしっかり対応していましたし、しかもほかの帯域のアタック感を維持しながらここまでクリアに低域が見えるスピーカーはなかなかないですよ。

原音忠実という変わらないコンセプトを持ちつつ、今の時代、これからの時代のクリエイターに向けて作られたのが、この新HSシリーズなのだ。

▲HS8Sのリア・パネルには左側にライン入力L/R(XLR/TRSフォーン)、中央にライン出力L/R(XLR)を備え、出力段にはベース・マネージメント機能として、LOW CUTスイッチとカットオフ周波数(80〜120Hz)、PHASEスイッチ(位相切り替え用)、HIGH CUT(80〜120Hz)設定ツマミ、ボリューム・ツマミを装備する ▲HS8Sのリア・パネルには左側にライン入力L/R(XLR/TRSフォーン)、中央にライン出力L/R(XLR)を備え、出力段にはベース・マネージメント機能として、LOW CUTスイッチとカットオフ周波数(80〜120Hz)、PHASEスイッチ(位相切り替え用)、HIGH CUT(80〜120Hz)設定ツマミ、ボリューム・ツマミを装備する

【プロフィール】 SUI

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作家、トラック・メイカー、プロデューシング・エンジニア。ソングライティングからアレンジ、ミックス、マスタリングまでこなす。ヒップホップ/ブレイクビーツ/EDM/ハードロック/オルタナティブに精通し、カバーする曲調の幅広さと狙った音像の精度の高さには定評がある。各種セミナー、自身のブログ(http://k7beatz.com/)などを通じ楽曲制作関連の情報を提供している

YAMAHA HS7

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SPECIFICATIONS
■構成 高域:1インチ・ドーム、低域:6.5インチ・コーン
■出力 95W(高域35W+低域60W)
■周波数特性 43Hz〜30kHz (−10dB)
■クロスオーバー周波数 2kHz
■最大入力レベル +24dBu
■入力インピーダンス 10kΩ
■外形寸法 210(W)×332(H)×284(D)mm
■重量 8.2kg(1本)
■価格 オープン・プライス
(市場予想価格 25,000円前後:1本)

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