
マイクプリを備えた入力と
ローカット&3バンドEQを搭載
StudioLive ARは、StudioLive AR8 USB(以下AR8)、StudioLive AR12 USB(以下AR12)、StudioLive AR16 USB(市場予想価格:65,000円前後)という3種類がラインナップされており、今回はAR8とAR12をチェックしていきます。本機はアナログ・ミキサーですが、“ハイブリッド・パフォーマンス&レコーディング・ミキサー”と言っている通り、単なるアナログ・ミキサーだけではなく、USBオーディオ・インターフェース機能などを搭載した魅力的な製品になっているようです。
AR8は8ch入力(モノ2ch+ステレオ3系統/マイク・プリアンプ4基)を、AR12は14ch入力(モノ4ch+ステレオ5系統/マイク・プリアンプ8基)を装備。マイク・レベルは±0〜+50dB(モノch)と+4〜+45dB(ステレオch)、ライン・レベルは−30〜+20dB(モノch)と−15〜+25dB(ステレオch)となっているので、入力する楽器や用途によって使い分けることができます。また、100Hz以下の余分な低域成分をカットできるLowCutボタンと、80Hz/2.5kHz/12kHzの3バンドEQを搭載。可変幅は±15dBで、効き具合も良好です。
センドはAUXとFXの2系統。FXのツマミを回せば、内蔵のステレオ・エフェクト(16種類)から選ばれたエフェクト成分が付加するようにできています。典型的なホール・リバーブから、コーラス、ディレイまで、簡単にかけることができとても便利です。
AR8には、個々のボリューム調整するトリム式のツマミが採用されており、コンパクトな形にするのに一役買っています。AR12はフェーダー仕様なので、細かなボリューム調整ができるようになっています。
USBオーディオI/O機能は
24ビット/96kHzに対応
AR8の特徴になっているのがST7/8のスペシャル・チャンネル(AR12はST13/14)。これは、本機をオーディオ・インターフェースとして使ったときのチャンネルのほか、後述するBluetooth接続、SDカードの再生用チャンネルとして使われます。
USBオーディオ・インターフェースとしての使い方は非常に簡単で、同梱のUSBケーブルをつなぐだけ。ドライバーなどインストールする必要もありません。スペックは24ビット/96kHz対応と、ポータブル・ミキサーなのにハイスペックで驚きです。それぞれの仕様はAR8が8ch入力/4ch出力、AR12が14ch入力/4ch出力というもの。実際につないでみると何の問題もなくチャンネルに立ち上げることができ、その音もスペック通りにきらびやか。AVID Pro ToolsのコンピューターからPro Toolsの音を出してみても何の問題もなく、ここまですんなり音を出せることにびっくりしました。ライブ用のミキサーとして、レコーディングしたデータをそのまま使えるのも効率的で魅力的なのではと思います。また、PRESONUSのマルチトラック・ライブ・レコーディング・ソフトウェアCapture(PRESONUS登録ユーザーは無償ダウンロード可能)と、シームレスに連携して使うこともできます。
このStudioLive ARシリーズは、Bluetooth接続にも対応しているところが便利です。スペシャル・チャンネルに付いているPairボタンを押すだけで、Bluetooth対応機器とリンクすることができます。実際に自分のAPPLE iPhoneで試してみると、簡単に接続完了。iPhoneの音をミキサーに流すことができました。リハでコンピューターやiPhoneに入ったデモ音源を皆で確認したり、レコーディング中に端末から気軽に音を確認したりと用途はいろいろだと思います。
さらに本機はスタンドアローンのレコーディング機能を搭載しています。記録メディアはSDカードで、コンピューターを接続することなく、単体でメイン・ミックスの音声をステレオWAVとしてレコーディングすることができるのです。本機を持ってリハーサルに入れば、その日の音をダイレクトにSDカードに録音後、メンバーで共有できますし、プレイバックもその場で可能。出来栄えをすぐチェックできてしまうという優れものとなっています。
ここまでかゆいところに手が届くのはいろいろな環境での使用できる証拠。AR8なら宅録やミュージシャンのモニター用として、AR12はライブでの使用など、幅広く活用できそうですね。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年3月号より)