「L-ACOUSTICS X15HiQ」製品レビュー:フィードバック耐性に優れた同軸2ウェイのモニター・スピーカー

L-ACOUSTICSX15HiQ
L-ACOUSTICSからウェッジ・タイプのモニター・スピーカーとしてX15HiQが発表された。バスレフ・タイプのキャビネットに3インチ・ダイアフラムのコンプレッション・ドライバーと15インチの低域トランスデューサーを同軸上に搭載している。同軸スピーカーにこだわってきたL-ACOUSTICSの高い技術力により生み出された本機。早速テストしていこう。

指向性は40°(水平)×60°(垂直)
リギングでの設置にも対応可能

X15HiQはL-ACOUSTICSのパワー・アンプ、LA4X/LA8jpと接続してクロスオーバーなどの設定を行い、ドライブさせる仕様。背面部には垂直方向の角度を変更できるライザーが格納されている。また、40°(水平)×60°(垂直)の楕円(だえん)指向性が特徴的だ。

本機にはボディが白のタイプも用意されているので、ステージ美術に合わせて導入できる点もトピックの一つ。また、リギングするための専用アクセサリーがオプションで多数用意されており、ステージ上のウェッジ・モニターとしてだけでなく、カフェなどのライブ・スペースに常設のスピーカーとしても使用できる。

さらに、本機とL-ACOUSTICSのほかのスピーカーを組み合わせて、小規模のPAシステムを構築できるという拡張性も魅力。汎用のスピーカー・スタンドに本機をマウントさせてサイドフィル・モニターにし、X8やX12をインフィルやアウトフィルなどの死角へのサービスに用いるのも良いだろう。さらにコンパクト・サブウーファーのSB18を加えれば、あらゆるシーンでハイレベルなサウンドを提供可能だ。

重量感に加え張りとツヤのある音を
高密度で遠くまで届けてくれる

今回は500人を収容するホールのステージ中央、ボーカルの位置にX15HiQ×2を置いてチェックした。パワー・アンプはL-ACOUSTICS LA8JPを使用し、2イン4アウトのバイアンプ設定で本機をドライブさせる。

まず驚いたのは本機の重量で、1人で設置しても負担にならない。キャビネットの重みは音の重みと考えると、その分少し不安がよぎる。早速音楽を流してみよう。すると、不安とは裏腹に十分な音量が出てきて、アンプの音量が−10dBくらいの設定でも十分なパワーが得られていた。マイクのSHURE SM58を用いて声を出してみても、重厚感に加えて張りとツヤがあり、モニター・スピーカーとして申し分のない音質が耳に入ってくる。

続いて本機を客席に向け、客席後方まで音が届くかどうかをチェック。競合他社の同軸タイプのモニター・スピーカーと比べると、遠達性が明らかに優秀であることを確認できた。モニター・スピーカーとして、ニア・フィールドに焦点を置くことは当然で、遠達性を求めるとフィードバックなどの問題も起きてきそうだが、本機はその両方をクリアしていたことに驚いた。共に試聴した同業者からも、否定的な意見はまるで聞かれない。

次に、EQをフラットな状態から自分なりに調整して聴いてみる。EQを施した際の音のやせ方で、製品の安定感が分かるからだ。カットした周波数で大体の音の量感が奪われてしまう、いわゆる“腰抜け”な製品は体裁を整えてはいるものの、足腰の弱さを感じる。だが本機は違い、どっしりとした安定感があった。

PAのフィードバック対策においては、プロセッサーを使って制御する方法などいろいろとある中で、本機はフィードバックを抑えるというネガティブな発想ではない。出音そのものがピークのないフル・レンジの音で高い密度を持って聴こえてくるので、それが音圧となり、フィードバックしそうなところまでレベルを上げなくても十分モニター・ミックスが聴こえてくるのだ。40°(水平)×60°(垂直)の狭い楕円(だえん)指向性も効果的に機能していると思えた。そしてこの指向性こそ、遠達性に良い影響を与えているのではないかと推測される。

音質に関しては、フラットで聴いた際にブーミーさやギラつきなどの音の立ち上がりが抑えられている感じがしない。そこがコントロールされて抑えられていると、エンジニアとしては好みの音作りの方向に持っていけない不自由さがあるものである。本機はその“フラットな状態”に自由さを持っていることが感じられた。

音のキャラクターは、カラッと明るいというイメージではないが、中低域/中域が充実していて、一貫したL-ACOUSTICSらしさを感じられる。モニター・ミックスとして音を混ぜたときに出てくる各帯域のスピード感が共通している点がその特徴なのかと思う。フラットで聴くと少しダークに思えるところにも、本機の音質に足腰の強さを感じた。そして、それに支えられたハイレンジはくっきりとした抜けの良さを持っている。クリアで音楽的なサウンドを構築するのに十分なレスポンスだ。

§

FOHのスピーカー・システムが多種多様になってきた昨今。しっかりとしたモニター・スピーカーで良質なサウンドをステージ内に提供することが外音の改善になることは明白だ。本機のような大きさ/重さ/見た目など、今後の定番になっていくであろう製品が登場してきたことはうれしい限りである。

▲ライザーで角度を変えられる ▲ライザーで角度を変えられる
▲接続端子はスピコンを採用。左がインで右がリンク ▲接続端子はスピコンを採用。左がインで右がリンク

製品サイト:https://www.bestecaudio.com/product/search/index.php/item?cell003=L-ACOUSTICS&cell004=%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB&label=1&name=X15HiQ&id=4

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年7月号より) 

L-ACOUSTICS
X15HiQ
641,000円
▪スピーカー構成:同軸2ウェイ(15インチ・トランスデューサー/低域+3インチ・コンプレッション・ドライバー/高域) ▪最大音圧レベル:136dB ▪周波数特性:55Hz〜20kHz(−10dB) ▪指向性:40°(水平)×60°(垂直) ▪ウェッジ角度:35°、55°(ライザー使用時) ▪外形寸法:580(W)×430(H)×375(D)mm ▪重量:22kg