
アナログ・シンセなどの機器を
MIDIやCV/Gateでコントロール可能
MIDIコントローラー部の解説から始めましょう。最も多いケースだと、パソコンとUSB接続し、パソコン内のシンセやDAWのパラメーターを、2つのリボン・コントローラーと4つのロータリー・エンコーダーを使ってMIDIコントロールする用法だと思います。扱えるMIDI情報は0〜97までのCCや、ピッチ・ベンド、アフタータッチなどをはじめ、システム・エクスクルーシブにも対応。パラメーター設定はパネルのLCDを見ながら矢印ボタンでカーソル移動、INC/DECボタンで数値設定するという流れですが、パネル・ボタンはしっかり整理されているのでCONTROLLER/SYNTH/SEQの各MODEでの設定も、戸惑うことなく素早い操作が可能です。設定は保存できるので“自宅用”とか“ライブ用”などシーンに合わせてメモリーしておけば便利でしょう。
A-01本体にはMIDI IN/OUTを装備しているので、直接MIDI機器を接続する使い方もできます。また、CV/Gate出力端子も搭載されているので、A-01を経由してMIDI to CVコンバーターとして使うことも可能ですし、アナログ・シンセなどへダイレクトに接続してコントロールすることもできます。ちなみにCV端子からはポルタメントも出力可能な上、時間変更やレガート時のみかける、なんて細かいところにも対応する仕様だったりするのはアナログ・ファンには見逃せないはず。
また個人的にイチオシなのは“Bluetooth Smart”規格にも対応していること。本機をAPPLE iPadとBluetoothで接続すれば、ケーブルレスでBluetooth MIDI対応アプリがコントロールできるのです。試してみたところ、レイテンシーも問題なく、ピッチ・ベンド/モジュレーション、CCによるコントロール情報も送信可能ですから、この環境が手に入るのはうれしい限りでしょう。現時点ではiOS9以降あるいはOS X 10.10以降のみの対応ですが、世界的にBluetooth MIDI規格に賛同しているメーカーがほとんどなので、WindowsやAndroidへの対応も時間の問題ではないかと思われます。
8ビットCPUのシンセ音源
16ステップのシーケンサーを内蔵
さてA-01の2つ目の顔は、8ビットCPUを使いアナログ・シンセをシミュレーションしたシンセサイザーです。仕様は、1オシレーター+1フィルター+EG&LFOというシンプルなものですが、オシレーターには4つの波形が用意され、レゾナンス付きフィルターのタイプが3種類と、結構凝ってます。なにより侮れないのが出音。フィルターはROLAND伝統の質感ですし、スルーも可能なので、素(す)のオシレーター音によるクリアな質感を楽しめるのも新鮮です。筆者的には速いLFOスピードでオシレーター変調をかけた際に発生するゴツゴツとした独特の暴れ方が癖になりそう。もちろん音色保存も可能です。この音源をさらに楽しむ機能として、A-01の3つ目の顔であるステップ・シーケンサーも搭載されています。A-01には内蔵スピーカーやヘッドフォン端子もあるし、電池駆動(単3乾電池×4本)にも対応しているので、本機を持ち出しても、音源とシーケンサーでどこでも遊べます。最大16ステップで、シャッフル、ステップの再生順、休符、スキップなどおよそ欲しい機能は全部ありますし、タイも設定できるので“ドレミファ・ドレミファ”というパターンを“ドーミファ・ドレーファ”と変更させるのも即座に可能。しかもノートのみならず、カットオフとレゾナンス、ゲートまでプログラムできますし、作成したパターンの保存も可能なので、至れり尽くせりです。極めつけは、ここで作成したパターンで接続先の音源を鳴らすことができること。出力先は、前述したようにUSBでもMIDIでもCVでも可能なのがミソです。MIDIクロックにも対応しているので、外部MIDI機器(またはパソコン)との同期もできます。だからA-01は“MIDIコントローラー+ジェネレーター”というサブタイトルが付くのでした。
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シーケンス・パターンを止めることなく、音色エディットやステップ入力が可能なので、リアルタイムでのギグではことさら重宝するはず。さらにそういう現場ではアナログとデジタル機材の共存は普通なので、A-01があれば多様なフォーマットの橋渡し役もしてくれるでしょう。冒頭では“3つの顔”と紹介しましたが、ちょっと考えただけでも10くらいの顔は楽にあると思いました。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年4月号より)