
低域のふくよかな部分まで収めた
“ラインっぽさ”の感じられない音質
IRig 2は、本体から伸びる4極ミニ・ケーブルをiPhoneやAndroid端末、Macといったデバイスのヘッドフォン端子につないで使用するオーディオI/O。本体のギター/ライン・インに入力された音は、4極ミニ・ケーブルを通りデバイス内にインプットされる。それをAmplitubeなどで加工し、本機のヘッドフォン端子からモニターできるのだ。初代IRigには無かったゲイン・ダイアルやギター・アンプ用の出力を新搭載。またアンプにつないだとき、Amplitubeなどを通した音とドライ音を切り替えて出力できる“FX/THRU”スイッチも装備されている。“FX”設定時はAmplitubeのチューナー機能を使い、チューニング後は“THRU”に切り替え実機のエフェクターを通しつつアンプから出す、という使い方も可能だ。
さてまずはiPhone 6と接続し、普段から使っているAmplitube for iPhone/iPod Touchに音を入力してみた。Amplitubeシリーズには無償版のAmplitube Freeもあるので、ビギナーの方はそちらから試しても良いだろう。先述の通りIRig 2には入力ゲインが備わっているので、楽器の出力レベルに合わせてベストな信号の大きさを設定できる(写真①)。これは音のクリアさやひずみの密度/柔らかさなどに大きくかかわる部分なので重要だ。オーディオI/Oとしての基本的な音質は、初代IRigに比べてグッと向上。IRigは音がやや硬く、ピッキングしたときに6kHz辺りが目立ったり、低域がこぢんまりとしている印象だったが、そうした部分が改善されたようで、とても自然な音が得られるのだ。低域の柔らかい部分まで収められ、ラインっぽさのようなものがあまり無い。

ゲインを調整した後は、Amplitubeの中で機材をチョイス。普段実機で出しているドライブ・サウンドを目指し、MARSHALL風のアンプとIBANEZ Tube Screamerのようなペダルを選んだ。アンプのゲインはひずみ過ぎないよう設定し、前段につないだオーバードライブのゲインでドライブさせてみた。すると、狙い通りの食らいつくような音が完成。実機でよくやる手法なのだが、こうしたモバイル型オーディオI/Oとアプリにおいてそのニュアンスが再現されているのは素晴らしい。
アンプ出力を使用することで
Amplitube+実機の音作りが可能に
Amplitube for iPhone/iPod Touchにはシングル・トラックのレコーダーが標準装備されており、アプリ内購入で4trマルチにアップデートすることもできるのだが、今回はiPhone用のAPPLE GarageBandと組み合わせて録音してみた。GarageBandの“Inter-App Audio”機能を使用すれば、互換性のあるシンセ/エフェクト・アプリの出力をGarageBandに接続できるので、Amplitubeの“かけ録り”が行える。そこで短いデモ曲を作ってみることにした。まずはGarageBandの音源でドラムを作成。ベースは自ら演奏し、IRig 2とAmplitubeを通して録音。Amplitubeではベース用アンプのプリセットも充実しているので、好みの音に作り込める。早速録り音を聴いてみると低域の音像がしっかりとしており、ドライブ感もたっぷりだ。これはAmplitubeの効果だけでなく、IRig 2の低域特性が優れていることも多いに手伝っているのだろう。リード・ギターは、潤いと密度感を持たせるためにAmplitubeのディレイをかけ、ゲインも高めに設定。出来上がった曲を聴いてみると、モバイルI/Oとアプリで作ったとは思えない音質だ。
今度はIRig 2本体のアンプ用出力を使い、Amplitubeを通しつつ実機のアンプを鳴らしてみた(写真②)。こうした使い方をする場合、実機のアンプとモデリング・アンプがダブらないよう、Amplitubeのアンプをバイパスしておくと良い。ギターの後ろには実機のブースターをつなぎ、Amplitubeではオーバードライブとディレイをロード。実機とアプリを組み合わせて音作りできるのはIRig 2を使っているからこそで、発想が広がるだろう。

一通りのシチュエーションでIRig 2を使ってみたが、音質や使い勝手、拡張性など、どこを取っても素晴らしいと感じた。触っていると“こんな使い方もできる!”というようにアイディアが浮かび、ワクワクしてくる一台である。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年5・6月号より)