「STEINBERG UR242」製品レビュー:エフェクト駆動用DSPを備えた4イン/2アウトのオーディオI/O

STEINBERGUR242
STEINBERGのUSB2.0オーディオI/O、URシリーズにUR242が加わりました。私はUR22を愛用中で、同シリーズについては知り尽くしているつもりなので結構ウルさいですよ。パッと見はUR22にライン・インが2つ追加されただけに思えますが、ほかにも新しい機能が搭載されている模様。早速見ていきましょう。

エフェクト3種とミキサー・ソフトが付属
ネット配信などに便利な“ループバック”

UR242はMac/Windows/iOSに対応し、最高24ビット/192kHzをサポート。前面には音質に定評のあるYAMAHAのマイクプリ“D-Pre”を備えたマイク/ライン・インが2つ、背面にはライン・インとライン・アウトが2つずつ装備され、最大入出力数はアナログ4イン/2アウトとなっています。シリーズの中ではUR22(2イン/2アウト)とUR44(6イン/4アウト)の中間に当たる仕様で、“UR22では入力数が足りないけど、UR44ほどは必要無い”というニーズに応えた形でしょうか。電源はUSBバス・パワー非対応で、ACアダプターから供給します。

UR22と比べてお得な点はUR44以上の上位機と同じDSPを内蔵し、Sweet Spot Morphing Channel Strip(コンプ+EQ)やGuitar Amp Classics(アンプ・シミュレーター)、Rev-X(リバーブ)の3つの付属エフェクトを駆動できるところ。これらは付属のミキサー・ソフトDspMixFxで扱えるほか、DAW上でも使えるようVSTプラグイン版も同梱されています。

筆者愛用のUR22はダイレクト・モニタリング用のバランス・ノブを備えていますが、UR242ではDspMixFxを用いてダイレクト・モニタリングを行う仕様。本体でインプットとDAWの返しのバランスを調整することはできませんが、入力した歌声にRev-Xでモニター用リバーブを加えたり、Sweet Spot Morphing Channel Stripを使ってコンプやEQのかけ録りが行えます。またギタリストならGuitar Amp Classicsでひずませつつ録音できる、という大きなメリットも。モニターにエフェクトをかけながら、DAWにドライ音を録ることも可能です。

さらに“ループバック”という機能も便利。これは、UR242に入力されている信号と、コンピューター内のソフトで再生された音がUR242の本体でステレオ・ミックスされ、コンピューターに戻るという機能。歌や楽器演奏をオケのタイミングに合った形で出力できるため、主にインターネットでのライブ配信などに活用できるでしょう。

位相特性が良く張りのあるD/A音質
付属エフェクトのサウンドは高品位

ここからは音質をチェック。まずはCDと自分がミックスした96kHzの音源を再生してみます。再生音質は、ライン・アウトとヘッドフォン端子共に張りがあって、どっしりとした感じ。位相特性も良く、UR22の音に慣れた耳でも安心して聴ける良い音です。また外部電源のおかげか、96kHzではUSBバス・パワー駆動のUR22よりもダイナミクスに余裕が感じられます。

次にNEUMANN U87AIをマイク/ライン・インに接続し、ボーカルとアコースティック・ギターを録音。さすがのD-Preで、息の細かい部分やギターの弦にピックがこすれる瞬間のささいな音までとらえています。また、こちらもUR22よりダイナミクスが大きく聴こえます。

続いてはマイク/ライン・インのHi-ZスイッチをONにし、エレキギターを接続。DspMixFxにGuitar Amp Classicsをインサートしてみました。おおっ、結構本格的なひずみサウンドです。CLEAN/CRUNCH/DRIVE/LEADの4つのアンプが搭載されていますが、中でもCRUNCHがなかなか良いと思いました(画面①)。

▲画面① 付属のアンプ・シミュレーターGuitar Amp Classicsの“CRUNCH”アンプ。ゲインや3バンドEQ、プレセンスなどが装備されている ▲画面① 付属のアンプ・シミュレーターGuitar Amp Classicsの“CRUNCH”アンプ。ゲインや3バンドEQ、プレセンスなどが装備されている

ここでほかのDSPエフェクトをチェック。Rev-Xは密度の高い残響を聴かせてくれます。この密度というのはリバーブにおいて結構大事で、チープなものだと残響が切れ際にパラパラと散り、不自然に聴こえます。その点、Rev-Xはしっかりとしています。Sweet Spot Morphing Channel StripはコンプとEQを個別に調整できるほか、中央のノブを回すだけで両方を適切に変化させる“Sweet Spot Morphing”という機能を実装。プロ・エンジニアの作成したプリセットも豊富で、透明感のある自然な音作りが可能です。これらのエフェクトは、DAW上でVSTプラグインとして使うときもDSPで処理されるため、コンピューターのローカルCPUに負荷がかかりません。

最後にAPPLE iPad Camera Connection Kitを使い、本機とiPadを接続。iOSのバージョンは8.1ですが、つなぐだけでオーディオ入出力がUR242へと切り替わりました。UR44のように本体の“CC MODE”スイッチをONにする手間が無くて良いですね。UR242からはiTunesや動画の音はもとより、MOOG Animoogなどのシンセ・アプリも快適に出力されます。また本体のMIDI INにMIDI鍵盤をつないで弾いてみると、音のレスポンスが非常に良い。iOS版のAPPLE GarageBandなどと組み合わせれば、かなり本格的な制作が行えそうです。

UR242のお得感は、UR22ユーザーの私としてはちょっと悔しいところ。UR22購入を検討している人も少し予算を上げて、こちらを買ってみてはいかがでしょう?

▲背面には左から、電源スイッチや5VのACイン、USB 2.0端子、MIDI IN/OUT、ライン・イン×2、ライン・アウト×2(いずれもフォーン)を配置 ▲背面には左から、電源スイッチや5VのACイン、USB 2.0端子、MIDI IN/OUT、ライン・イン×2、ライン・アウト×2(いずれもフォーン)を配置

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年5・6月号より)

STEINBERG
UR242
オープン・プライス(市場予想価格:20,000円前後)
▪接続タイプ:USB2.0/3.0▪最大入出力数:アナログ4イン/2アウト▪ビット&レート:最高24ビット/192kHz▪外形寸法:198(W)×47(H)×273(D)mm▪重量:1.3kg ▪Mac:OS X 10.7.5〜10.10(32/64ビット)、INTEL製デュアル・コア・プロセッサー▪Windows:Windows 7(SP1)/8/8.1(32/64ビット)、INTEL製もしくはAMD製デュアル・コア・プロセッサー ▪共通項目:2GB以上のメモリー、4GB以上のハード・ディスク空き容量、1,280×800ピクセル以上のディスプレイ