
INSTRUMENT/SPEAKERの
2種類の入力レベル・モードを実装
DIは構造によって大きく以下に分類できます。トランスでインピーダンス・マッチングを行うパッシブ型、オペアンプやバッファー・アンプなどの電子回路コンポーネントを持つアクティブ型、単体機ではなくプリアンプなどと統合されたモデルの3種類です。RNDIはアクティブ型とパッシブ型を共存させたような機種で、FETのディスクリート・クラスAアンプとルパート・ニーヴ氏設計のカスタム・トランスを搭載。外部から48Vのファンタム電源を供給し、動作させる仕様です。
筐体に目を向けると、まさに業務用機器といった気品が見て取れます。外形寸法は101.6(W)×38.1(H)×158.7(D)mmで、重量は約680g。手に取ってみると丁寧に仕上げられていることが分かり、見た目よりもずっしりしている印象です。フロント・パネルにはフォーンのハイインピーダンス・インが装備されており、インプット・レベル・スイッチで2種類の入力レベル・モードを切り替え可能。楽器入力用の“INSTRUMENT”モードに設定すると+21dBuまで、ギター・アンプのスピーカー・アウトなどをつなぐための“SPEAKER”モードにセットすれば+41.5dBuまでの信号を受けることができます。フロントにはこのほか、入力した信号をそのままのレベルで出力するためのTHRUアウトや、ファンタム電源の供給を示す青いLEDが備えられています。
さて先述のFETディスクリート・アンプは入力段に搭載されておりINSTRUMENTモード時には最高2.2MΩという非常に高いインピーダンスを有します。これにより、ひずみに強い入力を実現しているわけです。出力段にはカスタム・トランスが備えられ、入力信号のインピーダンスを40Ω以下に変換し出力。音質の劣化が抑えられている点も特徴です。リア・パネルの仕様はシンプルで、XLRのトランス・アウトとグラウンド/リフト・スイッチのみを備える形です。
独特の倍音を持つ“NEVEサウンド”
帯域のバラつきが無くまとまった響き
今回のテストは、スタジオ・サウンド・ダリのStudio Bで実施。RNDI以外に8機種のDIを用意し、聴き比べてみました。この部屋にはNEVEの機材が一切ありませんが、あえてそういった環境で試してみたかったのです。
まずはDIの使用頻度が高い楽器ということで、エレキベースに使いました(写真①)。

RNDIへの印象を率直にお伝えすると、まさに“NEVEサウンド”。倍音が豊富で、その響きが独特なのです。擬音語で示すなら“ジュルジュル”といったようなサウンドでしょうか。具体的に言うと、NEVE卓のヘッド・アンプで若干ドライブさせてから浅くコンプをかけ、不要な低域をEQでロール・オフさせて100Hz辺りをならしたような音……という感じです。
そう聴こえた一番の要因は、ほかのDIに比べて各帯域のバラツキが少ないように思ったからです。ベースの4弦の高域フレットは太く、演奏者がうまくコントロールできないことがあるものの、本機を通すとそこも含め全帯域がまとまって聴こえるのです。これがニーヴ氏の言う“ナチュラルなサウンド”なのでしょうが、個人的にはやはりNEVEサウンドに作り込んでいるという印象。DIでこんなにキャラクターが付いてもいいのかな?と思う反面、それも含めてRUPERT NEVE DESIGNSの機材なのでしょう。ちなみにトランス・アウト(写真②)の後にはSSL SL4072Gのヘッド・アンプをつないだのですが、出音がNEVE 1073のように聴こえたのは驚き。ブランドとしての音にブレが無く、音作りへの意気込みを感じます。

次はスタジオ・サウンド・ダリにあるWURLITZER 200でチェック。RNDIを“SPEAKER”モードに切り替え、WURLITZERのヘッドフォン・アウトを入力してみました。賛否両論あるとは思いますが、ほかの8台のDIと比較したところ、RNDIの音が一番聴き覚えのある1970年代のWURLITZERサウンドだと感じました。WURLITZER特有のひずみが混ざった太い音です。
続いてはエレキギターでテスト。RNDIをINSTRUMENTモードに戻しギターを直接つないだところ、若干おとなしい音に聴こえました。高域のシャリーンとした感じはほかのアクティブ型DIに軍配が上がったものの、エレキギター+DIの組み合わせだけで録音することは少ないので、エフェクターなどでうまく音作りすれば良いでしょう。今度はSPEAKERモードに切り替え、アンプ・ヘッドのスピーカー・アウトを入力。ギターについての総合的な印象も、RNDIによるキャラ付けを強く感じるものでした。
RUPERT NEVE DESIGNの音作りを色濃く反映したRNDI。今回のテストを通し、DIによって音が大きく変わることを実感しました。あらためて、その重要性を再認識した次第です。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年5・6月号より)