
※メイン写真はウィンド・スクリーン装着時
−10/0/+20dBで調整可能なゲインや
3段階のハイパス・フィルターを用意
早速、本機をCANON EOS 5D Mark IIに装着して幾つかのシチュエーションで使ってみました。先に総評するならば、“動画撮影用にちょうど良い音色と定位感”が特徴と感じました。音質以外にも、現場での使い勝手が反映された工夫が随所に見られ、よく考えられたマイクだという印象です。
まず目を引くのは斜めに傾いた独特な形状の本体。単体だと机に置くのに少し工夫が必要ですが、本機の基部には、接地面に対して水平になる状態でカメラと接続するためのシューマウントが備え付けられており、さらに三脚との接続用として3/8インチ(直径約8mm)のネジ穴も設けられています。本体に備わっている2本のマイクは90°に向き合うXY方式が採用され、細いながらもしっかりと柔軟性のあるプラスチック素材で構成された、ショック・マウント機構が施されていることも特筆すべき点でしょう。
電源は9V乾電池1つで30時間駆動します。各種設定用ボタン類はマイク背面に並んでおり、一番上は3kHz以上を+6dB上げるボタン、真ん中は0/75/150Hzに設定可能なハイパス・フィルター・ボタン、最下部は−10/0/+20の3段階で調整できるゲイン・ボタンを用意。それぞれに小さなLED表示が付いているため、設定内容とLEDの位置を覚えておけば、暗所でも簡単に設定変更や確認ができるという点は現場のニーズを考慮した設計と言えるでしょう。
収録した音の出力には3.5mmのステレオ・ミニ端子があり、付属のステレオ・ミニ・ケーブルでカメラ本体の音声入力などにつないで使用します。また、本機はミニXLR出力端子も装備しているので、ミニXLRケーブルを購入すれば業務用ビデオ・カメラへの入力や、音声のバックアップ収録用としてオーディオ・レコーダーなどとの接続も可能です。これほどコンパクトなサイズのマイクであることを考えれば、2種類の出力端子を用意し汎用性の高さを確保している点も好印象ですね。
付属の専用ウィンド・スクリーンは2種類を用意。一つは屋内のわずかな空気の動きからもマイク・カプセルを保護するように設計されたという珍しい球状タイプ(メイン写真)。もう一つは俗にウィンド・ジャマーと呼ばれるフサフサのファーが付いたタイプで、風の強い場所での収録に威力を発揮しそうです。
クッキリと細かいディテールまで再現
映像向きな音声の定位感も好印象
肝心の音質面ですが、非常にクッキリしていて細かいディテールまでとらえながら、聴きやすい音が録れました。さすがスタジオ用コンデンサー・マイクを製作しているRODEといった印象。屋外のさまざまな場所で試しましたが、環境音の情報量が多いと画質まで向上したように錯覚してしまうのが不思議です。民生用のミラーレス一眼レフで撮った動画も、本機の音質が加わればホーム・ビデオ感がグッと薄れるでしょう。XY方式のマイクは左右に広がり過ぎること無く、映像の音声として使いやすい定位感が得られました。
手軽に動画を撮影/編集して誰でも積極的に発信できる時代です。そんな時代のニーズに合わせるかのように、手軽に高音質で収録できるオールマイティなステレオ・マイクとして、また業務用のカメラ・マイクとしても十分に機能する、とてもバランスの良い製品が登場したなと感じました。

撮影/川村容一
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年3月号より)