DJ URAKENが使う Studio One 2 第2回

第2回
「桃太郎」のリミックスで活用した
Studio Oneの便利機能について

こんにちは。DJ URAKENです。前回は私のStudio One 2(以下、S1)との出会いから導入を決めたきっかけ、使い始めたころの印象などについてお話ししました。S1に出会ったときはかなり衝撃的だったため今でもよく覚えているのでその記憶を元に書いていたのですが、参考までに……と思ってTwitterでの当時の自分の発言を検索してみたらいろいろ出てきました。やはりあのときはかなりテンションが上がっていてS1のことを話したくてしょうがなかったようです。

オーディオ・データの作業に便利な
スナップ機能

今回からは実際にS1で制作した水曜日のカンパネラの楽曲「桃太郎(RISM DEVICE Remix)」での作業を通して、S1の魅力をお伝えしていきたいと思います。

僕はリズムの打ち込みをするときにはMIDIはほとんど使わず、オーディオ・トラックにオーディオ・データを直接張り付けていくのですが(素の音で鳴らしたいため)、S1はその作業がとてもやりやすいです。「桃太郎」のリミックスでもベーシックなリズム・パターンはすべてオーディオ・トラックに直接張り付けて組み上げていきました。どこがやりやすいかというと、一つ目はスナップの選択に“適応”というモードがある点です。

▲“適応”の機能は、ツールバー上に表示。スナップは“適応”以外に“小節”“クオンタイズ”“フレーム”から選んで設定することができ、スナップの種類も画面のように4つ用意されている ▲“適応”の機能は、ツールバー上に表示。スナップは“適応”以外に“小節”“クオンタイズ”“フレーム”から選んで設定することができ、スナップの種類も画面のように4つ用意されている

この“適応”というモードでは、現在のタイムラインのズーム・レベルに応じて現在のタイム・ベースの最も近い単位線にスナップしてくれます。最初は“何だこれ? ちょっと使いにくいな”と思ったのですが、デフォルトでそういう設定になっていたので試しにそのまま使ってみていたところ、慣れるととても便利! ズームして細かい作業をしているときはクオンタイズの細かい単位でスナップしてくれますし、大きなパートを見ながら組み立てているときは自然と小節単位でスナップしてくれます。“適応”以外にも“小節”“クオンタイズ”“フレーム”で設定することも可能です。

また、このスナップの自動調節と関連して、オーディオで組んだドラム・パターンをコピペして伸ばしていくときもスムーズに作業することができます。スナップがオフの場合は、イベントを選択してコピペ(ペーストはキーボード・ショートカットのD)したとき、自動的に新規インスタンスが元のイベントの終わりに置かれるのですが、スナップがオンのときには、イベントの新規インスタンスは次のスナップ位置にペーストされます。約1小節の長さのイベントであれば次の小節の先頭に置かれ、1/2小節の長さのイベントであれば次の1/2小節に置かれるのです。例えば、オーディオ・ファイルのお尻の部分がグリッドに全く合っていない状態でも、グリッドに合わせてきっちりペーストしてくれるのです。

▲オーディオで組んだドラム・パターンをコピペする際もスナップの機能が役立つ。スナップ機能がオンになっていると、上画面の1〜2拍目にあるイベント(黄色枠内)をコピペした場合、3拍目頭のグリッドに合った位置(下画面の黄色枠内イベント)にペーストされる ▲オーディオで組んだドラム・パターンをコピペする際もスナップの機能が役立つ。スナップ機能がオンになっていると、上画面の1〜2拍目にあるイベント(黄色枠内)をコピペした場合、3拍目頭のグリッドに合った位置(下画面の黄色枠内イベント)にペーストされる

リズムの打ち込みで多用している二つ目の機能はオーディオのトランスポーズ。これはリズムの打ち込みに限ったものではないのですが、僕の場合はリズムでよく使うのでここでご紹介させていただきます。リズムのオーディオ・ファイルを選択して画面左側のインスペクター部の“トランスポーズ”“チューン”のところの数値を変化させるだけで瞬時にオーディオ・ファイルのキーが変わります。

▲オーディオのトランスポーズは、インスペクター内の“トランスポーズ”“チューン”を使って簡単に行うことができる(黄色枠内)。筆者はリズム楽器に活用することが多く、エフェクト的にオクターブの変化をつけることが、手軽かつ瞬時にキー変更を行うことが可能ですごく重宝している ▲オーディオのトランスポーズは、インスペクター内の“トランスポーズ”“チューン”を使って簡単に行うことができる(黄色枠内)。筆者はリズム楽器に活用することが多く、エフェクト的にオクターブの変化をつけることが、手軽かつ瞬時にキー変更を行うことが可能ですごく重宝している

「桃太郎」のリミックスでは、イントロの部分で少し音程感を出しているスネアのキーをここで調整しています。前後の流れを聴きながらちょこちょこと細かくキーを調整していくときに、待ち時間などなくスムーズに作業できるのはとても魅力的。こういった打楽器のキーを変化させることに限らず、曲全体のキーを変更する際や、エフェクト的にオクターブの変化をつける場合なども、手軽かつ瞬時にキー変更を行うことができるのですごく重宝しています。

次に紹介するのはタイムストレッチ機能。オーディオ・トラックの“テンポ”のモードで“タイム・ストレッチ”を選択すると、そのトラックのオーディオ・ファイル(テンポ情報が入っているもの、もしくはインスペクター部でテンポ情報を入れたもの)がソングのテンポと自動的に同期します。ソングのテンポを変更すると止まることなく瞬時にタイム・ストレッチされるので、曲のテンポをちょっと変えて雰囲気を聴いてみながらBPMを決定するときや、曲の途中でテンポに変化をつけるときなどにもすごく便利です。またオーディオ・ファイルの一番右側にカーソルを持ってきてからAlt(Macの場合はoption)+クリックでビヨーンとオーディオ・ファイルを引っ張ってタイム・ストレッチすることも可能です。fxの長さを調節したり、この曲ではやっていませんが、声を倍の長さにしたりするときにもよく使っています。同じことがMIDIに対しても可能なので、それもとても便利です。曲の途中でメロディを一気に半分のテンポに落としたいときや、トラップなんかを作っていて「やっぱり倍のテンポで作業したいな」という場合、テンポを倍に設定してからMIDIイベントを引っ張って長さを倍にするだけでいいのでとても楽。以前のように一つ一つノートを伸ばしていくようなやり方にはもう戻れません。

ドラッグ&ドロップによる
スピーディなオペレーションを実現

S1の代表的な機能の一つが、画面右側のブラウザーのリストからドラッグ&ドロップでインストゥルメントやプラグインが立ち上がる点。

▲Studio Oneの代表的な機能と言えるドラッグ&ドロップによるオペレーション。画面右側のブラウザーのリストから使用したいソフト・シンセやプラグイン・エフェクトをトラックにドラッグ&ドロップするだけで立ち上げることが可能。またドラッグ&ドロップはトラック間でも行うことができる ▲Studio Oneの代表的な機能と言えるドラッグ&ドロップによるオペレーション。画面右側のブラウザーのリストから使用したいソフト・シンセやプラグイン・エフェクトをトラックにドラッグ&ドロップするだけで立ち上げることが可能。またドラッグ&ドロップはトラック間でも行うことができる

画像では既にあるインストゥルメント・トラックに新たに立ち上げていますが、何もないところにドラッグ&ドロップすると新たなインストゥルメント・トラックが作成されてそこにインストゥルメントが立ち上がります。これはスピーディな作業をしていく上で非常に有益。ブラウザーの文字検索からプラグインを探すことも可能で“あれどこあるんだっけ?”というときはもちろん、よく使うプラグインもすぐに探すことができるので、この文字検索はかなり使っています。画像では、NATIVE INSTRUMENTS Maschine2を文字検索でブラウズしてドラッグ&ドロップで立ち上げています。

また、このドラッグ&ドロップはトラック間でのやりとりでも有効で、あるトラックで立ち上がっているインサート・エフェクトを、インスペクター部のミキサー部分でドラッグしてそのままそれをほかのトラック(インストゥルメントでもオーディオでも可)にドロップすれば、プラグインの設定ごとそのままそのトラックにエフェクトが立ち上がります。これもとても便利な機能で、いろんなシーンで活躍しています。

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今回はリミックスを通してと言いつつも作業をしながら気付いたS1の割とベーシックな部分での魅力的なポイントをご紹介していくこととなりました。S1はメインDAWとして乗り換えただけあって基本的な部分がとても良いので、筆者の思いつくままに次回もS1のさまざまな機能をご紹介していきたいと思います。