「BEST SERVICE Mystica」製品レビュー:8人編成の女性合唱団によるグレゴリオ聖歌のクワイア・ライブラリー

BEST SERVICEMystica
自身の手掛けたサンプル・ライブラリーで、これまでに数々の賞を獲得してきたコンポーザー/ライブラリー開発者のEduardo Tarilonte氏。ここで紹介するBEST SERVICE Mysticaは、氏がプロデュースしたグレゴリオ聖歌のクワイア・ライブラリーで、8人編成の女性合唱団による歌声を収録。サンプル・プレーヤーにNATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5(別売)/Kontakt 5 Player(無償)を採用し、Mac/Windows上でスタンドアローンまたはVST/AAX Native/Audio Unitsプラグインとして動作します。同社から発売されている、男性合唱団のグレゴリオ聖歌ライブラリーCantusの女性版と言えるでしょう。

自然なレガート再生を生み出す
独自アルゴリズム“TRUE LEGATO”


Mysticaには、各種パッチを分類した3つのフォルダーが入っています。1つめのフォルダー“1 Mystica, The Voice”は、自由に演奏できるメインの音色パッチとグレゴリオ聖歌のフレーズ集を収録。“2 FX”は大合唱や笑い声、ヒソヒソとした話し声など、尺が長めのフレーズを集めたものです。そして“3 Soundscapes”には、さまざまな声素材にシンセ・パッドをレイヤーした音色パッチを収録。各パッチのサンプルには、大変気持ちの良いチェンバー的な残響がデフォルトで施されています。画面上の“Reverb”スライダーでそのかかり具合を調整できるので、試しにドライ音を聴いてみたところ、しっかりとした環境で録音されている印象。またドライ音を扱えることから、プラグイン・エフェクトなどで自由に音作りできるのもうれしいポイントです。フレーズ・サンプルのパッチには、サンプルの波形を映し出すディスプレイが表示され、スタート/エンド・ポイントを調整しての非破壊編集が可能です。それでは各種パッチを詳しく見ていきましょう。まずは“1 Mystica, The Voice”フォルダーに収められたメイン・パッチ“Mystica, Female Chamber Choir”をチェック。真っ先に耳を引いたのは、“TRUE LEGATO”と呼ばれるレガート再生のアルゴリズム。これは本当によくできています。グレゴリオ聖歌は、基本的に単旋律の歌唱から成るものなので、レガートが必須です。キー・スイッチで発音のニュアンスを切り替えつつ演奏する際も、音と音のつなぎ目をとてもスムーズにつないでくれるので、いとも簡単に流麗に“歌わせる”ことができます。この自然なレガート再生と発音からすぐにBEST SERVICE Shevannaiを思い出したのですが、調べてみるとShevannaiもTarilonte氏によるライブラリーでした。素晴らしいクオリティ・コントロールです。そして“Christo”や“Sanctus”など、さまざまな発音の言葉をプル・ダウンのブラウザーから選択し、それぞれの音量やアタック・タイムなどを調整した上で任意の鍵盤にアサインできる“Word Builder”(左の画面中央に表示)や“Phrase Builder”も好印象。非常にシンプルに構成されつつ、必要な機能が厳選されています。そのほかブレスや無声音なども用意されているので、リアリティを追求できるでしょう。個人的にはこのメイン・パッチで既に満足なのですが、同じフォルダーに入っているグレゴリオ聖歌のフレーズ集“Mystica Phrase”も絶妙に使えるフレーズを収めており、キー・スイッチへの割り当ても的を射たものになっています。 

バラエティ豊かなウィスパー・ボイス
バランスを調整できる声+パッドの素材


次に、尺が長めのフレーズを集めた“2 FX”フォルダーを見ていきます。こちらも充実の内容で、スタジオで録音できる素材として最大限のバリエーションが収められている印象。とりわけ、ささやき声を収録した“Evil Whispered Words”というパッチは3種類のバリエーションが用意されており、これを駆使して何か作り上げてみたい!と想像力をかきたてられる内容です。“3 Soundscapes”フォルダーに入っている歌声+シンセ・パッドのサンプルは、声とパッドの音量バランスやリバーブ量を調整することができ、好みの音色に近づけることが可能。“音色自体は素晴らしいんだけど、自分の音楽に合わせてもう少し作り込みたい”というニーズにも対応します。本ライブラリーは、西欧の歴史や宗教といった濃厚な背景を持つグレゴリオ聖歌をテーマとしているので、さまざまなジャンルに広く使えるものではないかもしれません。しかしゲームやアニメ、テレビCMなどの音楽にはハマるでしょうし、味付けの音としてEDMやヒップホップなどにも使えると思います。シリーズ製品のCantusとともに、自分のライブラリーに加えたいものですね。  (サウンド&レコーディング・マガジン 2015年1月号より)
BEST SERVICE
Mystica
26,643円
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS X 10.8〜10.9、INTEL Core 2 Duo以上のプロセッサー、スタンドアローン/VST/AAX Native/Audio Units ▪Windows:Windows 7/8、AMD Athlon 64 X2もしくはINTEL Core 2 Duo以上のプロセッサー、スタンドアローン/VST/AAX Native ▪共通項目:4GB以上のRAM