Device 17 Logic for Max by 澤井妙治
ファイルをダウンロードする→LogicForMax
Logic的なUIのプラットフォーム
僕は18歳のころ、バンド・メンバーからEMAGIC Logicの存在を教えてもらい、その流れでCYCLING '74 Max/MSPを知り、山奥の実家に3カ月引きこもって、ひたすら説明書と格闘していました。そんなとき、IAMASでMaxのワークショップが行われることを知ったのです。“初心者の自分がいきなりそんな場所に行っても、何も分からないだろう”と不安でしたが、決心して足を運びました。結果的にそこでの経験が、その後の自分を形成したと断言できるほど、素晴らしい出会いの場となりました。
僕はいまだにタイムラインがあるコンテンツはLogic、動的なものを作るときはMaxをメインに制作しています。LogicとMaxはもはや自分の身体の一部と化している感があるほどです。近年MaxはABLETON Liveと親和性が高いですが、Logicのヘビー・ユーザーである僕からすると、“MaxはLiveだけのものじゃない!”という思いもあったので、今回“Logic for Max”というパッチを作ろうと考えました。
Logicにはさまざまな機能がありますが、僕が特に“Maxの中で使えたら良いのになあ”と思っていた機能がチャンネル・ストリップです。出したい音を作るために、さまざまなプラグイン・インストゥルメントやエフェクトを挿しては替え、挿しては替えることはよくあります。もちろんMaxでも同様の操作は可能ですが、Logicと比べると面倒ですし、WAVESなどサード・パーティ製のプラグインを使用すると設定が保存できない(Max 6まで)という弱点もありました。
また、移動が多い僕が愛用しているLogicの機能が、Caps LockをオンにするとコンピューターのキーボードがMIDI鍵盤のようになる“Caps Lock Keyboard”です。そこでチャンネル・ストリップとCaps Lock Keyboardを組み合わせ、読み込むプラグインによってさまざまな音が出せるプラットフォームのようなパッチを作ることにしました。ユーザー・インターフェースはLogicにのっとっているので、Logicユーザーがこのパッチを開いて“便利!”と感じてくれるといいなと思っています。もちろんMaxで開いて、さらに機能拡張することも可能です。
“協業”でパッチを作成
恵比寿駅の近くに、僕の友人たちが集まる部室のようなカフェがあります。今回の記事を書くにあたり、そのカフェに頻繁に出没するプログラマーの2bit君に“こういうものが作りたい”とプログラミングをお願いしました。
自分だけで作り、学ぶことも大切ですが、自分の得意なことを見極め、協業することの大切さが身に染みてきた今日このごろです。2003年から2006年にかけて、僕は本誌で自己主張ばかりの連載を執筆していましたが、今回はLogicユーザーが使いやすく、そして作る音の幅が簡単に広がる(音源/エフェクトなど素晴らしいプラグインはたくさんあるので)パッチを目指し、“音を作るのに使えるものは、何でも使った方が良い”という考えを、友人と形にしてみました。
皆で協業して制作したプログラムが使われ、その結果、制作時間が短縮できたり、さまつなところでつまずかず、より音/音楽に集中できるたくさんのきっかけが生まれたら良いと思います。複雑なことができるMaxのプログラミング環境と、音楽を作ることに特化したLogicとの垣根をより低くできれば、音楽制作がもっと面白くなるのでは、と考えていました。
繰り返しますが、このパッチは“プラットフォーム”です。インサートするプラグイン次第で出音は変化しますし、カスタマイズするなどして活用してもらえるとうれしいです。Max 7やプラグインとの相性などでまだ不安定な部分はありますが、2bit君が今後アップデートしてくれることを期待しています!(笑)。リクエストはTwitterの@2bbbまで!
澤井妙治
【Profile】1978年生まれ。さまざまな環境下での音の与える効果にフォーカスし、新たな音響インタラクション・デザインの可能性を追求する。オーディオ/ビジュアル・ユニットportable[k]ommunityとしての活動や、EYEとのプロジェクトAEOでのセンサーを用いたパフォーマンス、『sonar』や『Fuji Rock』、東京都現代美術館などでのライブ・パフォーマンスやインスタレーションを行う。Qosmo,.inc取締役 www.qosmo.jp
CYCLING '74 MaxはMI7 STOREでオーダー可能