ハードウェアはDSP4基と8基の2種
バンドル・プラグインの違いで計5タイプ
コンプレッサーの1176、Teletronix LA-2A、プリアンプの610など高性能なアナログ・ハードウェアを製造販売しているUNIVERSAL AUDIO(以下UA)が、十数年前にUAD Powered Plug-inというシステムを発表した。これはUAD-1という高性能DSPチップが搭載されたPCIカードとプラグインのセットであり、そのDSPでプラグイン・エフェクトの処理をするものだった。当時はCPUも非力だったので、このような分散処理する環境が数社から発売された。その中でUAは持ち前のアナログ技術をたくみに取り入れ、突出してクオリティの高いプラグインを世に送り出し続けた。他社のシステムが生産終了していく中でも変わらぬ人気を誇り、今や“勝ち残り”の環境と言えるだろう。UAD-1はその後、DSP能力が4倍以上に向上したUAD-2へと進化。接続方式もPCIカードだけでなく、FireWire接続のSatelliteシリーズや、オーディオ・インターフェース内蔵でThunderbolt接続のApolloシリーズがリリースされ現在に至る。ところで今のMacのラインナップを見るとPCIスロットどころか、FireWireポートもほとんどなくなった。そのため、UADプラグインを使うにはApolloを買うしかないのかな?という状態になっていた。そんなわけで、ようやくThunderbolt接続のUAD-2 Satelliteが発売となった。本体はACアダプター入力、Thunderboltポート×2、そして電源スイッチしかない非常にシンプルなものだ。使い方も簡単で、UADプラグイン・ソフトウェアをインストールすればすぐに使用できる。またUAD-2はDSPパワー別にQuadとOctoがあり、Quad Core(市場予想価格116,000円前後)、Quad Custom(市場予想価格158,000円前後)、Octo Core(市場予想価格170,000円前後)、Octo Custom(市場予想価格212,000円前後)と、Octo Ultimate(市場予想価格660,000円前後)という計5つのラインナップがある。まずQuadとOctoというのは内蔵されたDSPチップの数で、Quad=4、Octo=8と倍のパワー差だ。そしてCore Custom、UltimateはUADプラグインの購入クーポンの差となっている。CoreはAnalog Classics Bundleという基本的なプラグインのみが付属(これはすべてのUAD-2ハードに付属する)。CustomはUAオンライン・ショップで3個を自由に選択でき、Ultimateは79個以上ものプラグインが付いている。
DSP消費量の多い最新プラグインも
多数扱える処理能力
どれを買えば良いの?とよく聞かれるのだが、割引率で言えば間違いなくOcto Ultimateがダントツだ。でもそんなにプラグイン買い込んでどうするの?という気もする。よほどのエフェクト・マニアでもなければ全部使い切れないだろうし、商用スタジオのようなファイルのやりとりでの互換性を考えるときでなければ必要ない気もする。すべてのプラグインは2週間のテスト期間がある。まずは試して、気に入ったら購入という流れで良いのではないかと思う(どんどん買っていったら、最初からOcto Ultimateでよかったじゃん!と思う人もいるかもしれないが)。とにかく、EQやコンプレッサーなどは非常に多岐にわたるコレクションになっているので、その違いを試してお気に入りのものをそろえるのがいいだろう。それからQuadとOctoでどちらを買おうか?と悩む方も多いかもしれない。これはUAのWebサイトやフックアップで公開している各プラグインのDSP使用量リストを参考にするとよい。一つアドバイスしておきたいのは、DSP使用量の大きいプラグインが次第に増えている、ということだ。UADプラグインの最近のラインナップは以前リリースしたプラグインを再構築したものも多い。人伝てに聞いた話なのだが、Neve 1073は開発当初から入力によるひずみの変化などもすべてシミュレートしていたという。ただ、そうするとUAD-1のDSPでは1枚に収まりきらなかったそうだ。UAD-2で潤沢にDSPが使えるようになった今、Neve 1073は最も処理付加の高いUADプラグインとなってリニューアルされていて、1チップの40%ものパワーを消費する。それでも今回テストで借りたOctoなら16chインサートすることも可能だ。音を聴いてみると明らかに以前のNeve 1073よりも表現力が高まっているし、音自体に魅力さえ感じるものばかりだ。こういう本気のプラグインをいっぱい使いたい!という方はOctoを買っておいた方が良いかもしれない。また、本機はApolloシリーズと一緒に使うことも可能なので、Apolloシリーズを使っていてもっとプラグイン・パワーが欲しいな、という方にもオススメだ。