
70'S感あふれるビンテージ・サウンドと
洗練されたインターフェース
本体は同社の2-PoleやRocketと同じサイズ のデスクトップ・タイプ。リア・パネルのUSB端子でMIDIデータとともに電源も受ける仕様となっています。デジタルの音源部は“STRINGS”“SOLO”の2パートに分かれており、この2つを自由にミックスして出力することが可能です。STRINGSセクションは完全ポリフォニックで、128ボイスと、事実上ボイス数に制限はありません。“Registration”というつまみの周囲にはViolin/Viola/Cello/Brass/Organ/Choirと表記されており、回すにつれて音色がシームレスに変化していきます。音色名はリアルな楽器を連想させますが、実際の音色は抽象的で、この辺りは往年のストリングス・シンセをほうふつさせます。つまみを回したときの音の変化具合は素晴らしく、ウェーブテーブル・シンセを触っているようです。実際の出音はARP Solina String EnsembleやOmni MK2、ROLAND RS-202辺りを想起させる見事なビンテージ・サウンドで、1970年代臭がムンムン。特定のモデルを再現しているわけではなさそうですが、Solina String Ensemble特有の、“ブワブワ”と揺れる濁った音色の雰囲気はよく再現できていると思いました。STRINGSセクションには、お約束とも言える“String”と“Chorus”という2種類のコーラスも搭載されています。“Ensemble”スイッチでON/OFFできるのですが、常にONにしておきたいくらい音にビンテージ感が加わります。“Octaves”スイッチでは、音色がレイヤーされているせいか単純にオクターブが変わるだけでなく、音色も若干変わるようです。“Crescendo”“Release”などのパラメーターは、筆者所有のKORG PE-2000など多くのストリングス・シンセにも搭載されていたもので、迷いなく音作りできました。
SOLOセクションで
ソロ楽器をSTRINGSに付加
次に“SOLO”セクションですが、こちらは8ボイス仕様で、ストリングスと並奏するソロ楽器的な音色を作ります。“Tone”のノブの回りにはBass/E-Piano/Clavi/Synth/Plutoとの記載がありますが、こちらもSTRINGS同様、あくまで“楽器のイメージ”的な音色となっています。本機は内蔵エフェクトも秀逸。“Animate”はSTRINGSにだけ適用されるエフェクトで、フォルマントをLFOで触っているような効果が得られます。“Phaser”は昔ながらの雰囲気でこちらもSTRINGSによく合い、“Reverb”は暗めのルーム・リバーブです。作成した音色は3バンク×4音色と数は少なめですが、本体に記録が可能。保存はボタンの長押しで行います。Streichfettは“Split”スイッチによってSOLOの音色にキー・スプリット機能を適用できます。外部接続したMIDIキーボードの任意のキーを押しながらLowやMidに切り替えることで範囲を設定できるようになっています。さらにMIDI経由で多彩なコントロールが可能。例えば接続したMIDIキーボードのモジュレーション・ホイールを使ってSTRINGS/SOLOセクションのビブラート・レベルとスピードが変えられたり、STRINGS/SOLOに個別のMIDIチャンネルを割り当てて演奏することもできます(この際キー・スプリットは解除されますので、注意が必要です)。 本機はDSPベースのデジタル音源を採用しているとはいえ、ビンテージ感あふれる音色の再現度は立派です。同時にデジタルならではのS/Nの良さ/ピッチの安定感が音像全体に現代的なすっきりとした印象を与えており、プログレからニューディスコまで幅広い音楽で使えそうです。
