「IZOTOPE RX4」製品レビュー:オーディオのノイズ除去や修復を実現するレストレーション・ソフト

IZOTOPERX4
IZOTOPE RX4はシンプルなオペレーションで確実なノイズ処理ができるツールです。Mac/Windowsで動作するソフトウェアで、スタンドアローンまたはAAX/RTAS/AudioSuite(AVID Pro Tools 9/10)/VST/Audio Unitsのネイティブ・プラグインとして動作します。RX4にはそれぞれが特定の種類のノイズ/ひずみの修復に特化した5つのモジュール(Declip/Declick/Remove Hum/Denoise/Spectral Repair)と、それを補助する6つのツール(Plug-In/Gain/Equalizer/Channel Operations/Resample/Dither)を搭載しています。今回はスタンドアローンのアプリケーションとして使用しました。

スペクトログラムと波形を組み合わせ
視認性良くノイズを発見


RX4にWAVまたはAIFFのファイルを読み込むと、スペクトログラムと波形が表示されます。このスペクトログラムと波形の表示をオーバラップさせるスライダーで、ノイズを見つけやすい画面表示に調整します。さらに時間軸方向と周波数軸方向のズーム・イン/アウトが個別に操作できるので、目的のノイズを容易に発見できます。画面表示は分かりやすく、直感的に操作できます。では、5つの修復用モジュールの特徴について解説していきます。まず“Declick”モジュールですが、電気的なプチ・ノイズなら“Declick”モード、リップ・ノイズやアナログ・レコードのポツッというノイズには“Decrackle”モードが効果的です。こうした発音時間の短いノイズは聴感上は大きなノイズとして聴こえても、スペクトログラム上ではうっすらとしか表示されないときがあるので、そうした場合は画面に頼り過ぎず、耳で聴いてノイズのあるエリアを選択すると早いです。この際、“Preview”ボタンで処理の前後を比較試聴しながら作業できます。プチ・ノイズやリップ・ノイズは、ミックス段階では気が付かなかったのにマスタリングで音圧が上がった段階で初めて気になるものがあります。Pro Toolsでの波形編集では取り切れなかった2ミックスのノイズも、高い精度で除去できるようになりました。次に“Declip”モジュールを試しました。こちらはADコンバーターへの過入力、アナログ・テープのサチュレーションなどによって生じるデジタル/アナログのクリッピングを修復できるツールです。ミックスやマスタリングの際に“ピアノが一音だけひずんでしまった”“サビで声を張った瞬間にボーカルのピークでひずんでしまった”という場合に、とても効果的です。使い方はノイズ除去と同様、ひずみの個所を確認し範囲を選択、プリセットを選択して“Compute”ボタンを押すとスレッショルド・レベルの分析が行われます。クリッピングがある場合はヒストグラムを横切る青線が表示されるので、それを下回るスレッショルド値を設定します。処理の品質を“High”にすると、かなり自然にひずみが解消されました。波形を確認したところ、頭がつぶれて一直線になっていた個所がギザギザに復元されています。 

あらゆるタイプのノイズ除去に加え
オーディオ・データの補完も可能


次の“Remove Hum”は、低周波のハム・ノイズを除去するためのモジュールです。ハム・ノイズはスペクトログラムでは横縞で表示され、RX4では基本周波数から7つ目のハーモニクスまで除去可能。使い方はできるだけノイズ以外の音が鳴っていない個所を選択し、ハム・ノイズの基礎周波数を計算させます。周波数は50Hz/60Hz/Free(検出モード)から選択が可能。今回はFreeで検出してみたところ50.02Hzにハム・ノイズがあり、除去処理を施すことで特有の“ブーン”という音がほぼ聴こえなくなりました。“Denoise”モジュールはアナログ・テープのヒス・ノイズ、マイクのハム、電源のバズ、カメラのモーター音など、音源に持続的に存在するノイズの除去に効果があります。使い方は“Remove Hum”と同様、ノイズ以外の音が鳴っていない個所を選択して解析させるだけです。ノイズの耳につきやすい周波数帯域が抑えられ、演奏が聴こえやすくなるなど、かなりの効果がありました。最後に“Spectral Repair”です。こちらはイスのきしむ音、せき、落下音、携帯の着信音などの不必要な音を除去したり、オーディオ・データの欠落を補完できます。今回は余韻の中に残ったドラム・スティックの音を“Attenuate”モードで除去。デフォルト設定でもかなり目立たなくすることができました。データの補完は曲中に10msの無音を作り“Replace”モードで処理すると、音量レベルの変化もつなぎ目の不具合も無く、補完したポイントが全く分からないくらいに修復できていました。古いアナログ・テープからのリマスタリング時に起こる、テープの磁性粉のはく離などで生じる欠損に効果がありそうです。なお、上位版のRX4 Advanced(オープン・プライス:市場予想価格128,000円前後)では、さらにMAなどの作業で威力を発揮しそうなLeveler/Loudness/Ambience Match/EQ Match/Dereverbの追加モジュールと、同社のメータリング・スイートInsightが加わり、より柔軟なオペレーションが可能になっています。 このようにRX4にはあらゆるノイズを除去/軽減できるツールがそろっています。プリセットやオートの設定がとてもよくできており、マスタリングにおけるノイズ除去にも十分な効果がありました。使いこなすには、作業を始める前に目的のノイズが先述した5つのうちのどれに属するかを判断し、適切なモジュールを選択することが大切です。僕は、良い演奏こそが感動を伝えられると信じています。RX4は、演奏は素晴らしいのに一カ所のひずみやノイズのためにNGにしていた音源を救う、素晴らしいツールです。  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年12月号より)
IZOTOPE
RX4
オープン・プライス (市場予想価格:36,000円前後)
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS X 10.7以降 ▪Windows:Windows 7/8